はじめに
皆様はじめまして。株式会社jig.jpの島田と申します。プライベートではケータイその他デジタルガジェットに四六時中触れていたいと願いながら、携帯電話向けアプリの新規企画などを仕事としています。
この連載では、もはやわれわれの生活に欠かす事の出来なくなった、『真のパーソナルコンピュータ』である携帯電話(本連載では、主に"ケータイ"と表記します)を活用して、皆さんの生活をより便利にするためのヒントを提供していきたいと考えています。
連載の第1回として、フルブラウザの概要について取り上げます。
フルブラウザとは
フルブラウザが何なのかを簡単に説明をさせていただきますと、ケータイからPC向けサイトを閲覧するソフトウェアがフルブラウザです。
ケータイには従来より、iモード用サイトなどを閲覧するためのマイクロブラウザと呼ばれるソフトウェアが提供されていましたが、マイクロブラウザにはPCのサイトを表示するための機能が備えられていませんでした。
フルブラウザを搭載したケータイは2004年に登場し、現在ではケータイの標準的な機能の一つとなっています。現在日本国内で利用できるフルブラウザは、内蔵タイプのNetFront、Operaや、Javaアプリタイプのjigブラウザ、ibisBrowserなどがあり、各社独自の工夫を凝らした製品を展開しています。
内蔵タイプとJavaアプリタイプを使い分ける
NetFrontやOperaに代表される内蔵タイプのフルブラウザの利点は、端末にプリインストールされているので簡単に利用が出来る、端末のメーラーなどの機能と連動して利用が出来るなどのメリットがあります。JavaScriptへの対応範囲も広いので、ケータイから気軽にPCサイトを閲覧したいというユーザーにとってオススメです。
Javaアプリタイプのフルブラウザは、端末にインストールされたアプリと、プロキシサーバ側でのプログラムが連動して動作するものが一般的です。内蔵タイプのフルブラウザと比較して、ページ閲覧の動作が高速、通信データを圧縮する事により、パケット料金を安くする事が出来る、RSSリーダーを搭載しており機能面で便利などのメリットがあります。反面、JavaScriptへの対応が万全で無かったり、アプリ提供元サイトからのダウンロード・有料登録が必要であったりという手間があります。
【主なフルブラウザと機能の比較】
| NetFront | Opera | jigブラウザ | ibisBrowser |
提供方法 | 主に組み込み[1] | 主に組み込み[1] | Java | Java |
主な対応キャリア | docomo
SoftBank
WILLCOM | au
WILLCOM | docomo
SoftBank
WILLCOM | docomo
WILLCOM |
主な利用料金 | 無料 | 無料 | 630円(月額)
6,000円(年額) | 300円(月額)
3,000円(年額) |
タブ表示 | 一部機種で対応 | 一部機種で対応 | ○ | ○ |
PCとのお気に入り連携 | × | Opera Link / Operaサーバサービス | Sleipnirとのお気に入り連携/PCお気に入り管理 | オンラインブックマーク機能 |
RSSリーダー | 一部機種で対応 | Operaサーバサービス | ○ | Webサービスで提供 |
JavaScript対応 | ○ | ○ | 一部対応 | 一部対応
|
---|
端末メーラーとの連動 | ○ | ○ | × | × |
パケット料金 | フルブラウザ料金[2] | フルブラウザ料金[2] | 一般のメール
Webの料金[3] | 一般のメール Webの料金 |
※1)スマートフォン向けにダウンロード提供も実施している。
※2) フルブラウザのパケット通信料は、一般のメール・Webとは異なりパケット定額制の上限金額が高くなる。
※3)ソフトバンクモバイル公式版のみ、『フルブラウザ料金』となる。
若干強引ではありますが、「ケータイからフルブラウザを気軽に利用したい」という方には組み込みタイプのフルブラウザを、「ニュースやBlogなどさまざまなPCサイトの情報にすばやくアクセスしたい」という方にはJavaアプリタイプのフルブラウザをオススメします。
筆者のフルブラウザの利用スタイルとして、jigブラウザを使ってサイトの検索、RSSリーダーからのニュース・Blogチェックを行い、jigブラウザで閲覧できないページについては内蔵フルブラウザ、あらかじめケータイサイトがあり、その内容が充実している場合はマイクロブラウザを利用するという使い分けをしています。
筆者がフルブラウザで閲覧している情報の中で、最も重要な情報は買い物をしている際に必要となる情報です。店頭で商品を前にして、別の店舗での販売価格や購入した方の声を参考にしたい時に、買い物中にフルブラウザを重宝しています。購入を検討している商品に対して、事前に十分な知識がある場合は不要なのですが、店頭で見かけたあまり詳しくないカテゴリの商品を購入する際などは、インターネットから知恵を借りることで、自分にあった商品選びをしています。
PCブラウザと比較したメリット・デメリット
ケータイでのサイトブラウジング、PCでのサイトブラウジングのメリット・デメリットを比較すると、以下のようになります。
【フルブラウザとPCのブラウザの比較】
| ケータイフルブラウザ | PCでのサイトブラウジング
(デスクトップを想定) |
