11月29日に開催される「Exciting Coding! 2013」は、ITスペシャリストの講演を聞くことができるセミナーだ。今回のテーマはクラウドアプリ開発やクラウドサービス。「DevOps」「クラウドアプリ/サービス」「ビッグデータ」「Webアプリ開発」などのキーワードが満載! まさに今、時代の先端を走っているアグレッシブな5名が講演する。この機会を見逃す手はない!
ここではその内容を、ちょっとだけ先取りしてご紹介しよう。
伊藤 直也 氏「Webサービス開発のいま」
伊藤氏は、ニフティ時代に「ココログ」の開発に関わり、はてな時代は「はてなブックマーク」を生み出した。それらを利用している人も多いのではないだろうか。また、はてな時代にはCTO、グリー時代は技術統括部長を務めるなど、B2C開発やビジネス現場のきびしさや面白さにも精通している。知識も豊富で、話していても話題が尽きない人物である。
最近普及してきた「リーンスタートアップ」「継続的デリバリー」「DevOps」などの開発プロセス手法も、彼はその言葉が生まれる前から取り入れ、その変化を体感してきた。それらの手法がどういうものか、それらがWebサービスの開発をどう変えたのか。クラウドと出会って、さらにどう変わろうとしているのか。エンジニアはどう受け入れているのか。本講演では、このWeb開発の変化や現状を紹介してくれる。その伊藤氏からメッセージが届いた。彼のいろいろな経験を聞くことができそうだ。
──Web開発に携わってきて10年ちょっとが経ちました。10年前の開発は、手あたり次第に手をつけて、それはもうはめちゃめちゃでした。苦しかった。10年経った今は、まるで活発なオープンソースプロジェクトのように、Webサービスを開発するようになりました。テストは自動化され、コードレビューはワークフローに自然と取り込まれ、書いたコードはシステムによって継続的にリリースされ続ける。そして、そんな開発プロセスの根幹は「楽しさ」によって支えられています。開発は本来「楽しい」ものです。仕事が楽しくて、何が悪い。いまどきのWeb開発が、どんなやり方で行われているか。これまでどんな風に変わってきたのか。実体験をもとに紹介します。
海野 弘成 氏 「プログラミングの道具作り」
海野氏は、自ら開発したプログラムで起業したIncrements社の社長である。同時に、同社の看板サービスであるプログラマのための技術情報共有サイト「Qiita(キータ)」や、Mac用技術情報記録ツール「Kobito」のプログラマでもある。「Qiita」のプログラマ登録は今や3万人を超え、国内プログラマの頼もしい相棒のような存在になっている。
海野氏は、スマートフォンやクラウド環境の発達等により、今後もプログラマ人口の増加やプログラミングの与える価値の拡大は加速し、同時に、プログラマのための道具の作成・改善の重要度も増していくと語る。本講演では、ウェブサービスやOSSなどをプログラミングの道具として使って開発してきた彼自身の経験をもとに、人に使われる製品作りについて紹介してくれる。その海野氏からもメッセージが届いた。「人に使われる」ことの裏表の話をいろいろ聞くことができそうだ。
──学生時代の研究開発と、多くのプログラマに利用されるサービスとなったQiita、Kobitoのサービス開発の経験をもとに、プログラミングとサービス開発の違いや大変さ、面白さなどについて皆さんとお話できるのを楽しみにしています。
舘野 祐一 氏 「クラウドを使ったユーザ向けサービス開発の面白さ」
舘野氏は、日本最大の料理レシピサイトとなった「クックパッド」のエンジニアである。はてな時代は「はてなブックマーク」のリードプログラマ・ディレクターを務め、その仕様や開発マネジメントを担ってきた。クックパッドでは、ユーザに価値を届けることができる開発とは何かを考え、それに適した開発プロセスを導入しているとのこと。社内の開発環境の整備や情報共有のノウハウなど、いろいろなテクニックが彼のポケットには詰まっている。クックパッドは159万品を超えるレシピがあり、サービスの有用性はユーザ数が語っている。今やユーザ数は2000万人だそうだ。
