実践!GTD~一歩先の仕事管理

第7回レビューステップで過去と未来をつなげよう

時間と共にリストは変わる、それに対応するには?

前回までの連載で、収集ステップから整理ステップまで行い、ようやくGTDのリストを作ることができました。しかしこのリストは、ある一定のタイミングにおいてのリストです。つまり、Inboxを処理した時点での「あなたの頭の中にあるもの」です。時間が経過すると気持ちや予定が変化するため、その結果、リストの項目と現実に行うべき行動とが一致しなくなります。それに対応していくために「レビューステップ」があります。今回は、その「レビューステップ」について説明します。

レビューステップは何のため?

レビューステップでは定期的に自分自身を見直します。言わば過去の時点と変化させる未来とをつなげるための、リレーで言う所のタスキのようなものです。しかし、残念なことにGTDはリレーのようには行きません。タスキが古ぼけてしまい、使い物にならないからです。そのタスキとは何なのか?それがGTDのリストです。

「GTDのリストの情報=頭の中の情報」に戻す

GTDのリストは、自分の頭の中から吐き出したものを、整列したリストです。ですから、その吐き出したタイミングのもののみが記載されています。しかし、現実はそうではなく、時間が経つにつれてすべきことを思い出したり、リストにあったものを実行して完了状態になったりします。つまり、⁠GTDのリストの情報≠頭の中の情報」というような、不一致な状態へと、徐々に変化していきます。これでは、"頭の中にあるものは全部リストにある!"とは言えません。そこで、⁠GTDのリストの情報=頭の中の情報」という状態に戻すのが、レビューステップです。

例えば、商品の棚卸しの作業に似ています。これも、一種のレビューステップです。棚にある商品と商品のリストの内容が、同じであることを確認します。これも「商品のリスト≠棚の中の商品」な状態をなくし、⁠商品のリスト=棚の中の商品」という状態にするための作業です。

これは、IT業界で有名なプロジェクト中のウィークリーレビューもそうです。一週間あった出来事をプロジェクト内のメンバで共有するため、ウィークリーレビュー時にもらさずに情報を収集することが必要となります。

このように、レビューステップは、GTDのステップでなくとも、現実の世界にいろんな形で頻繁に行われています。頻繁に行われているのは、重要なステップだからです。

過去を振り返って、これから未来にすべきことを考え直す

しかし、レビューステップが「GTDのリストの情報=頭の中の情報」に戻すだけなら、これほどまでに、あらゆる状況で重要視されるわけがありません。レビューステップの役目はそれ以外にもあります。それは、過去を振り返って、これから未来にすべきことを考え直すことです。

「駅までに10分」

以下の図を見て下さい。

 駅までに10分で着くための関係図
図 駅までに10分で着くための関係図

横軸を時間、縦軸を地点と見立てた、簡単な移動状態を表した図です。仮に、自宅から1km先の駅で、今から10分後にやって来る電車に乗りたいとします。これを達成するためには、10分で自宅から駅に着く必要があります。

つまり、自宅を基点とすると、10分と1kmの交差する場所が駅となります。1分100m単位で歩く、つまり自宅と駅を結んだ線分の通りに進めば、10分後の電車に乗れるはずです。ここで、この連載でおなじみとなった彼の登場です。ちなみに、私は彼のことをジーコ君と呼んでいます(GTDをやっている子の略⁠⁠。ジーコ君は、自宅と駅とを結んだ線分になるように進んで駅に着こうと、自宅を出発しました。

ところが、5分経過した後、ジーコ君が確認したところ、自宅から400mしか進んでいませんでした。今までのペースで進めば、10分後には800mしか進まず、駅に着けずに電車に乗れないことになります。しかし、電車は待ってくれませんし、駅が自分に近づいてくれることもありません。そこで、残り5分で1kmまで到達するため、ジーコ君は走ることにしました。

さて、この5分経過時点で、ジーコ君は歩くことから走ることに切り替えましたが、この作業が、この状況での簡単なレビューステップになります。ジーコ君が5分経過時点で考えた内容は、以下の通りです。

  • (1)5分で400m進んだ
  • (2)10分後に駅に着かない!
  • (3)電車は待たない、駅も動かない
  • (4)まずい!走らなきゃ

(1)は今まで行った過去のことであり、そして現在の場所の結果です。

(2)は、⁠1)を踏まえて出てきた状況の確認です。⁠1)では5分で400m進んだことははっきりしています。同じように進むと10分で800mしか進まないことは、簡単に想像できることです。しかし、それでは10分で1km先の駅には着かなくなってしまいます。

そこで、⁠3)で今後の状況を確認します。つまり、10分以内で1km先の駅に着かなくてもいい方法を見つけます。要するに、図中の駅が、電車が来るのが遅くなって右に移動したり、駅が移動して下に移動したりしてくれれば、歩く速さを変える必要はありません。でもそんなの無理ですね。駅が動くのはまずありませんし、想定上は日本の電車であり日本の電車は優秀で、15分遅れなどは到底ありえません。

