業界特有の言葉
先日、居酒屋に行った時のことです。すごく広い席が空いているにも関わらず、6名では窮屈な席に通されました。「あっちの広い席に変えてください」というと、店員さんは面倒くさそうな感じで、「大変申し訳ございません。あちらの席はこの後、ご予約が入っています」と言葉が返ってきました。
その後、2時間後に筆者達が帰るまでの間、その席に予約者が来る事はありませんでした。恐らく、これから団体さんが来た時のために空けていたのでしょう。
新年早々に嫌な感じだなと思っていたら、一緒に行った同僚が「この店は出入り禁止」といいました。お店側がいうのならば分かりますが、客である筆者達が「出入り禁止」というのもおかしなものです。「我々が出入り禁止というのは表現がおかしいですよ」と伝えようと思った矢先、他の同僚が「そうだな、この店は出入り禁止だな」と同調していました。
多くのシステムエンジニアや営業は、お客様から出入り禁止になることがあるため、より身近な言葉として「出入り禁止」を使うようです。他の業界では考えられないことでしょう。今回は、出入り禁止について考えてみたいと思います。
気が重い
数年前、筆者は要求仕様がなかなか固まらず、システムの仕様変更が何度も発生したプロジェクトを担当していました。当然、コストはオーバーし、納期も遅延したトラブルプロジェクトでした。
社内からは「議事録はないのか? 議事をお客様に確認しろ」「SEを全員引き揚げるといってこい。そのくらいしないと、こちらの真剣さは伝わらない」「せめて折半でも良いから、追加費用に関する折衝をしろ」といった内容で、筆者は追い込まれていました。
お客様の要件や仕様が変わったのは明らかでしたが、筆者のプロジェクトの進め方も内心「若干失敗したな」という気持ちもあり、とても気が重かったことを覚えています。自社の責任を認めてプロジェクトをやりきること以上に、お客様に折衝するのは大変なことでした。
立場上、いわないといけない
筆者はお客様先に伺い、意を決して切り出しました。「大変申し訳ないですが、会社としては御社の責任と思います」「私も立場上、このようなお願いをしなければなりません」。
筆者は、自分の本意ではないが、いいにくいことをいわざるを得ないという感じのいい回しで話をしました。お客様からは、「とてもがっかりした」という趣旨の内容とともに、もう来なくてもよいといわれました。
とても苦い経験であり、歯切れの悪い自分を自己嫌悪になるとともに、こうなる前に他にできることはなかったのかと悔やんだものでした。
仲間と立場
エンジニアにとって、お客様は一緒の釜のメシを食べた仲間になるものです。そんな関係でなければ、プロジェクトは上手くいかないでしょう。
しかし、プロジェクトが難航してくると、立場が行動を変えていきます。プロジェクト内の問題から、会社対会社のに問題になっていくからです。
役割を決める
システムエンジニアや営業の仕事は、とてもトラブルが多いと思います。もし、システムエンジニアや営業に、「周りに出入り禁止になった人はいませんか?」と聞けば、多くの人は心あたりがあるはずです。時には、理不尽な内容で出入り禁止になった人もいるでしょう。
いいにくいことをお客様にお願いする場面では、どうすればよいのでしょうか? 筆者は、役割を決めることがとても重要だと思います。「嫌われ役」と「お客様から信頼される役」を分けることです。時には営業が、時にはエンジニアが、時には上司が、時には部下が「嫌われ役」を買ってでることです。そう思えた時、出入り禁止も役割だと割り切ることができ、少し気が楽になりました。
みなさんも、プロジェクトの中でトラブルがあったとき、役割を確認することをお勧めします。