それではさっそくメモを取るための練習を始めましょう、と言いたいところですが、その前に「なぜメモが取れないのか?」ということについて考えてみましょう。
「そんなことより練習方法は?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、ただ漠然と練習するよりも、その練習が何にどう効くのか、何のためにその練習をするのか、ということを理解したうえで練習するほうが、効果があがるはずです。
野球やテニスや剣道の練習でも、言われたとおりにただ素振りをするだけの人と、いろいろと考えながら素振りをする人では、上達の早さも違うでしょうし、最終的にたどり着くところも違うはずです。
取らないのか、取れないのか
さて、一概に「メモが取れない」と言っても、実はいくつかのパターンがあります。
まず大きくわけてふたつ。本人の意思で「取らない」場合と、本人は取ろうと思っているのに「取れない」場合です。
「取らない」人にもいろいろと理由があるのでしょうが、ほとんどの場合、メモを取る必要性を感じていない、ということが多いようです。場合によっては、メモというものの存在がその人の記憶から欠落しているのではないか、と思いたくなるような人もいます。本人はそれでよくても、まわりが迷惑をこうむることがしばしばありますが、本人が気にしていないのですからどうすることもできません。また、メモを取ろうと思っていない方は、おそらく本稿を読んではいないでしょうし、「取れない」のではなく自分の意志で「取らない」のですから、これ以上の分類は省略させていただきます。
肝心なのは「取れない」人です。
本人はメモを取ろうと思っているのに、いつもメモを取るのを忘れてしまう人。メモの重要性はわかっているのに、なぜか取れない人。常に手帳やメモ帳やノートを持ち歩いているのに、結局真っ白なままの人。何をメモすればいいのかわからない人。そういう人たちです。
メモが取れない三つの理由
メモが取れない場合、その理由は大きくわけて以下の3つに分けられます。
- 無意識(ついうっかり)
- 意識的(まあいいか)
- 不可抗力
ついうっかり忘れてしまう
「無意識」というのは、いつもは「メモを取ろう」と思っているのに、肝心なときに、"ついうっかり"メモを取るのを忘れてしまう場合です。たとえば、大事なことだと気がつかなかったり、大事なことだとわかっていても、メモを取ることに意識が向かなかったりする状態です。
常日頃「ブログに使うネタがあったらメモを取ろう」と思っているのに、友達との会話の中で面白いことを聞いても「お、ブログに使える」と気づかなかったり、気づいたのに「忘れないようにメモしておこう」と思わなかったりする人は、結構いるのではないでしょうか?
会話に限らず、本を読んだりテレビを見たり、何かに熱中していると、せっかくのアイデアや情報をメモに残すのを、"ついうっかり"忘れてしまうことがよくあります。
まあいいかと思ってしまう
次の「意識的」に「メモが取れない」というのはおかしな話に聞こえるかもしれません。「意識的」だったら「メモを取らない」が正しいように感じますよね。しかしこれは、思いつきや入ってきた情報を自分の意思で選別して、メモを取る必要なし、と判断してしまったり、なんらかの理由をつけて行動に移さない状態です。例えば、以下のような発想が考えられます。
- これはメモを取るほどでもないな
- このぐらいなら覚えておけるな
- 今忙しいからあとで取ろう
- メモ帳がみあたらないからしかたないな
- 今ここでメモ取るの恥ずかしいな
この状態の場合、本人は「メモが取れない」ではなく「メモを取らない」のだと思っている可能性もあります。自分の意志でメモを取っていないのだ、思い込んでいるのですが、実際にはそうではないのです。
この状態の根底には「メモを取らなくてもまあいいか」という意識が隠れています。心のどこかで「面倒臭いなあ」と思っている場合もあります。いずれにしても、上で例にあげた発想は、ほとんどの場合、単なる言い訳でしかありません。「メモを取るべきだ」という考えが頭に浮かんだ直後に、上記のような言い訳をして逃げているのですから、これは「メモを取らない」ではなく「メモが取れない」といっていいでしょう。
物理的にムリ!
本人はメモを取りたいのに、文字通りメモを取れない状況というのも存在します。それが「不可抗力」です。たとえば、以下の状況が考えられます。
- 手元にペンも紙もない
- 満員電車の中で身動きが取れない
- スポーツの試合に出ている最中
- 仕事で失敗して上司に怒られているところ
- 強盗に銃を突きつけられている
すばらしいアイデアが浮かんできて、なんとかしてメモを取りたいのに取れない、そんな状況です。後半はもちろん冗談ですが、まあ絶対にないともいい切れないでしょう。
この状況は、本人はメモを取る気満々なのに、どうしてもメモを取ることができない、という状況です。そんな状況にさえなければ、おそらくちゃんとメモを取っているだろう、ということです。つまり、これはあくまでもたまたまそういう状況にある、というだけで、本人の意思とは関係ないのです。便宜上、メモが取れない理由としてあげましたが、練習でなんとかなる、という問題ではありません。対処としては、練習以外の何かが必要になります。この点に関しては、連載の後半で少し取り上げる予定でいます。
もっとも「手元にペンも紙もない」という状況は、実際には本人のミスですから、なんとかならないでもありませんが。
メモが取れない理由を自覚する
「メモが取れない」と悩んでいる人は、ほとんどの場合「ついうっかり」か「まあいいか」のどちらかに分類されます。自分がどちらに該当するか、考えてみてください。中には、両方あわせ持ったつわものもいるかもしれません。
どちらの場合も、どうすればよいかはわかると思います。
「ついうっかり」派の場合には、メモを取ることを忘れてしまうのですから、忘れないようにすれば良いわけです。メモを取ることに気づいたり、思い出したりではなく、メモを取ることを忘れないようにする。言ってみれば、寝ても覚めてもメモのことを気にかけているぐらいになればいいわけです。
「まあいいか」派の場合には、メモを取るべき状況になったときに、とにかくメモを取るという行動に移るようにすれば良いわけです。「メモを取らなきゃ」と思った直後に、まあいいかとか、面倒だなあと思わないようにする。できれば、一瞬の躊躇もなくメモ帳に手が伸びるぐらいになればベストでしょう。
もちろん、「寝ても覚めても」や「考えるよりも先に」というのは、到達点としては極端な状態かもしれません。しかし、そのぐらいのつもりでいなければ、練習の効果というのは現れないものです。「この程度でいいだろう」と妥協した練習と、「もっと上を目指さなきゃ」と考えながらした練習、どちらが効果があるかはおわかりですよね。
では、次回より練習を開始します!