このクックパッドの開発にはクラウドシステムを活用している。本講演では、ユーザ向けサービスでクラウドをどのように使っているか、クラウドを使った開発の醍醐味は何か、などを紹介してくれる。クックパッドの開発の秘訣を知ることができるかもしれない。
中川 真宏 氏「クラウドで変わるソフトウェアの提供方法」
中川氏はTreasure Data社のシニアソフトウェアエンジニアである。OSSが基本的な活動の場所であり、どうすればユーザが楽にデータを扱えるかを、常に考えているという。
Treasure Dataと言えば、日本人が米国シリコンバレーで創業した、ビッグデータ解析サービスを提供している企業である。中川氏はこのサービスの要であるデータ収集機能「fluentd」の開発者である。多くのデータ解析の現場がデータ収集に苦労している中、このロバストなデータ収集機能を持っていることがTreasure Dataの強みとも言われている。驚くことに、その重要なツールはOSSとして公開されている。懐の深さとともに時代を牽引する意思も感じられる。
Treasure Dataの「Treasure Data Platform」は、このfluebtd、機能追加したHadoop、一般的なBIツールなどで構成されたビッグデータ処理基盤であり、AWS上でサービスを展開している。本講演では、Treasure Data社創業の背景やクラウドサービスの開発・運用の裏側を紹介してくれる。数兆件のデータを管理するTreasure Dataの実体、特に血流ともいえるデータ収集の方法を知る絶好のチャンスである。
安川 健太 氏「AWSクラウドが開発者にもたらすスピードと可能性」
安川氏はアマゾンデータサービスジャパンのソリューションアーキテクトである。「AWS」は世界中で展開されるクラウドサービスであり、利用している人も多いのではないだろうか。安川氏もこのAWSを利用し、虜になった1人である。大学時代はIPネットワークのQoSに関する研究、エリクソンジャパン時代は人とセンサーやデバイスがつながる次世代M2Mサービスの研究開発を行ってきたが、その間にインフラとして使ったAWSに感銘を受けアマゾンデータサービスジャパンに入社したという。
クラウドを用いれば、開発者1人ひとりが出来る事は格段に大きくなる。大規模な設備がなくスタートできなかった開発も、今ではクラウドを使って、誰でも必要な時に必要なだけリソースを入手して開発できる。本講演では、実例を交えながらクラウドコンピューティングがもたらした変革やその利点を紹介する。また、実際にどれほど簡単に研究や開発に使えるかをデモも交えながら紹介する。AWSクラウドが開発者にもたらすスピードと可能性をぜひ体感していただきたい。
なお、セミナーの概要は以下の通り。ぜひサイトにアクセスして欲しい。
- 「Exciting Coding! 2013~ITスペシャリストが語るクラウドシステム/アプリ開発の面白さ~」
- 開催日時
- 2013年11月29日(金)13:30~17:45(受付開始:12:30~、ビアバッシュ:18:00~20:00)
- 会場
- 日立ソリューションズ JR品川駅イーストビル 20F 会議室(東京都港区港南2-18-1)
参加申込みは専用申し込みサイトから。当日受付もあります。
セミナー終了後にはビアバッシュも行われる。ビアバッシュとは懇親会の一種で、飲み物や食べ物を片手に自由に話をする場。講演者の方々も参加するので、講演中に質問できなかったことを聞くチャンスだ。開発やビジネスの裏話も聞くことができるかもしれない。
最後になったが、本セミナーの主催は情報処理学会である。若い人達にいろいろな知識を吸収してもらいたいと、昨年からこのような柔らかい形式で、時代を切り開いている人達の話を聞くセミナーを開催している。
ぜひ一緒に楽しみましょう! 会場でお会いできることを楽しみにしています。