その結果、⁠4)の対応策が出てきます。つまり、自分が速く動くしかありません。

5分の時点でレビューを行った結果、ジーコくんは歩く→走る、と変わりました。つまり、過去を振り返って、これから未来にすべきことを考え直したわけです。

レビューステップは、過去と未来を繋げる

(1)は今まで行った過去の内容で、⁠4)ではこれから行う未来の内容です。丁度、過去と未来が(2⁠⁠、⁠3)のステップを行うことで、一つの流れに繋がります。それが、私にとっては過去と未来に繋げているように感じられます。

このような振り返りを行い、過去の経験を踏まえて、未来に続く道を作っていくことが、レビューステップの目的です。GTDの場合は、今までにやったことやってないことを踏まえて、次にすることを明確にすることが、レビューステップの役割となるでしょう。

レビューステップって実際何をするの?

レビューステップは、何のためかは、以下のような目的があることがわかりました。

  • 「GTDのリストの情報=頭の中の情報」に戻す
  • 過去を振り返って、これから未来にすべきことを考え直す

これらについて、具体的にはどのようなことをすればいいのか、見ていきましょう。

「GTDのリストの情報=頭の中の情報」に戻す

「GTDのリストの情報=頭の中の情報」にするのは簡単です。

今まで説明してきた収集・処理・整理ステップを行います。やり方については、今までの記事を参考にしてください。

過去を振り返って、これから未来にすべきことを考え直す

10分で駅につく場合のレビューステップは理解できたと思います。ここで、先ほどの「駅までに10分」で行ったレビューを思い出しましょう。

  • (1)5分で400m進んだ
  • (2)10分後に駅に着かない!
  • (3)電車は待たない、駅も動かない
  • (4)まずい!走らなきゃ

これをかなり抽象化し、以下のようにまとめました。

  • (1)情報を最新状態にする
  • (2)最新状態の情報で状況を確認する
  • (3)近未来のスケジュールを確認する
  • (4)近未来について計画する

まず(1⁠⁠。⁠駅までに10分」の場合は、⁠1)は時間がどのくらい経過して、どこまで進んだから重要になります。この情報集めをまず(1)で行っています。つまり、5分経過し、400メートル進んでいる、ということです。

次に(2⁠⁠。最新状態の情報は、ここでは5分で400メートル進むという事実です。それをゴールに照らし合わせると、間に合わない、という状況が浮かび上がってきます。

そして(3⁠⁠。近未来のスケジュール、つまり今回では10分で駅に着く必要があるかどうかを確認します。これは必ず行わなければなりませんね。理由は先の見出しで説明したとおりです。

最後に(4⁠⁠。⁠2⁠⁠、⁠3)を踏まえて、自分が走らねばならない、という計画を立てるというわけです。

この内容をGTDにも実行しさえすればよく、加えて一項目の「GTDのリストの情報=頭の中の情報」をどこかで組み込めば、GTDのレビューが行えるのです。

これを踏まえて、次の見出しで実際の作業とに上記内容を結びつけます。

前回のGWeeklySheet、新しいGWeeklySheetとペンを用意しよう

整理ステップで作ったGWeeklySheet、それから真新しいGWeeklySheet、それからペンを用意します。GweeklySheetを使っていない方は、それに相当するGTDのリストを用意してください。今回は、前回と同じ書き写し先を想定して、実際どんな風なことをするのかを説明していきます。

  • Referenceリスト(資料リスト⁠⁠ ― 手帳
  • Somedayリスト(いつかやろうリスト⁠⁠ ― 手帳
  • Projectリスト(見張りリスト⁠⁠ ― GWeeklySheet
  • Calendarリスト(時間割リスト⁠⁠ ― GWeeklySheet+手帳
  • WaitForリスト(返事待ちリスト⁠⁠ ― GWeeklySheet
  • NextActionリスト(実行リスト⁠⁠ ― GWeeklySheet

(1)情報を最新状態にする

「GTDのリストの情報=頭の中の情報」にする作業は、この(1)のステップで行います。GTDのリストが頭の中と同じようになるように、収集・処理・整理ステップを実施しましょう。そして整理した内容は次回GWSに書き込みます。

この時に収集する場所は、次回GWSのInboxではなく、前回GWSや別の紙で行ってください。というのも、次回GWSのInboxは、実行ステップ時に思いついた内容を収集するために用いたいからです。レビューで場所を取られてはちょっと切ないですよね。

そして、前回GWSから残ったものを次回GWSに書き写すことで、もれがないようにします。

(2)最新状態の情報で状況を確認する

状況を確認するために、稼動中のプロジェクトの状況を簡単にまとめます。単に眺めてみるだけではなく、プロジェクトが今どのような状況になっているのか、自分で実際に書いてまとめることに意味があります。まとめずとも、どこまで進んだか、を書いておくだけでも十分です。

