[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第十三回「ひとまわりしてみませんか」

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新年度、新しい土地で新しい生活をはじめた方々も多いのではないだろうか。

一ヶ月が過ぎ、そろそろ新しい暮らしにも余裕ができたのではないだろうか。

そろそろあたらしい土地を、通勤や通学の途中、休日にゆっくりとながめる余裕が出てきたのではないだろうか。

いえいえ、もう自宅と仕事場の行き来だけ、朝はダッシュ、夜はクタクタ、週末はベロベロで休日はバッタリ、自分が今どこに住んでいるのかという認識すらありません。

そんなあなた、まあ、そう言わずに、次の休みの日、いや、明日の朝少し早起きして、または、いつも会社の近所の居酒屋ですませてしまう夕食を地元のお店で……などなどの道々、ご自身の住んでいる町並みをゆっくりと見回してみてはいかがだろうか。

気づかなかった駅までの近道の緑道やベンチがちょこんとおいてある小さなスペース、民家にしか見えないのに確かに営業しているパン屋や喫茶店。行き止まりだと思っていたら、川にでることのできる路地。新緑になっているけれども、よく見たらりっぱな一本桜、来年はこの桜の下で、あそこのコンビニで弁当と缶ビールを買って一杯やったらとても気分がいいのではないのではないだろうか、などなど、その町を好きになるきっかけをあたえてくれる風景に出会うことができるはず。

なんて、風流ぶって語っている当の本人は、東京の郊外のこの町に住んでかれこれ20年が過ぎているというのに、大して広くもないこの町の中で一度もいったことがない場所が山ほどある。

用事がないんだから、そんなの当たり前じゃん、と言ってしまえばそれまでのこと。

まあ、そういわず。

用事があるのに散歩に出かけてしまう人はいない。

用事を済ませて、体が営業中の看板を下ろしている時に散歩に出かけたり、ポタリング(自転車でそこいらをぶらつくこと)に出かけたりするのだから。

ではでは、ひとまわりしてみようじゃないか、と、こういう暇な行事につきあってくれる自転車仲間に声をかけて、自分が住んでいる町の外周をなるべく忠実にたどってみることにした。

日野市一周一筆書き走

地図:旺文社 都市地図東京都10 日野市 1:10,000

浅川・ふれあい橋~多摩川・府中四谷橋南詰め~大栗川・宝蔵院橋~由木養鶏場~多摩療護圓~日野三中~多摩都市モノレール・多摩動物公園駅~多摩テック~平山城址公園・季重神社~平山橋~中央線鉄橋~旭が丘小~コニカミノルタ~多摩大橋~多摩川緑地~日野橋~クリーンセンター~浅川・ふれあい橋

※上記の施設名は目標物であって、全てに立ち寄ったわけではありません。

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日野市の輪郭は犬の横顔に似ているのです。

その横顔を一筆書きで結ぶべく、春の1日ポタリングにでかけました。

今回の眼目はなるべく市境を忠実にたどること、こういうときは忠実であればあるほどおもしろい。

いかに忠実にこだわったのか、その成果を写真を中心にご紹介します。

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スタートは高幡不動駅に近い浅川にかかる歩行者(自転車もOK)専用橋『ふれあい橋』です。

ここからの富士山の眺めは天下一品。

日野市は北は多摩川・浅川に囲まれた平野、南は多摩丘陵になっています。そこで、早いうちにアップダウンの多い丘陵部を攻めてしまおうと、時計回りで一筆書きを描いていくことにしました。

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ふれあい橋から浅川土手を下って府中四谷橋の南詰めに出ます。この橋も市境になっているので、一応渡っておきましょう。で、また南詰めに引き返し、野猿街道を南下して、大栗川・宝蔵院橋の手前を右折。多摩市との境を『倉沢緑地』に沿って走る。このあたりは昔ながら農村の風景がたっぷり残っています。

農村風景を抜け多摩丘陵をえっちらおっちらのぼって百草団地につきあたります。

地図を見るとしっかり道がついているのですが、なんだか団地の中へ中へと入っていく道しか見あたりません。

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「これじゃないの」

同行者が指さしたのは階段。ともあれ自転車を担いであがってみることに。

あがりきると市境に沿ってダートの道が整備されていました。

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尾根上を押したり乗ったりしながら進んでいくと、右手になにやら大きな施設が見えてきます。

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これが七生福祉園。名前は知っていたけどこんな広い施設だとは、ちと驚きです。

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尾根の降り口は多摩療護園の駐車場につながっていました。ここはすでに使われていないようで、開け放たれた門を通って、近所の方が子連れで花を楽しんでいます。私らもしばしのお花見を。

