第3回めとなるAmazon Web Services
今回のre:Inventでは合わせて11の新サービスが発表されました。その中でもこれからのエンタープライズITを最も大きく変える可能性があるサービスといえるのが新データベースエンジン
「MySQL互換の速いDB」ではAuroraを見誤る
- ──re:Invent初出展、
おめでとうございます。 藤川:ありがとうございます。スタートアップ用の小さなブースなんですが、
去年までとは違った形で参加できるのはすごくうれしいですね。 - ──御社のビジネスのお話はあとで伺うとして、
とりあえず今日 (11月12日) の発表でいちばん印象に残ったサービスは何でしょうか。 藤川:
「Amazon Aurora」 です。アンディ・ ジャシー (Andy Jassy、 AWSのトップでSVP) のキーノートでは 「MySQLの5倍の速度で商用データベースの10分の1のコストのRDB」 と説明されていましたが、 ただのMySQL互換の速いデータベースではないと思います。 - ──というと?
藤川:AuroraはMySQL互換、
正確にはMySQL 5. 6互換ですが、 おそらくAWSは現在RDSで提供しているMySQLを徐々にAuroraにシフトする方向にもっていくと見ています。 - ──えーと、
たしかAuroraは 「Amazon RDS for MySQL」 で選べるエンジンのひとつとして提供されるわけですよね。RDSのMySQLユーザはこれからはオープンソースのMySQLか、 それとも今回発表されたAuroraか、 どちらかをデータベースエンジンとして選べるようになると。それを今後はAuroraオンリーにするということでしょうか。 藤川:もちろん急にはそうならないでしょう。ただAuroraの特徴を見ていくと、
これが単なる"速くて安いMySQL互換RDB"ではないことがわかります。もっとはっきり言うと、 AWSがクラウドのために新たに作りなおしたRDBですね、 これは。
「クラウドのためにゼロから再設計されたRDB」のポテンシャル
- ──具体的にはAuroraのどういうところがスゴいんでしょうか。
藤川:まずストレージです。デフォルトでは10GBのディスクが提供されますが、
テーブルの容量が増加するにつれて透過的にディスクを拡張します。最大64TBまで拡張可能で、 ユーザは利用しただけストレージ容量料金を支払う仕組みになっています。 - ──それって本当の意味のクラウドデータベースっぽい感じがします。
藤川:その通りです。これが本当にうまく機能すれば従来のRDSで提供していたMySQLはいらなくなるはずです。わざわざアプリケーションをとめてストレージを追加しなくてもAuroraのほうで自動的に増やしてくれるんですから。
- ──ストレージ増設によるダウンタイムがなくなると?
藤川:ダウンタイムなしの運用は、
おそらく相当な数の顧客からAWSに対してリクエストがあったはずです。これはFlyDataのお客様からもよく聞く声なんですが、 たとえばソーシャルゲームや金融などでは 「サービスを止めてメンテナンスを行う」 なんて、 本当に冗談じゃないという時代になっているんですよ。でもこれまでのRDBでは信頼性や可用性の面からも難しかった。それがAuroraの登場で大きく変わる可能性は高いですね。 - ──Auroraは信頼性と可用性を担保するために、
ストレージを3つのAvailability Zone (AZ) に2つずつコピーするとさっきキーノートでジャシーさんが言ってました。これも大きなポイントでしょうか。 藤川:そうですね。合計で6本のディスクにコピーが作られることになります。ストレージ側で分散処理による同時書き込みを行い、
可用性を担保 (99. 99%) しているわけですが、 これぞクラウドでの分散処理という感じがします。内部に並列分散機構をもたせたのは、 クラウドでデーターベースを運用するというスタイルがこれからのITの前提になると踏んでのことでしょう。 つまりAuroraは、
AWSによってまったくゼロから再設計されたRDBというわけです。これはいままでのシステムインテグレーションの常識すら変える可能性をもつデータベースだと思います。
- ──MySQL互換というところに目が行きがちですが、
そうではなく本当の意味でのクラウドデータベースというわけですか。オンプレミスで使われていたデータベースをクラウドに持っていったのではなく、 クラウドのために作られたデータベースだと。それならAWSが徐々にAuroraにシフトしていこうとするのもわかる気がします。 藤川:Auroraはほかにもリードレプリカとプライマリインスタンスがストレージを共有するとか、
アーキテクチャ的に非常に興味深い点が多いです。FlyDataでもこれから使い込んでみる予定ですが、 「FlyData Sync」 にもそのまま使えそうな気がします。
「クラウドありき」で常識を塗り替えるAWS
- ──そういえばビジネスのお話を聞くのを忘れていました。Redshiftビジネスのほうはいかがでしょうか。
藤川:ニュースにはほとんどなっていないんですが、
今回、 RedshiftにUDF (User Defined Function) が導入されたのが我々にとっては非常にうれしいニュースでした。これは本当にRedshiftユーザ待望の機能だったので。 Redshiftはいま、
とくに米国では本当にユーザの裾野が拡がっています。今回の出展でもすごく手応えを感じました。これまでは従来のデータウェアハウスが高くてRedshiftに乗り換えるという話が多かったのですが、 これからはオンプレミスのデータウェアハウスではできない、 Redshiftだからこそできるビジネスも増えてくるんじゃないでしょうか。 Auroraもそうですが、
AWSはこれからもどんどん既存の常識を塗り替えたサービスを出してくると思います。FlyDataもスタートアップらしく、 そのスピードに遅れないように追いかけていきたいですね。 - ──では来年はもっと大きなブースでお話できることを期待しています! ありがとうございました。