毎日、世界で5億人もの人々が訪れる場所があります。「Instagram」です。日本国内に目を向けても、約3300万人が月に一度はInstagramを開いています。さらに、日本の80%のユーザーがInstagramの投稿をきっかけになんらかの行動を起こした経験があり、40%のユーザーが実際にECサイト等で商品を確認したり購入したりした経験があるというデータも公表されました。
Instagram運用を通して、ありとあらゆるビジネスに変革を起こし続けている株式会社ROC(ロック)代表取締役の坂本翔氏は、この時代のパイオニアと言える存在です。
ここではその坂本氏がInstagram運用のノウハウを一冊に集約した『Instagramでビジネスを変える最強の思考法』から、Instagramマーケティングについて解説した内容を3回に分けて紹介します。
Instagramをビジネスに活用すべき「3つの理由」
ここで改めて、なぜ今、商品やサービスの販促活動にInstagramを活用るべきなのかを整理しておきます。ユーザー数が爆発的に伸びていることはもちろんですが、その他にも以下のような理由が挙げられます。
情報量
Instagramの投稿では、文章やハッシュタグだけではなく「写真または動画」を入れなければならないのが基本です。つまり、文章だけで投稿できる他のSNSと比較して、多くの情報を一度に伝えることができます。
世界観の表現
他のSNSと大きく異なる点の一つに、プロフィールページに過去の投稿の一覧が3列で表示されることが挙げられます。そのため、ユーザーはそのアカウントの過去の投稿を一度に確認することができ、企業はこれを通して商品やサービスの「世界観」を伝えることができるのです。
効率のいい拡散
ハッシュタグを用いることで、自分の商品やサービスに関心を示す可能性の高い層に、効率よく情報を拡散できます。特に、日本でのハッシュタグ検索数は世界平均の約3倍とも言われており、より良い成果が見込めます。
ユーザーの行動を「5段階」で考える
次に、Instagramをビジネスに活用する上で、消費者がどのようなプロセスで自社の商品に触れ、最終的に購入へと至るのかを考えます。
現代の消費者は、「DECAX(デキャックス)」という流れで消費行動をするという考え方があります。これは、2015年に電通デジタル・ホールディングスの内藤敦之氏が提唱した消費行動モデルです。これは、次の5つのプロセスによって消費者の行動が決定されるという考え方です。
① Discovery(発見)
② Engage(関係)
③ Check(確認)
④ Action(購買)
⑤ eXperience(体験と共有)
それぞれのプロセスを、1つずつ見ていきましょう。
①Discovery:情報を設置して「発見」してもらう
まずは、「Discovery=発見」です。当たり前のことですが、最初にアカウントを発見してもらえない限り、商品やサービスを購入してもらうことはできません。
ターゲットとなるユーザーにアカウントを発見してもらうには、瞬間的な「情報発信」と、その情報を後で見てもらうための「情報設置」という2つの考え方が必要です。
Instagramでは、投稿で「発信」した情報がフィードに表示されるだけではなく、プロフィールページに「設置」されていくことになります。多くのユーザーは、アカウントをフォローする際に、このプロフィールページでこれまでの投稿の一覧を眺め、フォローするかどうか判断するのです。また、「発信」した際には見てもらえなかった情報も、プロフィールページからまとめて見てもらうことができます。そのため、Instagramでは情報を「発見」してもらうという意味で、プロフィールページに情報を設置するという考え方がとても重要になるのです。
②Engage:フォローという「関係」でライトなつながりを作る
ターゲットユーザーに「発見」をしてもらったら、次は「関係」へとつなげていかなければなりません。
自分の個人情報は渡すことなく、しかし自分の得たい情報は全て欲しいという、圧倒的に優位な立場で企業との関係を構築することを求めているのが、今日の消費者です。そこで、Instagramの登場です。従来であれば、消費者が自ら個人情報を企業に渡し、DMやカタログ、メルマガ等を受け取ることで企業との「関係」を築いてきました。しかしInstagramアカウントのフォローという形であれば、より消費者にとって理想的な「関係」を構築することができるのです。
ターゲットユーザーが、「このお店の情報を今後も受け取りたい」「この企業とつながっておきたい」と思ったときに、企業側が個人情報の入力を求めるのではなく、気軽にフォローできるInstagramアカウントを用意しておくということが、このDECAX時代にはとても重要になります。
③Check:飾られていないリアルな声を「確認」する
「関係」の構築ができたら、次は、「Check(確認)」の段階です。
現代の消費者は、しばしば「広告離れ」とも言われるほど、企業側が操作した情報ではなく、「飾られていないリアルな声」を求めています。
飾られていないリアルな声とは、「実際に商品を使用したユーザーの声」「実際にそのお店に来店したユーザーが発信する情報」のことです。DECAX時代のユーザーは、Instagram上で発信されているリアルな情報を「確認」してから、次の「購買行動」を起こします。つまり、自社で情報発信体制を整えることはもちろん、ユーザー自身にも自社関連の情報を投稿してもらえるような仕掛けを施していく必要があるのです。こうしたユーザーのリアルな投稿が繰り返されることで、何度も情報を「確認」してもらうことができます。その結果ユーザーとの「関係」が深まり、次の「Action(購買)」のステップへと移っていくのです。
④Action:まずは入口商品を「販売」する
「確認」を繰り返して「関係」が深まったら、次はDECAXのA、「Action(購買)」です。
ここで解説したいのは、Instagramでは何を売るべきかということです。その答えは「入口商品」です。もっというと、「売りたいものを売るための商品」の販売に注力するべきです。例えばアパレル業の場合、いきなり高価なコートを売ろうとするのではなく、まずはインナーやTシャツ等の低単価な商品を買ってもらい、ファンになってもらうことで、最終的に高単価な商品の購買につなげやすくなります。
⑤eXperience:「体験」を「共有」するための導線を作る
「体験と共有」は、Instagram経由で入口商品を購入することで得た経験を、ユーザーが自分以外の誰かと共有するフェーズです。ユーザーによって共有された情報は、上述の「リアルな声」として、企業の強力な武器となります。また、Instagramキャンペーンの実施など、ユーザー自ら自社商品や自社について発信してもらえるように企業側から仕掛けていくことで、共有がスムーズに行われる状況を作り出すことも可能です。その共有が、別のユーザーの発見につながり、また新しいDECAXが始まっていくのです。
次回は、実際にInstagramを活用するにあたって必要な「準備」についてお伝えします。