Lifelog~毎日保存したログから見えてくる個性

第59回背表紙と赤字で見る電子化書籍

ある日の書棚!?

まずは画面から。次の画像は、ある日の朝、自動的に開いた画面のクリップです。

毎朝画面に本棚と机が開く
毎朝画面に本棚と机が開く
本の背表紙と、赤字を入れたページが開く。

このクリップは、背表紙と、本文中の赤字を入れたページです。いずれも自動的にシステムが探し出して画面に表示しました。

以前から作成している背表紙システム
以前から作成している背表紙システム
毎日このように背表紙を開きます。

今回は、背表紙だけでなく、赤字を入れたページを開いていることが特徴です。このシステムの特徴と注目点は3つあると考えています。

ひとつは、自動的に提示しているので、ユーザーの負担はゼロであること。

もうひとつは、特に赤字のページで、アナログで書いた赤字を注目ページとしてマーキングする観点で処理しており、アナログの処理を無駄にしていないこと。同時に、多数ある赤字ページはランダムに表示するので、飽きにくいこと。

最後に、システム中にウィンドウ枠やボタンなどが存在しないため、アナログの本に近いことです。

紙のもつ質感と存在感

電子化した書籍の場合、紙のもつ質感や存在感がなくなるのが決定的な問題だと、わたしは考えています。

iPadがぬるいのは、現実にそのように動くとは思えないようなページめくりのアニメーションに凝るばかりで、厚みを無視した飾りのページがあるところです。ページをめくっても厚みが変わらないなんて不自然すぎます。

紙を電子化して再現するには、もっと自然さについて研究する必要があります。

本は読み終わったあとでも読む前でも、書棚の限界を超えない範囲においては書架に入れ、任意に並べ換えることで、さまざまな刺激を与えてくれます。書庫の限界とは、すなわち背表紙(あるいは表紙)を見えるようにできる冊数の意味です。

本棚に、前後に本を置き始めた時点で、本はゆっくりと死に始めます。その意味で、本棚の奥行きは書籍中心なら17cm程度でよく、普通の家具のように30cmもあってはダメなのだと思います。本棚と家具は違うのです。

そうはいっても、わたしのように、書庫の限界を超えてしまうと、どうしたって本を置く場所がないということになります。そこで13年ほど前から電子化に踏み切ったわけですが、その電子化によって、譲れないと考えていたのが、本のもつ質感の最大限の再現です。

背表紙の自動入れ換え

具体的には、まず背表紙を見るシステムです。背表紙システムについてはすでに触れましたが、これを書棚に入れたディスプレイに表示すると、てきとうなタイミング(たとえば日替わり)で、別の本棚にすることが可能になることがわかりました。実験的に運用をつづけていますが、ほぼ毎日、電子化ずみの本を、てきとうなタイミングで数冊程度ディスプレイに表示します。ユーザーの操作はまったく不要で、ぼおっと眺めるだけで背表紙が出てくるのは、感覚としては毎日入れ替わる新刊書店の書棚を見ている印象にたいへん近いです。

本の背表紙はウィンドウなどをもたず、背表紙そのものを表示するので、コンピュータの画面という感覚が稀薄で、そのデザインも本らしさを際だたせています。

ぱらぱらページめくり

背表紙システムが本物の紙と違うのは、本物の紙の書物なら、ぱらぱらと流れるようにめくってみることができることです。昨今の電子書籍は、1ページずつめくってみることができるようですが、紙の本でそんなことをするかというと、⁠読む」とき以外にはしないわけで、もっと大切なことは、ぱらぱらめくりにあると考えています。

ぱらぱらめくりを実現するアイデアだけならこれも13年ほど前にもうすでにできていて、試作はしています。実現できないでいるのは、環境がととのわないためだけです。具体的には次の方式です。

  1. すべてのページを高解像度の静止画でもつ。
  2. 全ページを1ページ(1見開き)1フレームとした可能なかぎり高解像度の動画像をもつ。
  3. 高解像度のディスプレイで動画をめくる。静止した瞬間に静止画に差し替える。

静止画動画双方向コンバーターの試作

これを13年経って実現できないのは、使いやすく汎用の静止画-動画のコンバーターが見当たらないこと、あるとしてもすべての静止画を動画にコンバートすると容量が倍程度に増えること、という2点です。全ページ内容が異なるので、通常の動画圧縮技術では、ほとんど圧縮効果は期待できないです。いずれも技術的にいえば、ほとんどとるに足らない問題です。

試作は、JPEGをGIFアニメーション化して行いました。これによって、ぱらぱらめくりは環境さえととのえば容易に達成できることはわかっているのですが、では試作を超えて全データで行うとなると、なにしろすでに180万件で2TBを超えていますから、容量の点でも作業性の点でも、なんらかのブレイクスルーは必須です。技術的な問題はないけれど、運用的な問題はあるのです。

静止画動画コンバーターに必要な次世代環境

単純に静止画を読む性能が向上すれば、動画化する必要もないかもしれません。たとえば3TBのメインメモリがあれば(それを扱えるOSは必要ですが⁠⁠、ぜんぶ読んでしまう、というような太っ腹な解決方法だってできるはずです。64ビット版のWindows7では最大メモリ容量は192GBだそうで、OSの性能としてはまだ足りないですね。

価格だけ考えると、2010年11月現在4GBのメモリが5000円くらいですから、3TBを搭載するのには375万円くらいですか。安くはないですが、ひどく高くもないですよね。

現実的なところでいうと、ハードディスクは順調に容量を増加しつづけており、先ごろ1台で3TBの3.5型ディスクが登場しました。これに比べると、シリコンディスクの容量増加の遅さには辟易します。がんばってほしいものです。

わたしの場合、データの総容量が2TBを超えた時点で、WindowsXPではディスクを分割しなければならないとか、NASで全データをシンクロするのには1週間かかるとか、などのようにすでに管理が大変めんどうになっていたのですが、ディスクが1台で収まるのであれば、管理の手間は大幅に軽減できることが予想できます。

あとは、静止画-動画コンバーターさえあれば、ぱらぱらめくり機能をもつ電子化書籍の実現も、ある程度自動化できるかもしれません。

赤線書き込みページの再提示システム

180万件を1秒に2ページ(見開きで)表示するとすると、90万秒。90万秒/60秒/60分=250時間。1日に8時間眺めているとすると、31日です。31日かかる走馬灯システムができるわけです。ハードディスクの容量を見ながら、なんとか数年程度で試作したいと考えています。実現時には、ディスプレイの枚数も増えていることでしょうから、そうすると2台なら15日、3台なら10日程度に短縮できます。

ぱらぱらめくりは当面先のこととして、背表紙だけではもの足りないので、直近でできるなにかを実現しようと思いました。具体的には赤線システムとの融合です。

画像認識をおこない、本の電子化とあわせて赤線のあるページを抜き出す作業を自動化しているのですが、そのデータベースを使って、背表紙と同時に、赤線のページ=なんらかの印象的なページを抜き出して表示することを考えて実装してみました。

背表紙だけだと、内容を忘れていたりもするので、⁠ふふん」と読み飛ばすというか眺めて終わってしまいがちですが、じっさいのページが読めるサイズで出てくると、かなりインパクトがあることがわかりました。読んだ内容を再度振り返ってみるのには、最適な方法のひとつだと思います。

ページはランダムに抜き出して表示するので、毎回違ったところを楽しめます。赤線を引く行為が無駄になっていないわけです。この「やったことが無駄でない」感覚は、継続的に研究開発をつづけようという、強いモチベーションを持続させます。

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