はじめまして。この度VOCALOIDに関する記事を連載させていただくことになりましたOSTER projectと申します。これから数回に渡ってVOCALOIDの機能や調整の仕方を取り扱っていくことになります。基本の歌わせ方からナンセンスな小技まで、「私はこうやっているよ!」ということをご紹介していこうと思います。至らない点も多くあるとは思いますが、1ユーザーの調整サンプルとして参考になれば幸いです。
今回は第1回ということで、VOCALOIDの基本的な知識と全体の大まかな流れを紹介したいと思います。
「VOCALOID」って何?
VOCALOIDとは、YAMAHAが開発した、歌詞とメロディーを入力することでコンピュータに歌を歌わせることが出来る、という画期的な技術です。基本的に音を鳴らす仕組みは他のソフトシンセサイザーと同じですが、自然に歌わせられるように様々な工夫がされているようです。
そのVOCALOID技術を更に改良したVOCALOID2エンジンを利用して、クリプトン社がリリースしたソフトが今話題の「初音ミク」です。可愛らしい声とキャラクターが大ウケして一種の社会現象にまでなりました。昨年末には第2弾の「鏡音リン&レン」が発売され、今後もミクを初めとしたキャラクターボーカルシリーズが発売される予定で、VOCALOIDは今DTM界で最もホットな話題となっています。
メロディーと追いかけっこ
ミクやリンなどのVOCALOIDのシンガーに歌を歌わせるには、まずメロディーと歌詞が必要です。そしてメロディーと歌詞を割り当てるのに必要なのがVOCALOID2 Editorです。初音ミクなどのVOCALOIDのソフトをインストールすると自動的にこのエディターもインストールされます。
VOCALOID2 Editorを開くと以下のような画面が表示されます。
この画面は基本的にシーケンサのピアノロール画面と同じで、縦軸が音の高さ、横軸が時間となっています。ここにペタペタとノートを貼り付けていきます。
こんな風に。ここで注意しなくてはいけないのは、VOCALOIDのシンガーは人間のシンガーと同じような存在、ということです。例えば、一人でハモろうとしても恐らく大抵の人は出来ないでしょう。それと同じで、VOCALOIDのシンガーが同時に発音出来るのは一音のみです。二音以上重なっているとエラーになるので注意してください。
もっと楽に打ち込みを
VOCALOIDデータの打ち込みは、歌詞を打ち込まなければいけない分通常の打ち込みに比べて煩雑です。しかしながらこのVOCALOID2 Editorは、はっきり言ってシーケンサとしてはかなり使い辛いです。アンドゥーも一回しか出来ませんし、実態はソフトシンセのため発音までに若干の遅延があります。
そこで私は毎回、普段使っているシーケンサで打ち込んだMIDIをVOCALOID2 Editorにインポートする方法を使っています。このことによって、メロディーの打ち込みに関してはかなり楽になると思います。ここで気をつけなければいけないことは、先ほども言及したように、インポートするMIDIの同時発音数が二以上になっていないかということです。和音の状態のファイルをインポートしてもそのまま使えないので、修正する手間が余計にかかってしまうので注意しましょう。
歌詞を入力して歌ってもらおう
わたしわぼーかろいど
次に歌詞を割り当てます。VOCALOIDの歌詞の割り当てに使えるのは平仮名、カタカナ、ローマ字の三種類です。歌詞を入力する前はデフォルトで「あ」が割り当てられています。不正な値を入力しても「あ」と発音されます。
歌詞を入力する段階で気をつけなくてはいけないことは、歌詞をそのまま入力してはいけないということです。例えば、VOCALOIDには文脈から「は」という文字を「わ」の音で発音するかどうか識別する機能はついていません。なので「私はVOCALOID」という歌詞を歌わせるには「わたしわぼーかろいど」のように歌詞入力しなければいけません。「ー」については、前に発音した単語の母音を引き継いで発音する仕様になっています。
っ
次に「っ」の歌わせ方です。これも「っ」と入力するだけではダメです。ボーカロイドの調整の基礎は「自分で歌って考える」です。普段カラオケなどで歌詞の「っ」をどうやって歌っているかを想像してみてください。すると「っ」の瞬間は何も発音していないことに気づくと思います。これをシンガーに再現させれば良いのです。
例えば「おいかけーっこー」と歌わせたいときは「おいかけー(無音)こー」と発音させれば良いのです。
I like 寿すぃ(寿司).
私は普段ローマ字によって歌詞の入力をやっていますが、ローマ字による入力でも気をつけなければいけない点が幾つかあります。例えば「し」の発音をさせるのに「shi」と「si」では発音が違います。前者は日本語の「し」の発音、後者は「すぃ」という感じで少し欧米チックな発音になります。さらに平仮名、カタカナ入力では「お」と「を」は同じ音で発音されますが、ローマ字入力では「o」と「wo」の発音は「お」と「うぉ」という全くの別物になってしまいます。他にも「zi」と「ji」の違いなど、色々試してみると面白いと思います。
おわりに
今回はVOCALOIDの基本的な知識と歌わせるまでの流れを紹介しました。メロディーと歌詞を打ち込んだだけでもかなり滑らかに歌ってくれますが、これだけではまだ人間っぽさは不十分です。VOCALOIDで人間のシンガーを再現しようとするには、パラメータや各ノートをいじって抑揚や音程の揺れなどの設定を細かくする必要があります。次回からはこの細かい調整の仕方やVOCALOIDのクセについて説明していこうと思います。
それでは次回以降もよろしくお願いします。