多摩療護園の坂を下りきると明星大学の裏門に突きあたります。

そこを右に折れて七生の福祉園を巻くようにして、再び丘陵の尾根をめざしてのぼっていきます。

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上りはじめてすぐのところが広場のようになっていて、ベンチがおいてありました。多摩丘陵は昔は有名な観光地でお茶屋や料理屋などが点在していたそうなので、その跡地なのかもしれません。

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尾根に出ると北側の風景が開けます。

目の前に日野山中…いえ、三中。山中と書きたくなるようなロケーションに校舎が佇んでいます。

そして、校舎を見下ろす斜面には何故か手作りのブランコが。

見た目はそうでもないのだけれど、実際に乗ってみると校庭が足下にあるようでえらく高いところで漕いでいるように錯覚します。⁠ハイジのブランコ」と名付けました。

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三中の尾根からは多摩都市モノレール越しに多摩動物公園が。

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急な階段を担ぎ降ろし、明星大学の正門前をすぎて多摩動物公園駅へ向かいます。

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花の咲く住宅街をのんびり行く、と思いきや、モノレールを目の前にしてまたしても階段が。

多摩丘陵は押し担ぎの連続です。

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多摩動物公園駅を目の前にして、モノレールと交差した相模原立川線を左折、中央大学横の駐車場から脇道に入ります。ここまでの道のりは日野市内とは思えないような風景の連続でした。

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再び、相模原立川線に戻り、多摩テック入口信号を左にあがっていけば、多摩テックの正門前に出ます。

ここで、朝寝坊な途中参加のメンバーと合流。

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多摩テック沿いに尾根を上り返し、ジェットコースターの脇から『七生丘陵散策道』に入ります。

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この道は多摩テックの脇を通っていますから、モトクロス場や観覧車の真下を通れたりしてなかなか異世界な感じを楽しむことができます。おすすめ。

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廃校になってしまった平山台小学校の校庭沿いを抜けて、丘陵コースの最終ポイント平山城址公園に向かいます。

平山城址公園自体は多摩市になるので、今回は入口からのぞくだけ、同じ緑地内にある平山城主・平山季重を祀ってある季重神社に立ち寄りました。

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すぐ近くにある『六国亭』という料理屋で昼食をとる予定でいたのですが、なんと焼失していました。

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腹が減っては何とやら、尾根からつづく路道を最短距離直滑降の形で平山城址公園駅へ降りることに。

これで多摩丘陵とはお別れです。

平山城址公園駅前、お得なランチを食べることのできる『亀屋』で刺身丼と鯖味噌定食で遅めのお昼。

線路を越えてすぐの浅川にかかる平山橋を渡って土手道を遡上。ここから日野市一筆書き走・川と市外編の始まりです。

土手道を少し行くと、JR中央線の鉄橋に突きあたります。一度河原に降りて鉄橋をくぐって、

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ハケ下からハケ上へのぼりきったところが旭が丘小学校。このあたりが日野市の最西部、犬の鼻にあたるところです。

ここからは市街地を走ることになるから、はしょっていきます。

スーパーマーケットや中高大の学校が固まった地域から、コニカミノルタの横をぬけて、日野自動車と八王子東養護の間を行きます。犬の額のあたりを走ってます。

中央道を陸橋で渡って、石川パーキングエリアの裏を通って(ここも談合坂SAみたいに外からも入ることができれば楽しいのに⁠⁠、谷地川沿いに出ました。

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一度八王子市に入り、多摩大橋を渡り多摩川堤の道をたどります。このあたりが犬の耳の先っぽ。

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立日橋北詰で多摩都市モノレール(良く出会いますねえ、本日はもう一度くぐることになっています)をくぐり、日野橋を渡って、多摩川の右岸へ。

下流へ向かってゆっくりとペダルを回していけば、見頃を迎えたクリーンセンター横の桜並木が待っています。

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ここまでくれば、もうゴールはすぐそこ、ワンバーナーでお茶でも沸かし、お花見を楽しんでいきましょう。

多摩川と浅川の合流地点、中州の頂点でV字を折り返して、浅川沿いに入りました。

忌野清志郎さんの出身校、日野高校を右に見て、多摩モノレールをまたまたまたまたくぐれば、目の前にスタート地点のふれあい橋が、さあ、一筆書きの完成です。

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是非皆さんもお住まいに市町村一周、こころみてください。20年来棲んでいても、これだけ初めての場所に出会うことができたのですから、きっと楽しい発見がいっぱいです!

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