飛行機をダイナミックに撮ろう!
飛行機は、カメラを趣味にする人にとって、人気の被写体です。飛行機を撮るのであれば、できるだけダイナミックな1枚に仕上げたいもの。けれども多くの場合、飛行機は遠いところを飛んでいることが多く、標準ズームレンズでは、ダイナミックに撮ることはできません。
望遠ズームレンズを使って、アップ目(長い焦点距離)でシャッターを押せば、それなりに迫力のある写真は撮れますが、実は、その上をいく撮影方法があるんです。それが、望遠ズームレンズの「圧縮効果」を使って撮る方法です。下の写真を見てください。飛行機のダイナミックさが劇的に増しているのが、わかるのではないでしょうか。今回は、その撮影術を紹介します!
圧縮効果とは何か?
手前の被写体と奥の被写体の距離感が少なくなる
岡克己(以下、岡) 圧縮効果とは、手前の被写体と奥の被写体との間の距離が縮まって写ることをいうんだ。上の写真は、羽田空港の着陸機の撮影スポットとして有名な城南島海浜公園で撮ったものだ。焦点距離840mmで撮ったんだよ。
生徒(以下、生) 手前の被写体が橋(進入灯橋梁)で、奥の被写体が飛行機ですね。2つの被写体がギュッと詰まっていて、それぞれの存在感が際立っています!
岡 望遠にすればするほど、圧縮効果はアップするよ。一方、下の写真は、飛行機だけをアップめで撮った写真だ。
生 比較対象となる橋を入れて圧縮効果を効かせたほうが、迫力がグンと増しますね!
遠くのビル群が近くにあるように見える
岡 別の写真も見てみよう。下の写真は、手前のタンカーやガントリークレーン(通称・キリン)と、奥のビル群を、焦点距離600mmで撮ったんだ。肉眼では、奥のビル群はもっと遠くにあるように見えるんだけれど、圧縮効果のおかげで、両方の距離感が縮まっているのがわかる。
生 タンカーやキリンと、ビル群の距離は離れているのに、近くにあるように見えますね。
うまく撮るコツ①
手前の被写体との間に距離を置く
岡 圧縮効果の効いた写真を撮るには、できるだけ焦点距離の長い望遠レンズを使うことが大切だ。それだけに、手前の被写体が近くにありすぎると、その被写体が大きく写り込んで、奥の被写体が入らなくなってしまう。下の写真は、若洲海浜公園から撮った東京ゲートブリッジなんだけど……。
生 近すぎて、飛行機が入り込む余地がないんですね。
岡 そうなんだ。この東京ゲートブリッジの近くにも飛行機は飛んでいるんだけれど、若洲海浜公園からの距離が近すぎて、こんな感じに橋だけがアップに写ってしまう。望遠ズームレンズを最大にしたときの、手前の被写体との距離をイメージしながら、場所を決めるようにしよう。
うまく撮るコツ②
焦点距離が長いほうが、圧縮効果が期待できる
生 望遠ズームレンズの焦点距離は、長ければ長いほうがいいわけですが、どのくらいのものを用意するべきでしょうか。
岡 焦点距離が80mm、600mm、840mmのケースの写真を載せてみたよ。このうち840mmは、600mm相当の望遠ズームレンズに、テレコンバーターと呼ばれるアタッチメントレンズ(補助レンズ)を装着し、焦点距離をさらに長くしているんだ。80mmでは、ダイナミックな写真は撮れないのがわかるよね。
生 はい。僕のデジタル一眼(DXフォーマット)についてきたダブルズームキットだと、望遠ズームレンズのテレ端の焦点距離は35mm換算で450mm相当です。600mmよりは迫力不足ですが、ダイナミックには撮れました!
岡 うん。450mmでも圧縮効果のある写真は十分撮れるよ。
うまく撮るコツ③
単体写真でも圧縮効果は出る
岡 圧縮効果は、手前と奥に被写体があることが前提となるけれど、実は1つの被写体でも、その効果を得ることはできるんだ。
生 あっ! 確かに、この飛行機の写真はダイナミックです。どういうことですか?
岡 これは、「飛行機の前」を手前の被写体、「飛行機の後ろ」を奥の被写体と捉えて、写真を撮っているんだ。
生 そうか! 1つの被写体でも前後を意識すれば、奥行き方向が凝縮されるわけですね!
岡 そのとおり!