「エンジニアがほしいのに、求人がない!」と人事が嘆いている現状
- 「だれか知り合いに転職したいと言っているエンジニアはいない?」
私は「CodeIQ」というエンジニア採用のためのWebサイトのプロデュースをしているのですが、エンジニアが自社の人事から耳元でこの台詞をささやかれているという話を、頻繁に耳にします。
仕事柄、転職マーケットのデータをたくさんみる機会があるのですが、転職マーケットにエンジニアはなかなか登場しません。ようやく求人があっても、企業が採用したいという水準に達していないケースが多かったりします。出現したらしたで、取り合いになること必至です。
この連載を読んでいるあなたも「ああ、確かにそういう状態だな」とか、むしろ「なにを今さら言っているのだ」と思うかもしれません。
けれども、エンジニア採用の実務を担当する企業の人事、とくにエンジニア出身じゃない採用担当者は「わかってはいるけど、どうしたらいいのかわからない」という状態なのです。もう誰に聞いていいのかわからないという感じでしょうか。
実際、採用担当者たちに会うと「もう心が折れそうです」とか「藁をもつかむ状態とはこのことです」と嘆きます。
転職したいエンジニアは2割、絶対転職しないと思うエンジニアは1割、残りは?
転職したいと考えて転職活動をする人たちのことを、人材業界では「転職顕在層」と呼んでいます。世の中で働いている人の中に、この人たちがどのくらいの割合で含まれているのかで、転職マーケットが決まってしまうのです。
エンジニアの領域で、転職顕在層と呼ばれる人たちの割合は、約2割。「エンジニアの」と書きましたが、この数字は多少の上下はあるものの、世の中全体で見ても、ほぼこの程度の数字に収まります。
そして、何度調査をとっても、だいたいこの範囲内。つまり、「転職したい人は、世の中の2割程度いる」と考えても差し支えがないでしょう。
一方で、「絶対転職はしない」と考える人たちもいます。どのくらいいるかといえば、約1割です。この数字もそれほど上下なく推移しています。
では、残りの7割の人はといえば、濃淡はあるにせよ「良いところがあったら転職したい」と考えている人たち。この人たちのことを「転職潜在層」と呼んで、なんとか顕在化しないかと虎視眈々と狙っているのが人材業界と言えるかもしれません。
転職したい人が頻繁に入れ替わるわけではない
- 「転職したいと考えているエンジニアが2割もいるのだから、その中から採用すればすべて解決するんじゃないの?」
そんな声が聞こえてきそうですが、それはなかなか難しい。この2割が「転職したい」と意思表示をして、即転職できれば話は別ですが、そうはなっていないのです。「転職先がいっこうに決まらず、頑張って転職活動を続けている」というケースも少なくありません。
ここまで読んでピンと来た人も少なくないでしょう。そう、2割程度の人が転職したいと考えていても、その2割のすべてが毎月入れ替わるほどのスピードはありません。つまり、企業が採用したいと思って転職顕在層を見渡してみても、先月も見た、以前、書類選考したことがあるという顔ぶれに遭遇するケースが多いということなのです。
どれだけたくさんの求職者がいたとしても、その入れ替わりのスピードが緩やかであれば、結局意味がありません。逆に求職者の立場から見ても、代わり映えのしない顔ぶれの企業ばかりが求人をしている、という結果になっているのが、今のエンジニア転職マーケットなのです。
「残り7割」にどうアプローチすればいいか?
- 「では、いいところがあれば転職したいと考えている約7割の転職潜在層にアプローチすればいいのでは?」
そう考えてしまいますが、それはもっと難しかったりします。第一、その人たちがどこにいるのか、企業は皆目見当がつきません。たとえば、転職顕在層であれば、求人サイトにエントリーしたり、斡旋会社に相談したりしているのでその存在はわかりやすいでしょう。けれども、心の中で「いつか、どこかで、いい仕事に巡り会えたら転職してもいいかも」と考えている人を探し出すのが至難の業なのは、考えればわかりますよね。
この人たちを顕在化させるために、人材業界では頭をひねって様々な手法を繰り出しているのですが、決定打になるようなものはありません。たとえば、TwitterやFacebookなど、ソーシャルネットワークでの発言、Googleなどでの検索履歴などから「この人は転職を考えている可能性が7割を超えているのでアプローチすることをお勧めする」というサジェストをしてくれるサービスができれば話は別ですが、まだそのレベルまでの仕組みは存在していないのが実情です。
数ある打ち手を辛抱強く続ければ、いつか人は採れるかもしれません。が、そのためにかかる費用と時間は途方もないことになります。採用にいくら費用が発生しているのか、これを読んでいるエンジニアはよく知らないという人も多いでしょう。気になるなら、自社の採用担当者に聞いてみることをお勧めします。おいそれと「使えないから辞めてくれないかな、新人」とはいえない金額がそこには発生しているのに、驚くこと請け合いなのです(この話は今後の回で)。
ということで、今週は「エンジニア採用の難しさ」を簡単に説明しました。次回は、「では、見つからないエンジニアをどうやって探すか?」という問題に対して、ちょっとした解決策を提示する予定です。次週もぜひお付き合いください。