Googleケータイ、世に現る

第46回オラクルは、なぜGoogleを訴えたのか

Androidが知的財産権を侵害している?

米オラクルが8月12日(現地時間)、米Googleを提訴しました。

Android OSが、オラクルの持つJavaの知的所有権を侵害していることがその理由ですが、オラクルのリリースには、Androidの開発過程で、Googleは直接的かつ繰り返しオラクルが持つJava関連の知的所有権を侵害した」と刺激的な内容になっています。

突然、降って湧いたような話で、筆者も含め多くの方が「どういうこと?」と感じるはずなので、今回は、このニュースを少し掘り下げてみます。

Androidの中のJava

具体的な内容に入る前に、AndroidのJavaを取り上げます。

Androidは、Dalvik仮想マシンと呼ばれる独自実行環境を使ってアプリを実行します。この仮想マシンをJava仮想マシンと紹介されることがありますが、これは、アプリの開発言語にJavaや一部のフレームワークが使われているためです。

独自の実行環境を使う理由は、Java言語で書かれたアプリの実行を高速するためで、その仕組みとして、Dalvik仮想マシンと専用の中間言語形式が用いられています。この中間言語形式は、Google社によると、同じソース・コードをコンパイルしたJavaのバイトコードよりも、50%程度減少し、圧縮形式のJavaバイトコードよりも小さいとしています。

このように、アプリ開発のためにJava言語を用いていますが、その実行には、モバイルデバイス向けに最適化し、独自実装した仮想マシンが使われています。

Android.comには、今回の件に関するニュースは掲載されていない。
Android.comには、今回の件に関するニュースは掲載されていない。

狙いは何か?

AppleがHTCを訴えたように、iPhoneの普及の妨げになるために攻撃するなら理由はわかりますが、モバイル界に影響力が少ないオラクルが何故提訴したのか本当の理由が知りたくなります。

冒頭でも書いたように、Javaの知的財産権を侵害していると言われても、オラクルに買収される前のSunは、Javaのオープンソース化を積極的に進めていたので(Sunは、互換性のない独自実装のJavaが登場することを嫌っていたので、オープンソース化のニュースが話題になったのは、記憶に新しいと思います)今回の提訴は、これまでの動きとは真逆です。

現段階では、周辺状況から真意を推測するしかありませんが「オラクルは、スマートフォン界に影響力がなく、そこから多くの利益が上げられていない。そう言えば、急成長するAndroidは、開発言語にJavaを使っている。Sunという駒を手にしているので、これは良いチャンス。自分たちの影響力がなくなる前に、一言口を挟んで影響力を保っておこう。ついでに金銭的にも実入りがあるかも」と考えたのかはわかりませんが、こんな風に邪推したくなるような動きです。

いずれにしても、Sunという駒を手にしたオラクルは、その駒を可能な限り上手く使うと考えているのは事実です。いかにもアメリカ的なニュースですが、個人的な感想を言えば、オラクルに感じていた畏敬の念が薄らぎました。

Googleのリアクションは?

Googleからは「オラクルが根拠なき提訴によりGoogleとオープンソースのJavaコミュニティを攻撃すると決めたことに、我々は失望している。オープンソースのJavaコミュニティはいかなる企業の枠組みをも超え、Webをより良い場所にしようと日々取り組んでいる。我々はオープンソース標準を積極的に擁護し、業界とともにAndroidプラットフォームを開発するための取り組みを続けていく」と声明が発表されています。

声明は、対立姿勢を取るような内容ですが、オラクルに対して相当額の和解金を支払う可能性が考えられます。その理由は、ここ2年ほどで、積み上がった膨大なソフトウェア資産を御破算にしないための措置です。今回のような理由で、ソフトウェア資産が御破算になれば、アプリ開発者の信頼度はゼロに近い状態で、輝かしかったはずのAndroidプラットフォームの未来が怪しくなるはずです。

今回の提訴は、オラクルがAndroidの快進撃を面白くないと感じていたのか、それとも、この勢いを上手く利用して一儲けを考えているのかわかりませんが、Androidの快進撃にブレーキをかける上で、非常に有効な戦略です。オラクルの次の一手が注目されますが、話がこじれると、5年、10年と長引く可能性も考えられます。業界に影響力が大きい二社なので、業界にメリットのある形で話がまとまってくれることを願いますが、今後の展開を注意して見て行きたいと思います。

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