みなさん、こんにちは。今回はTwitterを使っている企業にフォーカスを当ててみました。Twitterユーザーという立場で実際にTwitterに関わられている方にお話をお伺いして、普段とは違った視点からTwitterの魅力を探ってみたいと思います。
とにかく「熱い思いを伝える場所」を増やしたかった
― マツダ:ロータリーエンジン40周年企画
マツダロータリーエンジンロータリーエンジン40周年記念公式サイト。 ロータリーエンジンについてのさまざまな情報がまとめられている
マツダという大企業が、まだブームになって間もないTwitterを使ってプロモーションをしたことは、私たちTwitterユーザーの間でも大きな話題になりました。「 どうしてTwitterを使ったのだろう?」「 よく動いたよなあ」という感想があちこちで聞かれました。今回はそんなみなさんの疑問に答えていただこうと、企画担当者の相川さんを直撃しました。
「マツダ」プロフィール
「マツダロータリーエンジン40周年 」のWeb企画の一環としてブログパーツを制作。ブログパーツ上でユーザーからのコメントを募集しており、そのコメントの配信にTwitterを利用している。ロータリーエンジン40周年当日の2007年5月30日にTwitterによる情報配信をスタート。現在も配信を続けている。
<企画担当者プロフィール>
相川知輝さん
都内のインタラクティブエージエンシー勤務するブロガー。Webサイトの戦略立案、企画立案、制作プロデュースを中心に活動されています。
ふじかわ: どうしてTwitterで配信しようと思ったのですか?
マツダロータリーエンジン ロータリーエンジン40周年記念ブログパーツ。 寄せられたコメントが下部に表示される
相川さん: きっかけは雑談からでした。企画の一環として作ったブログパーツへの反響に本当に驚いていて、何もプロモーションしなかったのに多くのサイトにはっていただいて、コメントも本当にたくさんの数が入って、このままにしておくのはもったいないという話をしていたんです。どうにかしてこのコメントをもっと多くの人に見てもらえないだろうかと考えていたときに、当時自分がTwitterにはまっていることを話したら、「 じゃあそれでやっちゃいましょうか」というノリで決まってしまいました(笑) 。
ふじかわ: 「エンジン」というマニアックなテーマなのであまりコメントが集まらないから、Twitterを使って増やそうとした……というわけではなかったんですね。
相川さん: Twitterをはじめた時点で、すでにコメントが300とか400とか集まっていたんですよね。「 集まらないからやる」という考えは我々には本当になくて。集まったコメントが熱いものばかりで、知らない人が読んでも何かを感じてもらえるような気がしていたので、いろいろな人に広げたいという思いがあったんです。
ふじかわ: そこでは、Twitterをどのように説明したのですか?
相川さん: 「自分が何をやっているか」というステータスを配信するサービスで、一部で非常に盛り上がっていると説明しました。そのあと、その場でアカウントを作って、実際に「こんな感じ」というのを画面で見せました。
最初の時点では、マツダさんの担当者にTwitter自体のおもしろさを深く分かって頂けたわけではなかったと思います。でも、簡単にできるんだったら、とりあえずやってみましょうかという話になったんです。今は担当者の方もTwitterを気に入って使って頂いているのですけどね。
ふじかわ: Twitter以外の選択肢は考えたりしていたのですか?
相川さん: マツダさんのサイトの一部のコンテンツはBlogツールを使って更新しているんですが、それをカスタマイズして使うという話も出ていました。ただ、それをやるにはデザインや設定をしなければならず、時間がかかるというのがネックになっていました。Twitterだったらデフォルトのまま使っても許される雰囲気があったんですよね。
ふじかわ: Twitterでの配信を始めるにあたって、気をつけたことなどはありましたか?
