10年前に… 
ときは、2003年4月10日のことです。木曜日。天気は晴れです。朝、5時10分に起床したわたしは、PCの未来について思いを馳せていました。   
10年先の未来。それを考えるためのいちばんの手がかりは、10年前について考えることでした。そこで、当時から10年前、1993年4月のことを思い出しながら、1993年、2003年、2013年について補助線を引きながら想像を巡らしました。      
そして、次のように予測しました。 
マシン環境 
1993年 デスクトップ、ノート   
2003年 省スペースデスクトップ、ノート、携帯電話    
2013年 サーバー+携帯電話+IDカード  
 
 
ディスプレイの解像度 
1993年 640×480ピクセル  
2003年 1600×1200ピクセル、携帯電話は320×240ピクセル   
2013年 4000×3000ピクセル、携帯電話は800×600ピクセル   
 
 
OS 
1993年 DOS、Windows 3.1    
2003年 Windows XP  
2013年 4~5世代後のWindows  
 
 
メインメモリ 
1993年 640KB(1MB程度)   
2003年 1GB  
2013年 1TB  
 
 
ハードディスク 
1993年 400MB  
2003年 400GB  
2013年 25TB(一生をMPEG2映像として蓄積できる容量)   
 
 
予測の評価 
こうした予測の常として、当たることもありますし、外れたところもあります。  
そもそも、未来予測というものは当たらないもので、ダン・ガードナー『専門家の予測はサルにも劣る』( 飛鳥新社)なんて書物も出ています。株価、戦争、人口爆発、飢饉、地震に天気予報と、専門家はなにひとつ当ててこなかったというのです。          
ダン・ガードナー『専門家の予測はサルにも劣る』( 飛鳥新社)   
株価、戦争、人口爆発、飢饉、地震に天気予報と、専門家はなにひとつ当ててこなかったと辛辣。      
 
筆者の予測の評価をしてみましょう。
たとえば、OSを4~5世代後のWindowsと予測していました。Windows XPの寿命は思ったよりも市場で長かったこともあり、じっさいにはWindows XP~Windows Vista~Windows 7~Windows 8と、3~4世代後のWindowsを使っていることになります。   
筆者個人はメインにWindows 7、サブにWindows 8のタブレットを使っており、サブを「使っている」と考えれば、予測は「当たった」といえそうです。       
OSは車のモデルチェンジやファッションと同じで、3年に1回くらいの頻度で「変える」ものであると考えられます。すでに成熟しているものだからといってもいいでしょう。   
メモリやディスプレイ、ハードディスクなどは楽観的に予測し、すこし大きめの値を想定していました。しかし、いずれもその予測値に達していません。ハードウェアの進歩は驚くほど保守的であるとも考えられます。   
メインメモリは、64ビットのOSを使っても、せいぜい最大で64GB程度で、予測していた1TBの1/16程度にとどまっています。ハードディスクも市販品は1台あたり最大4TB程度で、1/6程度で足踏み状態です。      
ディスプレイは最近になってようやくWindows機でもちらほら製品が出てきましたが、際立った高解像度のディスプレイは、iPadとMacBook ProのRetinaディスプレイ(2,048×1,536ピクセル/9.7型)のみですが、それでもまだ予想していた1/4程度の大きさに過ぎません。       
2012年に発売されたハイエンドノートPCのMacBook Proシリーズは、15.4インチで2,880×1,800ピクセルの220ppi、13.3インチで2,560×1,600の227ppiの液晶パネルを搭載した製品です。また、2013年に東芝が発表した「dynabook KIRA V832」は、13.3インチの液晶に2,560×1,440ピクセルの画面解像度で221ppiの液晶パネルを搭載しています。しかし、これらの製品でもまだ狭すぎると筆者は考えているわけです。          
ただ、必要に応じて、数を増やすことで筆者の期待していた値を満たすように使っています。ここにはニーズがあるのです。たとえば、ハードディスクも1台4TBを筆頭に、全容量を合計すれば25TBに届きそうです。    
ハードウェアの成熟 
筆者が個人的に10年前に期待していたハードウェアの性能は、どのジャンルでも満たされませんでした。では、期待感を込めたハードウェアを満たすことができなかった理由はなになのでしょう。技術は停滞しているのでしょうか。  
大まかにいえば、ハードウェアは成熟していて、従来の枠組み(テキスト+画像+インターネット+ショートムービー)程度を扱うのであれば、ほとんどのニーズを充分に満たす性能を達成してしまっているといえるのでしょう。     
筆者自身も、PCを購入するときに、CPUを気にする機会がめっきり少なくなり、メモリの容量にもあまり気を配ることがなくなりました。   
筆者にとって不満となっているのは、画面の広さであり、記憶容量のサイズです。PCが紙を代替できるのだとしたら、紙と同じような使い勝手を実現する必要があると考える筆者は、机の上に紙を広げるように使えるディスプレイの「広さ」を最重要視しています。現在は23~27型程度の1,920×1,080(1,200)ピクセルのものを5枚使用していますが、それでも筆者の考える広さを満たしていない状態です。         
広さおよび解像度だけでなく、その広い画面をどう使うかというソフトウェアとインターフェースも重要です。むしろそちらのほうが重要だといったほうがよいでしょう。 
なぜ解像度をというかというと、筆者が目標とするシステムは、紙を超えることにあるからです。そのためには紙と同等程度の解像度がなければ、どうにもならないと思うのです。   
これから10年、2023年の世界では、どのようなことを実現できているのでしょうか。そのときには、もっとコンピュータが進歩して、違う世界が見えているとよいと思います。