(3)近未来のスケジュールを確認する

カレンダーリストは手帳で管理していますので、このステップにて、次回GWSに反映します。次の週分は、前回GWSにも書かれていますが、万が一予定が変更になったこともありますので、確認してください。

(4)近未来について計画する

各プロジェクトのNextActionが何なのか確認しておき、次回GWSのNextActionリストに入っているかを確認します。入っていなければ、次に何をしたらいいのかを考え、次回GWSに書き込みます。

ここで状況が揃うといろいろ考えられるようになります。例えば、⁠来週はミーティングが多いから、あんまり自分の仕事ができないな」⁠来週は重要な作業があるから身をしめていかないと」⁠このプロジェクトは来週締め切りだから優先的に実行しないとな⁠⁠、等々です。面子が揃い、頭をめぐらしても問題ない状態です。作業としては、上記の項目だけを列挙しましたが、場合によっては優先的に行うものを決めたり、次の日にいの一番に実施する内容を決めたりするのもよいでしょう。

ちなみに、忙しい人はあまり考えられない傾向にあります。私の場合、プロジェクトが問題ない状態であるかを確認するだけで精一杯でした。

以上が、レビューステップで行うことです。今回示した内容は、レビューステップのうち、必要最低限の作業です。レビューステップで何をするかは、これ以外にも自分で決められます。しかし、忙しかったりすると、レビューステップで行おうと思っていたことを全部できるとは、限りません。この中でも最低限行う必要のあるものを、今回はピックアップして説明しています。

レビューステップが進まなかったり、これからレビューステップをするならば、ひとまずはGTDのリストを最新化して、プロジェクトリストの次のアクションを明確にするところから初めて下さい。そこから、徐々にレビューステップで行うことを増やしていくことで、問題ありません。

レビューステップのつまづきやすいところ

レビューステップはGTDでつまづきやすい部分の一つです。レビューって結局何をしたらいいのかわからない、という問題点もよく聞きましたので、今回の記事で最低限行う内容を、説明しました。それ以外によく聞く、つまづきやすいポイント3つについてまとめました。

Q1.レビューステップが億劫です。どうしたらいいですか?

A1.無理にレビューステップをしなくていいです。"辛抱たまらん!"と思ったらレビューステップを行おう。

GTDのレビューステップは、身体を奇麗に保つためにお風呂に入るようなものだと、David Allenさんも日本来日記念イベントで言っていました。放っておくにはそろそろ危険だな、というような危険な状態になったら、レビューを行えばよいとのことです。David Allenさんの場合、そのサイクルがだいたい1週間であり、そのことから、GTDのレビューは1週間の間隔で、と言われていることが多いです。

レビューステップをしなかったからといって、死にはしません。気軽に付き合っていきましょう。

Q2.レビューステップをしたいですが、今一歩実行できません。

A2.レビューステップを行うための次のアクションを決めておこう。

レビューステップもGTDのアクションの一つです。しかし、やることが多いので一体何をしたらいいのかわからなくなってしまいがちです。そこで、処理ステップで行ったときと同様、レビューステップにも次のアクションは何か、明確にしましょう。今回の記事では、レビューステップで一番初めにしたことは、前回GWSと次回GWSとペンを用意したことです。あなたがいつもレビューステップをする時、一番初めにすることは何ですか?

Q3.GWSや紙などでGTDリストを作ると、レビューステップの時に書き直すのが面倒です。

A3.デジタルツールにしてしまう、もしくは実行できそうなものだったら実行しましょう。

紙でGTDリストを作ると、面倒になるのが、書き写しです。レビューステップなどで、項目を新しくするために、書き直しをするという作業がどうしても出てきます。紙の場合、これを逆手に取って、書き写すのが面倒ならもう実行しようというのはどうでしょうか? アクションが完了すれば次に紙に書き写すこともありません。結構実行できるものです。ものは試し、NextActionリストで面倒だなと思ったら、自分に聞いてみてください。"書き移すのと実行するのと、どっちがいい?"

次回は実行ステップの詳細について

さて、今回はGTDを継続して使っていくために欠かせないレビューステップについて、説明してきました。多くの人が"Weeklyレビューはストレスだ!"と思っていますが、私も面倒に感じます。David Allenさんだって日本来日記念イベントで苦手だって言ってました。面倒だと思っているのは何もあなただけではありません。だから、ここはちょっとだけがんばって続けていくようにしましょう。1週間2週間抜けても復帰は可能です。ただちょっと面倒になるだけです。途中でやめても、懲りずに続ける――これがGTDとのお付き合いの仕方なのだと、私は思っています。

次回は、最後のステップであり、GTDの本来の目的でもあった実行ステップについて説明していきます。

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