相川さん: はじめた時点で私たちが分かっていたのは、「 これはTwitterの本来の使い方ではない」ということでした。だって「What's are you doing?」ではないし(笑) 。ただ、ツールってユーザーに新たな使い方を開拓してもらえるのも、ツールとして幸せだと思うので、そこにいるユーザーに不快に思われない程度に行うのはありかなと、考えていました。発言は1日5件に絞っているのですが、それもユーザーに不快に思われないような配慮からです。また、5件一度に流すのではなく、最低1時間はあけてコメントを上げるようにしているのも同様の理由からです。ただ基本的には手作業でアップをしているので、担当者が忙しい時は、更新が若干滞ってるみたいですが(苦笑) 。
ふじかわ: コメントを見ていると、本当に熱いものが多いですね。いい製品なのだということが伝わってきます。
相川さん: 私たちも本当にそう思っています。実はブログパーツへのコメントについては当初は迷いもありました。製品を作っている側が「自分の製品をお祝いするコメントをください」と呼びかけるようなコミュニケーションをしていいのだろうか?というところで、ためらいがあったのですよね。でも、40周年という機会だからこそ、ユーザーからのそういった声を聞いてもいいのではないかとも思っていたんです。
「これを使ったことで自分の生活が変わりました!」といった喜びのコメントを直接メーカーに言う機会って限られている気がするんですよね。どこに伝えたらいいかわからないし。だから、40周年というお祝いムードのときならばそういうことも許されるかなあというのが、ブログパーツの考え方だったんですよね。
ふじかわ: それをTwitterに出したことで、結果的に製品自体のプロモーションにもなった気がするんですね。その商品を好きな人が「好きだ!」ということほど、効果的なプロモーションはないと思うんです。
相川さん: そうですね。商品のすごさはスペックだけでは語れないと僕は思っています。たとえば「これがおいしい」ということを伝えるときに、原材料の良さだけを語ってもなかなか伝わらないと思うんです。もう少しやわらかい、きちんとしていない情報のほうが伝わるものがあるような気がしています。
ふじかわ: ある意味、巧妙に仕掛けられたクチコミともいえますね。Twitterをクチコミのプロモーションツールとしてうまく使ったら、効果的なんじゃないか、ということを見せてくれた例とも言えるかな?
相川さん: ただ、残念ながらTwitterのユーザー数が少ないので広範なプロモーションには使えないかなというのはありますね。あれをやったら車が売れるという状況ではないのですし(笑) 。でもロータリーエンジンを知る人がこれだけ増えて、現在も増え続けていることは、企画として成功だったと思っています。今の時点でそれ以上のことを求めるのは、ちょっと過剰評価かなと思うんですよね。……まあとにかく、ユーザーにうざがられなかったことはよかったなと思いますね(笑) 。
ロータリーエンジンに対するユーザーの声をもっと広く伝えたいという思いと、担当者自身がTwitterを楽しんでいたからこそできた提案が、Twitterでのプロモーションを可能にしたと言えると思います。Twitterという発展途上のサービスを使うという大企業のチャレンジは、結局ロータリーエンジンを愛するユーザーの熱い思いが生み出した結果だったのですね。
社員にもユーザーにもTwitterはすでに身近なツールだった
― Opera
ブラウザベンダーの中では、日本語でのTwitterの発言がもっとも活発なOpera。Webブラウザ開発という「Webを知り尽くしている」立場から、なぜTwitterによるプロモーションを選択したのか、広報担当の壽かおりさんにお伺いしました。
Twitter内のOpera公式アカウントのページ。Operaのロゴが背景に配置されている
ふじかわ: Twitterの存在を知ったのはいつごろですか? そのときどんな印象を持ちましたか?
