TwitterやFacebookの登場によって、世の中のコミュニケーションが、スピーディかつダイレクトに、また「つながり」を持ったものに変化しています。そうしたコミュニケーションは企業内にも求められるようになってきており、導入を試みて成果を上げているところもあれば、何となく合わずに断念するところもあるようです。
この特集では、企業内情報共有ツールのとして注目を集めている「Yammer(ヤマー)」について、「どんなサービスなのか?」「どうやって導入していくのか」「より活用するにはどう使っていけばよいのか」にフォーカスして、実際に自社でチームメイキングに活用している筆者の体験談を元に全4回にわたって紹介したいと思います。
150万人が利用する「Yammer」って、どんなサービス?
Yammer(ヤマー)というサービスはよく“企業向けTwitter”として紹介されます。不特定多数にメッセージが公開されるTwitterとは違って、組織のメンバーや指名されたグループの間でプライベートなコミュニケーションを取るために利用されているWebサービスです。サービス自体は2008年9月にリリースされたものですが、利用企業は瞬く間に広がっていき、今では世界中で150万人以上のユーザーに利用されています。無料版とよりセキュリティ面を強化した有料版が提供されていますが、機能としては無料版でも十分に提供されています。
筆者が勤めるロフトワークでは、一昨年2009年10月より試験的に導入を開始し、一定の試用期間を経て社員へ定着化しため、2009年11月に正式導入することに決定しました。
Yammerの基本的な機能
主な機能
- メッセージの投稿と返信およびスレッドでの会話
- ファイルおよび画像の貼り付け
- メッセージへのタグ付け
- イベント、投票、質問のアプリケーション
- likeボタン
- ネットワーク内での公開・非公開のグループ
- 組織外の利用者の利用を許可するコミュニティ機能
- SSL暗号化通信/退職者情報を削除するなどのセキュリティ機能
対応デバイス
- ブラウザ(Webページ)
- デスクトップアプリ(Win/Mac)
- 携帯電話
- スマートフォンアプリ
Yammerは、たしかにTwitterに近しい使用感がありますが、企業にとって一番の違いは公開制限という特徴です。誰にでもオープンにされているTwitterと違い、Yammer内のネットワークへのアクセスは利用者のメールアドレスのドメインによって決定され、同じドメインを持つ利用者だけが自らの所属するネットワークに入ることができます。言ってみれば同じメールアドレスのドメインを持ったメンバー間だけのTwitterという感じかもしれません。
YammerとTwitterの主な機能の違い
| Yammer | Twitter |
制限 | 利用者のメールアドレスドメインに限定 | 閲覧制限なし |
グループ機能 | あり | なし |
ファイル添付機能 | あり | なし |
文字数制限 | 399文字 | 140文字 |
リツイート機能 | なし | あり |
「企業向けTwitter」から、「企業向けFacebook」へ?
これが最新のYammerのインターフェースです。Twitterに似ているという紹介をしてきましたが、バージョンアップごとに機能追加とインターフェースの洗練化が進み、最新版では、メッセージ(つぶやき)機能だけでなく、like機能や、イベント設定、アンケート機能までが追加されています。インターフェース自体も以前はシンプルなタイムライン形式だったのですが、いつかのバージョンアップの際に、スレッドとしてまとめて表示されるようになりました。もはや“企業向けTwitter”ではなくて、“企業向けFacebook”と呼ばれる日も近いように感じます。世の中のサービスの良いところはどんどん取り入れていく姿勢が面白く、これからもどんな風に成長していくのかが楽しみなサービスです。
Yammerが使われる理由は、ラフさ加減にあり
Yammerが使われる理由、それはタイムラインの作法にあると思います。Twitterライクなラフさ加減とも言えるかもしれません。私たちは社会人になると同時に「メールの作法」をみっちり教え込まれます。そのおかげで丁寧に、改行1つにも悩み時間はどんどん過ぎてしまいます。また、イントラサイトのような公の場にアクセスする際には必要以上に気を遣ったりするものです。ですが、Yammerにそれは不要です。タイムラインという、古い情報がどんどん押し流されていくなかでは、どこで改行しようかなんて悩んでいる暇はありません。今を起点として、シンプルかつダイレクトに、会話をするような情報発信が必要になります。
どんな内容がつぶやかれるのか
では実際にどのような内容がこのYammerにおいてやり取りされるのでしょうか。
実際にロフトワークの社内で行われているトピックを整理してみたところ、以下のような結果になりました。勤怠報告やMTGのセッティング、来客対応などの「ほう・れん・そう」が多いですが、実際のところ、「雑談」とカテゴライズされるものが1番多いこともあります。
つぶやきの種類別トピック例
カテゴリー | 実際に出たコメント |
勤怠 | - 電車遅延にて20分遅刻します。
- 本日このまま直帰します。
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クライアント対応指示 | - クライアントさんから電話来たら○○と伝えてください。
- 1Fに○○さんがいらっしゃいました!
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別フロアとの連絡手段 | - 1Fに○○さんがいらっしゃいました!
- 今1F開いてますか?/あと10分待ってください。
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全員に知らせるべき業務連絡 | - 明日までに皆さんのプロジェクト記録を確認してください。
- 本日作業のお手伝いをしてくださる方いませんか?
- サーバ復旧しました!
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ツールの問題解決 | - 社内ツールの○○の機能が使えません…
- ○○を使って資料を作ったことのある方いますか?
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社内設備 | - 今からプリンター使います。
- 822番の電話機がないのですが、お近くで見かけませんでしたか?
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作業完了連絡 | - クライアントでの作業完了しました!
- サイト公開しました!
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情報共有(面白いニュース等) | - このサイト面白いです! http://○×▽…
- 先日のイベントが特集されています! http://△○□…
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差し入れ・お土産 | - 社長からシュークリームの差し入れです!
- 昨日はホワイトデーでしたね!男性陣よりマカロンを用意しました!
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雑談 | - 今から飲みに行こ~ぜ~?
- 女子トイレにシュシュを置いて行かれた方、私持っています!
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「雑談」はムダじゃない!
Yammerを導入したことで社内の風通しがよくなり、一体感も増したように感じます。これまで一部の人たちの中で共有されていた情報が、社内全体でライトにかつダイレクトに共有されるようになったことで、些細な情報共有からより社員同士を身近に感じるようになりました。
- 「あの人、最近外回りばかりで大変そうだな」
- 「この時間のMTGが終わったら、あのチームに相談してみよう」
- 「あの人、またお子さんが生まれたんだ」
などなど、社内に常に繋がりがうまれました。このゆるい繋がりこそが、社内のコミュニケーションの潤滑油であり、会社全体の活性に繋がるものと思います。しかしながらこのYammerというツールは有能ですが、万能ではありません。導入すれば必ず活用できるというものではなく、組織の形態にも寄ります。次回以降ではこのYammerを導入編として、導入するにあたってのつまずきやすいポイントとそのときの対処法について紹介したいと思います。