挑発的に聞こえて申し訳ありませんが、どんなiPhone使いやPalmの達人、携帯電話の日本語入力の早撃ちガンマンをつれてきてもらってもかまいません。それでも私は自分の紙とペンの方が素早く情報を入力できると確信しています。
電気ガジェットはなるほどずいぶんと便利になったものですが、一瞬の情報をキャプチャーするのには、まだまだ紙には追いついていないのです。
ポケットにおさまり、電池を気にせずに使えて、激しく落としても水に濡らしても壊れず、酷暑のなかでも極寒の地の果てでもペンを持つ手とインクが凍らない限り使える。こんなユビキタスなツールはアナログな紙とペン以外にありません。
そう、こんな紙のツールたちを私はこよなく愛しているといってもいいでしょう。今回はそんなアナログツールのテンプレートを公開しているサイトをいくつか紹介するとともに、使用についてのヒントについて書いてみたいと思います。
Hipster PDA
43FoldersのMerlinが提唱したHipster PDAは本連載第2回でも紹介しましたし、連載「アナログツールでライフハック:Hipster PDA時々モレスキン、のちトラベラーズノート」で詳細な実践方法が紹介されていますので、こちらもご覧ください。
Hipster PDAは通常5x3インチのカードを束ねただけのメモ帳ですが、それが目的としているところは別に情報カードでなくても、RODHIAメモなどでも実現できます。頭に思いついた事を、その場ですぐに書き込む事ができるなら、どんなメモ帳でもHipster PDAのように使う事ができます。
あとで必要な情報だけは、Hipster PDAからパソコンに「シンクロ」させて吸い上げますが、このステップが、アナログツールを使うときの押さえどころになります。
D*I*Y Planner
Hipster PDAはただのカードの束でしたが、あまりに自由すぎるので少しはテンプレートがあった方が使いやすいという方もいると思います。そんな人にはD*I*Y Plannerで提供されているテンプレートがおすすめです。
D*I*Y Plannerは手作りで作られた無料のシステム手帳で、月間カレンダー、習慣カレンダー、一日スケジュール、ToDoリスト、プロジェクト管理表、方眼用紙、コンタクトなど40種類ほどの市販にも劣らないシートが用意されています。
Version 3ではサイズもハーフレター、A5、Hipster PDA用と各種そろっていますし、表面と裏面のレイアウトがちゃんと用意されて両面印刷に対応しています。同じToDoリストでもちょっとした使い方の違いで数種類が用意されていますので、使い方に応じて選ぶことができます。
D*I*Y Plannerには数多くのテンプレートがありますので、どんどん印刷して使ってみたい誘惑にかられますが、もともと全てを使うようには考えられてはいない事に注意が必要です。
むしろ、数あるテンプレートの中から、あなたの生活を支えてくれる3種類か4種類のシートを選んで、同じシートを何枚も使った方が能率は上がるようです。
Pocketmod
Pocketmodは手のひらサイズの即席手帳です。1枚の紙とはさみを用意し、1分の工作で8ページの本のようになった手帳を魔法のように作り出す事ができます。しかもこの8ページにD*I*Y Plannerのような機能的なテンプレートを自由に配置する事が可能です。
Pocketmodを作るには以下の手順で行ないます。
- Pocketmodのサイトに行き、Flashアプリを使って好きなシートをPocketmodの上にドラッグ&ドロップで落としていきます。
- シートをプリントアウトします。
- シートを折りたたみ、一カ所に切れ込みをいれるだけで8ページの冊子の完成(たたみ方は、Miscellaneous/Folding Guideのシートで見れます)。
シートのたたみ方に最初は戸惑いますが、一度やってみると二度と忘れる事ができないくらいに簡単です。
Pocketmodには便利な週刊カレンダーから、ToDoリスト、フランクリンの13徳目の訓練表、Sudokuゲームまで(自動でゲームを作成してくれます)、多数のシートがあります。
手のひらにおさまるPocketmodは保存して大切にする使い方よりも、今週を乗り切るのに必要なシートを即興で作利、使い終わったら捨てるという使い方が似合うツールです。
Printable CEO
