???の美崎薫です
はじめまして。美崎薫です。
普通は、挨拶のときには「**の」と肩書きがつくものですが、わたし、肩書きがないのです。
Googleで検索すると、『記憶する住宅』の美崎薫として知られていることが多いようです。BTRONのという方も根強くいらっしゃるようですが、わたし自身は自分で作ったものですし、『SmartWrite/SmartCalendar』の美崎薫とか、『PilePaperFile』の美崎薫と名乗りたいところであります。
ともあれ、今回こうして、ライフログをキーワードに、連載をすることになりました。よろしくお願いします。
ライフログ
コンピュータが小さくなって、携帯電話やデジタルカメラ、携帯音楽プレイヤーなどに使われるようになって久しいのですが、さらに広汎に身の回りを見渡すと、電車のカードや商品タグなどのかたちで、そこかしこにコンピュータの技術が応用されていることがわかります。無線LANのスポットが増えたりと、街中でコンピュータを使うことも容易です。コンピュータはほんとうに日常的な道具になってきたのです。
こうしたコンピュータはそれぞれログデータをもっていて、それらを統合すればほとんど人生そのものの記録へとなる可能性が見えてきました。
デジタルアーカイヴ
音楽や映像、一部の書籍や雑誌は、デジタル化も進んでいて、従来のようなモノとしてのCD、ビデオ、書物ではなく、データとして情報を消費するスタイルも見えてきました。
こられを包括する新しい概念には、それを説明するための新しい言葉が必要です。情報をデジタル化する観点で、この一連の作業を「デジタルアーカイヴ」と呼んでいることも多かったのですが、普及した話題の言葉であるblogの次世代版として「Life+blog=Lifelog」といういい方がどうやらスタンダードになりつつあるようです。
ライフログと管理社会
いっぽう、アメリカ国防省では、ウェアラブルのコンピュータを兵士に着せて生体情報を取ることで、兵士の生死や怪我の状況などを把握することをライフログと名づけました。ライフログの言葉自体はこちらが本家の使い方ですが、こちらは言葉だけで反対運動がおきて沙汰やみになったようです。
ログをだれがとって、だれが見て、どう役立てるのか、というところで、受け止め方によっては、管理社会のツールのように考えられてしまうこともあるためです。アメリカは、こういう管理社会への反発が、日本よりも激しいようです。日本でも、個人情報についてはだいぶかまびすしく問われるようになりましたが、それでも喉もとすぎて熱さを忘れたのか、最近は漏洩事故も一時期よりは減ってきたようですし、事故じたいが大きな注目を集めることも少なくなったようです。
生活と人生を彩る情報
ともあれ、生活の中で生まれる情報は着々と記録されつづけ、蓄積され、統合され、ネットワークによって容易にながれることも可能になってきつつあるわけです。
B2Bのみに利用されている個人情報ですが、筆者にいわせれば、むしろエンドユーザーにきちんとどの情報をもっているのか開示することのほうが重要だと思うのですが、まあ、そんなことはさておき、状況としては着々と情報が蓄積されている、ユーザーがICカードリーダーなどを用意すれば、けっこうな情報を手にすることができる、ということになっています。
GPSや無線LANを使った位置情報の取得などの技術も進歩しつつあります。いまや、「生活」や「人生」は、情報を抜きにしては語れない状況に突入しているわけです。
技術トレンド
この連載で話題にしていこうと考えているライフログの、あるいは次世代のコンピューティングを考える上で重要なことは、想定する近未来の技術トレンドと生活スタイルのバランスをとることです。たとえば、技術の差があまりない成熟したジャンルでは、新製品は機能では普及せず、もっとデザインや価格がキーになることが多いと考えられます。
成熟しつつあるコンピュータ
車や白物家電が最たるものです。車や白物家電は、もちろんそれぞれ近年エコロジーなどの観点で優れた進歩をはたしてもいますが、とはいえ古い車を選ぶことも、ひとつのスタイルと考えられています。ひょっとするとコンピュータのOSやDVDとBlu-rayディスクとの関係もそうなのかもしれず、Windows Vistaの登場から1年が経過しても、依然としてWindows XPは広く使われているようです。Blu-rayディスクも、これだけDVDが普及していると、DVDとの技術の差のアピールはむずかしく、案外これから苦戦するかもしれません。
@2013年4月18日
さて。本連載で想定している近未来とは、具体的には2013年4月18日(木曜日)のことです。そのときにどんな生活をしているのか、ということを思い描きながら、翻って現在を見るという方法で、いま必要なものを描き出そうとしています。
というところで規定の分量に達してしまいました。以下次回。