壽さん: 私が Twitterを初めて知ったのは今年の1月頃だったかと思います。Twitterの「一行程度のコメントをいつでも気が向いたときに更新する」というスタイルはシンプルで良いなとは思っていました。ですがその時点ではまだ Twitterというコミュニティの空気が読めず、しばらくは静観していました。そうこうしている間にも、日々チェックしてる有名ブログのブロガーさんたちがこぞってTwitterに参加しはじめていたので、4月頃自分もおそるおそる参加してみたという感じです。私が参加した当初はサーバが不安定だったり日本語の扱いに問題があったりなど、不便も多かったことを覚えています。
CHOOSE OPERA 日本支部のサイト。Operaファンが参加できるグループで、Twitterはこのサイトの公式アカウントとなっている
ふじかわ: Twitterを使われたきっかけ、理由を教えてください。
壽さん: 会社としてTwitterアカウントを取得したきっかけは、今年5月26日に弊社の会議室で行われたユーザ主催のOperaユーザパーティのアクティビティの一つとして利用するためでした(※ パーティーの詳細は下記リンクを参照) 。パーティには多くのユーザ様にご参加いただきましたが、中には遠方であることなどの理由で参加できなかった方もいらっしゃいます。そのような実際にパーティに参加することができない方にも、少しでもイベントの雰囲気を感じてもらうべく、Twitterを通じたコミュニケーションをと考え、アカウントを取得しました。パーティ開催中は、OperaスタッフがTwitterにログインし随時状況を中継していました。
コミュニケーションツールとしてTwitterを選んだ理由は、既にOperaユーザの皆様の中でも多く利用されていたため、我々にとっても参加者にとっても、身近で手軽なツールだったからです。実際、パーティ中もスムーズに会場外の方との交流が出来たことで、今後もイベントやキャンペーン活動を支援するオンラインコミュニケーション手段として活用できるなとの確信を得ました。
ふじかわ: Twitterを使うと決めたとき、社内の反応はどんな感じだったでしょうか?
壽さん: 日本支社がアカウントを取得する1ヶ月ほど前に、本社のマーケ担当者がOpera公式のTwitterのアカウント を取得しておりました。さらに、日本支社内のマーケ担当者も全員Twitterを既に個人的に使っておりましたし、弊社名のアカウントを確保しておこうと言う意味でも、パーティでのコミュニケーション用途にアカウントを取得しようという案はすんなり決定しました。ただし、アカウントの運用方法についての話し合いは行いました。
ふじかわ: Twitterを利用したことで、何か変化はありましたか?
壽さん: 公式ブログのリファラーを見てみると実際にTwitter経由のアクセスがかなりあるので、新たな流入経路としての効果を実感しています。アカウント開設からかなり時間がたっているにもかかわらず、コンスタントにFollowerの数も増えてきています。
ふじかわ: Twitterの今後の可能性について、ご意見をお聞かせください。
壽さん: Twitterには、下記2点の特徴があると考えています。
ユーザのアクティブさに伴う、スピーディな情報伝播
コメントする敷居の低さによる、双方向コミュニケーション頻度の向上
これらの特長を生かし「What are you doing?」 、つまりOperaが「今何してるのか」を積極的にユーザの皆様に公開し、気軽なフィードバックを得ることが出来るチャネルの一つとして、今後も活用していきたいと考えています。
社員の方がそれぞれTwitterに参加していて、ユーザーにもTwitter参加者が多かったということで、TwitterでのプロモーションはOperaにとってはごく自然な流れだったのですね。OperaのTwitterでの発言には担当者のつぶやきといった手動配信のものもあり、親しみやすい雰囲気が感じられます。企業がユーザーとの距離をより近づけるコミュニケーション手段のひとつとして、Twitterを有効に活用している一つの例と言えると思います。
Twitterを知っているからこそできたプロモーション
2社へのインタビューを通じて感じたのは、どちらの担当の方もTwitterを非常によくわかっているということでした。それを踏まえてユーザーへのケアを適切に行っていることが、成功に結びついているのだと思います。
マツダは、自社のファンではない人も含めた層に対して配信するので、ユーザーにうるさがられないような配慮をしている。Operaは「Operaが今何をしているのか」を高い頻度で公開してフィードバックを得ながら、Operaファンとの距離を縮めようとしている。Twitterという手軽なコミュニケーションサイトの中で起こり得るプラスとマイナスの状況を予測できているからこそ、できることなのだと思います。
この連載を始めてから5ヶ月が過ぎましたが、Twitterの細かなバージョンアップは日々行われています。今後Twitterがどんな方向に進むのかはっきり予測はできませんが、私たちユーザーにとっても、企業にとっても、さまざまな可能性を秘めていると思います。