利用シーン | 電波とバッテリーがあればいつでもどこでも | PCを操作できる環境である事が必要
|
---|
初期コスト | 0万~5万円程度 | 安価なモデルで10万円~ |
インターネットの接続設定 | 不要 | ルーターなどの設定・LANの配線を行う必要がある |
通信速度 | ~3.6Mbps(HSDPA) | 100Mbps(FTTH) |
画面解像度 | WVGAクラス | SXGAクラス |
画面サイズ | 3インチ前後 | 20インチ前後 |
入力方法 | 10キーを中心とした文字入力 | QWERTYキーボードによる文字入力 |
PCと比較すると、ケータイのフルブラウザは場所を問わずに利用が可能、接続のための配線・設定などが不要なので簡単に利用できるメリットがある一方で、通信速度や画面解像度・サイズなどではどうしてもPCに適うものではありません。
しかし、インターネットを利用する事で得られる情報は、人間が処理できる量を圧倒的に上回る速度で増加し続けています。情報過多の時代である中、ケータイのフルブラウザのように、必要な時に必要な情報にアクセスできるというのは非常に重要な意味を持ちます。
例えば、先述のように、店頭で見つけた商品の情報をインターネットで調べるというケースでは、どの商品の情報が必要になるかは、実際に店舗に足を運んで初めて認識されるので、それまでは必要でなかった情報が店舗を訪れることによって初めて、『必要な情報』へと変化します。この『必要になった情報』をタイムリーにどこでも入手できることが、フルブラウザを利用する最大のメリットであると考えています。
ケータイとPCのお気に入りを同期するには
PCでインターネットを利用するユーザーにとって、ケータイのフルブラウザは「自宅や会社のPCで閲覧していたサイトを外出先から参照する」というのがメインの使い方になるので、PCで閲覧するサイトを記録し、ケータイからもアクセスする仕組みが重要となります。
上記を実現する仕組みとして、Opera社では、Opera Linkと呼ばれる独自の機能を提供しています。
Opera Linkは、Opera上でのお気に入り・メモなどをケータイやPCで同期する事ができ、利用する環境の違いに左右されずに、ブックマークなどを利用する機能です。
Opera Linkを利用するには、my.opera.comにてアカウントを取得した後、Operaブラウザで同期の設定を行うことで可能になります。PCでOperaを使うユーザーにとって、Opera Linkはとても便利なのですが、残念ながらケータイでOpera Linkが利用できるアプリは、Opera Miniのみに限られており、日本国内でOpera Miniを利用できる対応機種は限られています。
Javaアプリであるjigブラウザを提供するjig.jpでは、PCでのブラウザソフトウェアを提供していないため、Fenrir社が提供するブラウザ、『Sleipnir』との間で、お気に入り同期機能を実現しています。
- jigブラウザでお客様番号の確認とパスワードの発行
- お客様番号の確認
- MENU ⇒ ユーザーメニュー ⇒ お客様番号表示
で表示されるお客様番号を確認。
- お気に入りPC管理でパスワードを発行
より、パスワードを発行します。
- Sleipnirの設定
- Sleipnirを起動⇒ツール⇒Slepinirオプション⇒サービス⇒jigブラウザ連携
で、jigブラウザのお客様番号の下4桁と、jigブラウザのお気に入りPC管理パスワードを入力します。
この操作を行うことで、jigブラウザで追加した「お気に入り」をSleipnirと同期できるようになり、外出先でもPCでも同じブックマークを利用することが可能になります。
そのほか、JavaアプリのibisBrowserではibisBrowser上のお気に入りをPCのブラウザ上から操作が出来るオンラインブックマーク機能の提供を行うなど、『PCのお気に入りを如何にフルブラウザで利用するか』には各社工夫を凝らしています。
どのフルブラウザからも利用可能な方法としては、はてなブックマークなどの、ソーシャルブックマークサービスを利用するという方法があります。Opera LinkやSleipnir⇔jigブラウザの連携と異なり、サイトにアクセスする必要があるので若干使い勝手は劣りますが、PC、スマートフォン、Javaフルブラウザから利用が可能のため、環境を選ばない汎用性のメリットは大きく、実際に筆者も複数のフルブラウザを使い分けることがあるので良く利用しています。
フルブラウザの今後
フルブラウザは、利用者からのパケット料金収入を改善したいキャリア側の意向と、通信環境の高速化、端末の高性能化、パケット定額プランの浸透、豊富なPCサイトのコンテンツを利用したいというユーザー側のニーズ高まりによって、現在ではケータイの標準機能の一つとなりました。
その一方で、『モバゲータウン』に代表されるような、ケータイ向けサイトも大いに盛り上がりを見せており、そもそも『携帯電話で閲覧できるコンテンツが少なかった』事に対してPCのサイトを閲覧できるようにする事で解決を図る『フルブラウザ』というソリューションはその役割を終えようとしており、新たなる利用価値が求められる時期にさしかかったと考えています。
フルブラウザの次なる取り組みについては、また別の機会にご紹介致します。
次回は、実際にフルブラウザを用いて、ケータイからPCサイトを便利に使う方法を紹介する予定です。