昨年秋
本インタビューでは、
LINEが発表したLINK Chainとは?
Q:2017年8月、
LINE Token Economy構想が発表され、 LINEが考えているブロックチェーン活用の姿が見え始めました。まず、 具体的にどのようなことを考えているのか、 教えてください。 那須:LINEが発表した
「LINE Token Economy」 は、 ユーザとサービス提供者をつなぐ、 共創関係の構築を目指すためのエコシステムです。それを担うのが、 私たちが開発するブロックチェーン 「LINK Chain」 です。 LINK Chainは、
単独のブロックチェーンではありますが、 LINK Chain同士をつなぐことで、 ブロックチェーンネットワークの構築が可能です。 Q:LINK Chainはどのように使うものなのでしょうか。
那須:LINK Chainは基盤技術で、
実際にはその上で稼働する分散型アプリケーション 「dApp」 サービスがユーザに使用してもらうプロダクトになります。dAppサービス (以降dApps) は、 ブロックチェーンの考え方に則って、 ネットワーク全体でアプリケーションの管理が行える非中央集権型の運用が行えます。8月の構想発表時は6つのdAppsについて発表いたしましたが、 2018年12月現在で3つ (日本国内で2つ) のdAppsがリリースされています。すべて、 LINE社内で企画・ 開発したものです。 さらに、
dAppsでは、 LINE Chain内で利用できるLINE 独自の汎用コイン 「LINK Point」 を使えるため、 LINK Chain内での経済圏の構築にもつなげられます。 これからの目標は、
2019年の第1四半期にはdAppsをパートナー企業に開発してもらえる体制を整備し、 第2四半期を目標に、 dApps開発のためのフレームワークの提供を目指しています。 Q:LINK Chainの公開を予定されているとのことですが、
利用にあたっての審査などはあるのでしょうか? 那須:2018年12月時点で、
まだフローについて検討中のため正式な回答はできないのですが、 ご利用いただくにあたって、 運用のルールや法的な制約などをふまえ、 審査は設けることになるかと思います。申し込みは誰でも行え、 審査によって利用の可否を判断していく予定です。また、 こうすることでセキュリティの確保にもつながると考えています。 ただし、
審査基準については、 提供開始後、 状況を見ながら随時調整していきたいと思っています。
いつブロックチェーン領域への参入を考えたのか?
Q:ところで、
LINEと言えば、 コミュニケーションプラットフォームとして、 日本だけではなく、 世界各国のユーザを獲得しています。とくに2018年12月時点で、 日本国内だけでも月間アクティブユーザ数が7,900万人以上というデータも伺いました。 その中で、
新たにブロックチェーン領域への参入を決めたのはどういう背景があったのでしょうか。 那須:2017年に、
日本国内では仮想通貨ブームがありました。そこで、 トークンエコノミーが活性化している状況をLINE社としても見ており、 トークンエコノミーと私たちのサービスの相性が良いのでは、 と考えたのがきっかけです。 実際に取り掛かったのは2018年に入ってから2月ぐらいに動き出しました。
そして、
私個人としてもブロックチェーンチエーンを使って暗号通貨やトークンなどを提供するようなプラットフォームを開発したいと考えていたので、 2018年4月ごろに、 今所属しているBlockchain Labの立ち上げに参画しました。当初は6月末にリリースしたいと考えていたので、 相当のスピード感で動いていましたね。 ただ、
ブロックチェーンと言うと新しいプラットフォームのように捉えられがちですが、 LINE DEVELOPER DAY 2018でもいくつか話が挙がったように、 今、 LINEのプラットフォームではマイクロサービス化が進んでいます。ですから、 LINK Chainも、 LINEプラットフォームにおける、 1つのマイクロサービスとして、 私は考えています。 話を戻します。LINK Chainのコンセプトが決まって、
実装に入ったのは5月以降です。もともとLINK Chainは日本でつくると決めてはいましたが、 その当時、 韓国のベンチャー企業でICONという、 ブロックチェーンの開発および仮想通貨交換所を運営している企業があり、 そことの提携が決まりました。それが5月ですね。 そのとき、
uncahinというジョイントベンチャーを共同出資で立ち上げ、 LINK Chainの共同開発開始に至りました。
LINK Chainを支える技術
Q:非常に早いスピード感で開発が進み、
リリースに至ったわけですね。それでは、 LINK Chainの技術的側面について教えてください。どのような技術を利用し、 開発を進めているのでしょうか。 那須:LINK ChainはいわゆるブロックチェーンのLINK Networkと、
それを扱いやすいようにするためのLINK Frameworkでできています。 LINK Networkは共同開発を進めているICONで使用していた言語、
Pythonでできており、 Smart ContractもPythonで記述できるのが特徴です。 LINK Frameworkは基本的にWeb APIベースのフレームワークで、
LINK Networkに透過的にアクセスできます。またgRPC (Googleが開発したRemote Procedure Call) を採用しており、 HTTP/ 2. 0にも対応しています。 まず、
一般向けに開放する開発フレームワークもこちらのLINK Frameworkになる予定です。 Q:LINK Chainの開発体制はどのようになっていますか?