David Seahが公開しているPrintable CEOシリーズはフリーランスのウェブデザイナーやプログラマーなどを対象に、自分の生産性をモニターするために作られたシートです。「自分で自分の仕事を管理する人は、みんなが自分自身のCEO」ということからこうしたネーミングとなっています。
コンパクトにまとまったカレンダーなどもきれいですが、最も日常の生産性に影響を与えてくれるのはConcrete Goals Trackerシートです。
このシートではまず「どのような仕事をしたらどんな点数になるのか」を細かく定義することから始めます。すでに配布されているものはフリーのウェブデザイナーを意識したものになっていますが、これを参考に自分にあわせた点数表を作ってみましょう。
たとえばここでは「新規契約をとった」というのは10点に値する仕事なのに対して、「リリースできるコードを書き上げて出荷」は5点、「新しいブログ記事を書いた」は2点という具合に、仕事の内容によって点数が割り振られています。
点数の大小は自分の将来に対する重要性と、手間のかかる度合いの2つの価値観から主観的に決めているようです。
こうした点数の定義が終わったら、毎日の活動のなかでどれだけ個々のタスクを実行できたかをConcrete Goals Trackerの中に記入していきます。そして日ごとの点数の集計、週ごとの点数の集計を行なって、自分の生産性をモニターします。
たとえば毎週30点を目標にしているなら、「新規契約をとる」というタスクを週に6つもこなすのは難しいので、他の地道な作業もこなして小さな点を拾いつつ、トータルで30点になるように、仕事を配分します。
この手法の良い点は、私たち人間の弱さにフィットした柔軟性です。たとえば「今週は調子が悪くて小さな仕事しかできなかった」という場合でも、「数をこなしたのでまあいいとしよう」といった折り合いを「見える」化してくれるわけです。大小の仕事を織り交ぜつつ、とにかく何かが前に向かって進行しているという状態を作り出すことができます。
Printable CEOシリーズのもう一つの目玉はEmergent Task Timerです。これは横軸に時間、縦軸にタスクの種類を割り振った表になっていて、時間ごとにアンケートのように記入してゆくだけで、自分がどんな作業にどれくらいの時間をかけていたのかが明らかになります。自分の時間管理法が気になりはじめたら、このシートを数日間埋めるだけで、すぐに自分の生活のどこに時間泥棒が入っているかが分かります。
シンクロして捨てるワークフロー
ここで紹介したアナログツールは多くの点でシステム手帳とは違います。システム手帳は蓄積と保存が意味を持つので、バインダーなどを使ってかきこんだメモを大切に保管したりします。
Hipster PDAのページや、Pocketmod、あるいはPrintable CEOは、それ自体を永年保存する事はあまり現実的ではありません。むしろ使用したあとで必要な情報だけをパソコンに吸い上げて捨てるという使い方が最も効果を上げるようです。システム手帳が刀なら、これらのアナログツールは手裏剣といえるでしょう。
高速にこうしたアナログツールを使うには、一つ一つのシートについてパソコン上のどのツールと同期させるか、あらかじめ考えておく必要があります。たとえば以下のような手順で行います。
- OmniFocusのタスク管理表から、今日やるべきものを自動的に5x3情報カードにToDoリストとしてプリントアウトし、使ったら破いて捨てる
- アイディアをメモした場合は、卓上の書類トレーに一時保管し、3日たったころに面白そうなアイディアだけをまとめてGoogle Notebookに入力
- イラストが入っていた場合はScansnapで取り込むか、デジカメで撮影してYojimboや紙コピといったツールに放り込む
こうしたワークフローをあらかじめ作っておいて、それに従って「シンクロ」が自動化するようにします。
また、手間を考えると全てのアナログツールのシートをパソコンに同期するのは現実的ではありません。アナログツールは私たちの脳のバッファだと覚悟して、必要のない80%のカードはその場限りで捨ててしまうくらいの方が、最も重要な20%のアイディアやメモが活きてくる傾向にあります。
今回紹介したのはモバイルで強みを発揮するアナログツールが中心でしたが、卓上の強い味方である43Tabsという進化した情報カードの整理方法についての連載「Re:PoIC?ライフハッカーのためのPoIC入門」がありますので、こちらもぜひチェックしてください。
それでは次回まで、
Happy Lifehacking!