Googleケータイ、世に現る

第39回AndroidはiPhoneを超すユーザ体験が提供できるか?

今回は、Android OSの展望とそれに伴なう端末のユーザインターフェース、ユーザ体験について考察します。

テンポの速い歩みには追従していないのは

2008年秋、まだ頼りなさが残るAndroid 1.0が登場してから、凄まじい進化を遂げ、2010年5月のGoogle I/Oで発表されたAndroid 2.2は、多くの期待できる機能が搭載され、風格さえ感じるようになりました。この凄まじい進化を見ていると、Android OSの行く末は非常に明るいように感じます。一点、ユーザ体験に関しては、ほとんど進化がないと言っても過言ではありません。

Android 2.xは、Android 1.xと比較すると、少しモダンなデザインになりましたが、元のユーザインタフェースが、Palm OSやPocket PCが全盛期だった時代の作りで、それを無理にリノベーションしたような代物なので、iPhoneなどには到底およびません。

Android 2.1のホーム画面。バージョンを重ねるたびに洗練されているが使い勝手はもう一つか?
Android 2.1のホーム画面

Androidを初めて触る多くのユーザは、雑多なユーザインターフェースに戸惑いを感じると思います。通知エリアの使い方は、顕著な例で、筆者は「こんなの分かるわけないよ!」と叫んだほどでした。

Android端末を開発しているメーカーも同じことを感じているのか、独自のユーザインターフェースを搭載している端末が多くリリースされています。たとえば、HTCのSense、モトローラーのMotoblur、ソニー・エリクソンのTimesaceやMiediascapeなどのUXもその一つです。

端末を開発する側は、他社とは違うユーザインターフェースを実装して、差別化を図る考えは理解できますが、ユーザとしては、その代償が付きまとうのが気になります。たとえば、XperiaはOSのアップデートに時間がかかっています。アップデート提供時期が前倒しされて、ユーザが喜んでいる様子を見れば、ユーザが欲しいタイミングとメーカーが提供できるタイミングに隔たりがあるのは間違いありません。

Googleは、こうした流れにストップをかけるため、次期Android OSの「Gingerbread」ではユーザ体験の改善に傾注していると、噂話がチラホラと聞こえて来ます(余談ですが、開発コードネームが焼き菓子に戻っています⁠⁠。

ある人物が鍵に…

Googleから、ユーザ体験の話が出始めたのは、ある人物の存在が大きいのです。

あまり、大きなニュースとして取り上げられていませんが、Palm社のMatias Duarte氏が同社を去り、GoogleのAndroidチームにUser Experience Directorとして合流しました。

Matias Duarte氏をご存知ない方のために簡単にご紹介すると、Palm社が販売しているPalm Pre、Palm Pixiに搭載されているwebOSのユーザインターフェースをデザインした人物です。Palm Preは、日本で販売されていないので、これまた、ご存知ではないかも多いかもしれませんが、宝飾品のようなユーザインターフェースで、その美しさと動きは一見するだけで魅了されるはずです。避難を承知で例えるならば、webOSは「正しい姿のiPhone」と言うことができます。

Matias Duarte氏は、Palm社で仕事をする前は、2000年から2005年の間、Danger社でデザインディレクターとして仕事をしていたことがあります。Danger社と言えば、GoogleでAndroidチームのコンダクターを勤めるAndy Rubin氏らが立ち上げた会社で、Matias Duarte氏が働いていたときはCEOだったようです。

互いに面識があるのかわかりませんが、お互い周り回って、再び、同じ会社、似た同じ役割で働くなんて、運命めいたものを感じてしまいます。別にロマンチックに考えなくても、Matias Duarte氏がGoogle入りをしたのはAndy Rubin氏の手引きがあったのかもしれません(余談ですが、Danger社は2008年にマイクロソフト社に買収されています⁠⁠。

プロダクトは、いつ登場するのか?

webOSの評価を高めたキーマンがAndroidチームに加わったのは、喜ばしいことで期待が高まりますが、ユーザとしては、その成果が何時プロダクトに反映されるのか気になるところです。

webOSのユーザ体験を紹介するビデオ。http://www.palm.com/で観られるので気になる方は一度ご覧あれ。
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次期Android OSの「Gingerbread」は、秋ごろのリリースと噂されています。

Google I/Oで公開されたAndroid 2.2のリリースが若干遅れているようなんで、もう少しだけ先になるのかもしれませんが、次期OSでMatias Duarte氏が手掛けたAndroid OSが登場してくる可能も考えられます。このころには、Android Padが多くリリースされると思うので、iOS 4が搭載されたiPadと真っ向勝負になるはずですし、クリスマス商戦に向けて攻勢をかけることが可能になるはずです。

筆者は、Android OSの表示周りAPIがわかりづらく荒削りな印象を受けるので、この辺りの改修とともに新しいユーザインターフェースが提案されれば、比較的スムーズに導入されるのではないかと考えます。ただ、Googleのいつものパターンならば、そんなことはおかまいなしにできたあがったところで、我々の前の登場してくるのかもしれません。 ともあれ、年末に向けて楽しみが増えました。

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