那須:2018年末時点で、
日本は私を含めて5名、 韓国側で30名ほどです。韓国側では、 仮想通貨やプラットフォーム開発に関わるエンジニアが多いです。 日本では、
おもにLINK Chainの基盤開発、 dAppsの開発に取り組んでいます。 Q:これから開発が進むにあたって、
より多くのエンジニアが必要になるのではないかと想像します。那須さんの視点で見て、 どのようなエンジニアがLINK Chainの開発に向いていると思いますか。 那須:私自身が、
もともとHBaseを利用した開発に取り組んでいたこともあり、 また、 LINK Chainを含めたブロックチェーンには分散システムの知識が欠かせません。ですから、 あえて具体的な技術を上げるとすれば、 分散システムに関連する技術を持っているエンジニアが好ましいです。 HBaseに限らず、
並列分散処理であったり、 分散ファイルシステムであったり、 分散システムの動きを知ったうえで開発が進められると、 LINK Chainのコンセプトの実現がしやすいのではないかと思います。 また、
その上で動くアプリケーションを考えるうえでは、 ビッグデータの扱い、 すなわちデータ処理・ 分析などの知識も必要ではないかと考えます。
LINK Chainが目指す未来
Q:LINK Chainの整備が進むと、
次は、 ユーザに向けたさまざまなサービス、 プロダクトが登場すると思います。那須さんが目指す、 LINK Chainで実現したい世界について教えてください。 那須:LINEは今、
これまでお話してきたものとは別に、 元々 「LINEポイント」 というポイントシステムを持っています。将来的には、 LINK ChainおよびLINK Pointでも同等の価値を提供していきたいです。 2018年の初頭には、
仮想通貨に関してさまざまな事件があり、 ユーザにとって仮想通貨は危険なものというイメージが付いてしまったように思います。しかし、 ブロックチェーン技術をしっかり活用して、 P2Pにおける信頼とセキュリティの担保を実現できれば、 そこに今のお金ではない、 新しいトークンエコノミーができると私は考えています。 LINK Chainでは、
当初の構想でも話されていたとおり、 LINEのトークンエコノミーを実現したいですね。 これはまだ私の頭の中で考えているものではありますが、
さらなる理想を言えば、 LINK Chainというプライベートなブロックチェーンを、 パブリックなブロックチェーンと連携させて、 ユーザにとってより高い利便性を提供できるエコシステムを実現できたら、 と考えています。 そうすることで、
2018年後半から注目を集めているキャッシュレスの世界の促進にもつながるはずです。 LINK Chainは昨年夏にリリースしたばかりではありますが、
2019年はそれをもっと身近に、 そして、 あたりまえのものになるよう、 私を含め、 Labのメンバー一同、 LINK Chainの開発に専念し、 数多くのパートナー、 開発者の皆さんにdAppsを開発してもらい、 LINE Token Economyを実現したいです。 ――ありがとうございました。