なぜか続かない? メモや手帳
今、世の中には、数多くのメモ術・手帳術の情報があふれています。書店に行けば専用のコーナーがあり、毎月のように新しい本が出ています。
ネット上でも、各種ブログやサイトで、自分のメモの取り方や手帳の使い方を公開している人、有名なメモ術・手帳術を実践した結果を公開している人などが大勢います。また、GTDやライフハック、夢実現や成功術、ユビキタス・キャプチャーといったくくりの中で、メモや手帳を使うことの大事さや、そのちょっと便利な使い方などを紹介している場合もあります。
わたしはメモを取るのが苦手でした
実はわたしは、昔からメモを取るのが苦手で、なんとかしようとかなり多くのメモ術、ノート術、手帳術などの本を読み漁りました。一冊読んで「これならできそうだ」と思えばそれをやってみました。ところが、なぜか続きません。そこで、また別の本を読んでみるわけです。前の本よりも少し簡単に実践できそうな本を買うこともありましたし、逆にかなり細かい、どちらかというと成功術のような本を買ったこともありました。そういうことを何度か繰り返しました。いや、何度「も」です。
ふと気がつくと、わたしの部屋の本棚にはかなりたくさんの「その手」の本が並んでいることになってしまったのです。下手な書店よりもよっぽど多いかもしれません。ところがいくら本が増えても、わたしのメモ術は何も変わっていなかったのです。どれだけメモ術や手帳術の本を読んでも、わたしはメモを取ることができるようにはなっていなかったのです。
もちろん、読んだだけで実践しなければ身につかないことぐらい、わたしもわかっています。読んだら実践しようと努力もしてきたつもりです。でも、なぜかそれが続かないのです。確かにわたしは怠け者で、ひとつのことを続けることができないダメ人間ではあります。しかし、いろいろな人のブログを読んでみると、同じようにうまく続けられない人が大勢いるようなのです。
なぜ続かないのでしょう?
メモ術、ノート術、手帳術などの本に共通すること
そうはいっても、今ではわたしもメモを取れるようになっています。しかし、それは大量に購入した本のお陰ではありません。実はこれらの本は、メモを取れるようになるための役には立たなかったのです。
なぜそう言えるのかというと、「その手」の本に書かれていることに、"ある共通点"が存在することに気づいたからです。
書かれているのは実戦術
まず一つ目は、本に書かれていることが"基本的にすべて実践術である"ということです。スポーツに例えると「試合中にやるべきこと」しか書かれていないのです。柔道でいえば「こう投げられたらこう受け身を取れ」とは書かれていても、投げ方も受け身の取り方も書かれていないのです。
つまり書かれているのは、次のような"実際にメモを取るときにはどうすればいいか"ということだったのです。
- こういう風に記号を使うと素早くメモが取れる
- 付箋を使うと便利
- 色で区別しましょう
- 日付時刻を入れましょう
もちろん、メモを取るときのことばかりでなく、取ったメモをどう使うかや、どうすれば生かすことができるか、なども書かれていますが、それらも実践術であるばかりでなく、"メモが残されている"ことを前提に書かれていますから、メモが取れないことには何の役にも立ちません。
基本は書くこと
二つ目は、"書け"ということです。もちろん、どの本にもそんな命令口調では書かれていませんが、すべての本に次のような「書きましょう」というお題が掲載されています。
- まず夢を書きましょう
- 最初に目標を決めてそれを書きましょう
- やるべきことを書きましょう
- やったことを記録しましょう
- 気づいたこと、思いついたことはすぐに書きとめましょう
- 頭の中にあるすべてのことを書き出しましょう
なにしろメモや手帳やノートの使い方を書いた本なわけですから、「書きましょう」と書かれているのは当然と言えば当然ですね。すべては、まず書くことから始まるのです。どんなメモも、書き残さなければ使えないのは、少し前にも書いたとおりです。
しかし、どこにも、どうすれば書き始めることができるか、そして書き続けることができるか、ということが書かれていないのです。かろうじて、「常にメモを持ち歩きましょう」とか「家中にメモを置いておきましょう」というようなことが書かれているぐらいです。
たしかに、それでメモが取れるようになる人もいるのでしょうが、実際には、それがなかなかうまくいかない人の方が多いのではないでしょうか。少なくともわたしはできませんでした。スーツのポケットにはいつも手帳が入っていましたが、それを使うことはめったにありませんでしたし、家中にメモが置いてあっても、それを使わない、使うのを忘れてしまう。そんなことばかりだったのです。
実戦前には練習を
中には「習慣にしてしまいなさい」と書かれている本もいくつかあります。しかし、どうやれば習慣になるかは書かれていません。書かれているのは、メモ帳をノートを手帳を、常に身近に置いておきなさい、というようなことだけです。おそらく、著者の方々は、メモ帳やノートや手帳を持ってさえいれば、それでメモを取る習慣がついた人なのでしょう。だから、他の人もそれで習慣になると思っているのではないでしょうか。
残念ながら、世の中そう簡単にはいかないのです。毎日サッカーボールを持ち歩いていたって、絶対にドリブルはうまくなりません。ドリブルができるようになりたかったら、サッカーボールを持っているだけではなく、ドリブルの練習をしなければいけません。
メモを取るために練習を
メモを取るのを、受身やドリブルと同じように考えるというのは無茶かもしれませんが、それでもやはり、実戦の前にはその基礎練習はしなければいけないのです。
そのためには、メモを取る必要が起きたときに「メモを取らなければ」と思えるような頭を作る必要があります。そして、メモを取らなければと思った瞬間に、なかば無条件に反応するような体を作るのです。そのぐらいになるまで、メモを取る練習をすればよいのです。まさか、試合の最中に、ドリブルのやりかたを考えている選手はいないでしょう。投げられた瞬間に頭の中で受身のとり方を思い出そうとする人もいないでしょう。だったら、メモを取るときも、考えてはいけないのです。考えずに体が動くように練習をすればよいのです。
それでは、いったいどんな練習をすればよいのでしょうか。
まず面倒な練習はイヤですよね。自慢じゃありませんが、わたしもイヤです。そんなわたしでもできたことですから、おそらくほとんどの人が実践可能だと思います。基本的には、素振りやドリブルレベルの基礎練習だと思ってください。ランニングや腹筋・腕立てほど、基礎の基礎というわけではありません。
そうはいっても基礎練習ですから、楽しくできる、というわけにはいかないかもしれませんし、それで絶対にメモが取れるようになれる、と保障することもできません。でも、試してみて損になるほどの手間はかけさせません。それに「達人は練習さえも楽しむ」とか「練習でさえ楽しめる人が上達する」とか言うではありませんか。
ひとつだまされたと思って、しばらくお付き合いいただければ幸いです。