日々物件情報が大量に更新され、
仲介業務・
手作業による「物出し」でかかる膨大な時間コスト
- 小玉氏:
不動産業界には
「物出し」 (ぶつだし) と呼ばれる、 お客様の条件に合う空室物件情報を検索してご提案する作業があります。 検索した物件情報はデータベースに入力・
管理する必要があるのですが、 この入力作業の多くを手作業で行い膨大な時間コストがかかってしまうことが、 不動産業界の課題としてよく取り上げられます。 - 松木氏:
手作業による煩雑な定型業務を解消するための不動産管理・
業務支援システムを提供するサービスは多くあります。 一般的な業務支援サービスは、
物件情報をシステムに登録しておくことで、 大手不動産ポータルサイトなどはもちろん、 不動産会社様の自社Webサイトとも連携して物件情報を掲載する機能を備えています。 とくに仲介会社様は、
広告出稿による集客、 お客様対応など他にも重要な業務があるため、 定型業務である物件情報登録作業を簡略化できる業務支援サービスを利用する必要性が高いといえます。 ただ、
業務支援サービスへ物件情報を登録すれば終わり、 といったわけではなく、 さまざまな情報源から、 頻繁に情報の検索、 管理・ 更新をしなければならないので、 情報管理の作業は非常に煩雑です。 例えば、
管理会社様が運営している、 20~30以上の仲介会社様向け空室情報サイトから空室情報がないか確認して、 新しい物件情報があった場合は、 業務支援サービスへ情報登録・ 更新する手間が、 日々発生しています。 空室情報を周知・
宣伝してもらいたい管理会社様にとっても、 仲介会社様が定型業務に多くの時間を割かれることは課題であるといえます。
いまだに多く残る紙ベースでの物件情報管理
- 小玉氏:
不動産業界では、
仲介会社様が管理会社様の空室情報サイトから引っ張ってきた物件情報を、 店頭へ貼り出すチラシなど、 紙ベースで出力して管理する慣習がまだまだ残っています。 - 松木氏:
なぜわざわざ紙に出力するのか?
というと、 物件情報を業務支援サービスに登録する際に、 図面形式で出力した紙を確認しながら間取り図や地図などの各種情報を登録した方がやりやすい、 という実状があるからです。 多くの事業者様が、
紙→データへの入力作業を、 専属のアルバイトの方を採用して対応しています。 入力作業に慣れた方でも、
新しい物件情報1件を業務支援サービスへ登録するのに、 約15分はかかります。 ただし、
チラシのフォーマットは業者によってバラバラです。複数枚のチラシにまたがって入力項目が掲載されている、 コメントが入っている、 方角など図面から情報を読み取らないといけない、 さらには項目名自体がわかりづらい、 など…。定性的な情報を、 都度確認しながらシステムに入力しやすく直さないといけない場合がよくあります。 このような複雑な物件情報では、
1件分の登録を完了するのに、 30分近くかかることも珍しくありません。 大抵の事業者様は、
毎日5~10件は新着物件情報の登録作業があるため、 1日で約75~150分はこの定型業務に時間を割く必要があります。 また空室物件の情報は日々入れ変わるので、
メンテナンスの手間もかかります。
簡略化が難しい、物件情報登録の定型業務
- 松木氏:
大手不動産ポータルサイトを閲覧すればイメージが湧くと思いますが、
登録作業をなかなか簡略化できない理由に、 1件の物件情報だけでも多種多様な掲載事項がある点が挙げられます。 物件名、
沿線情報、 最寄り駅からの徒歩時間、 建物の構造といった基本的な情報もあれば、 セールスポイントになりやすいオートロック、 日当たり、 ペット可、 2人入居可といった設備条件など、 掲載させる情報は多岐にわたります。 また、
物件が賃貸か分譲かでも、 さらに入力項目は細分化されます。 仲介会社様は、
物件1件あたり何百項目もの入力情報を用意して対応しなければならず、 業務支援サービスへの登録作業の簡略化がなかなか難しい、 といった背景があります。 - 小玉氏:
さらに同じ物件でも、
不動産会社様の特色によって、 公開される情報にバラつきが生じることがよくあります。 例えば、
ファミリー向け物件を多く取り扱う仲介会社様では、 ファミリー層に受ける 「学区」 や 「公園」 の情報を入力項目として設けることがあり、 入力情報の細分化につながります。
課題を認識していても定型業務簡略化に注力できない背景とは
- 小玉氏:
課題として取り上げられても、
不動産業界が煩雑な定型業務をなかなか解消できない要因に、 不動産業界における中小企業の割合の高さや、 ITや業務支援システムの普及率の低さがたびたび指摘されます。 株式会社帝国データバンクから提供された
「不動産業界主業態の売上高別割合」 によると、 売上高が1億円以下の規模である中小企業の割合は、 75%以上と圧倒的です。 また当社では、
株式会社ビズオーシャンの施策機能を活用して、 全国の不動産会社に向けてに 「ITや業務支援システムの導入状況」 に関するアンケートを行っています。 表 自社業務におけるITや業務支援システムの導入状況 (4/ 1~5/ 18時点実施中、 速報値、 一部抜粋) 自社業務のIT活用状況 割合 n=215 とても活用している 10. 2% 22 まあまあ活用している 38. 6% 83 あまり活用されていない 37. 7% 81 まったく活用されていない 13. 5% 29
ITツール活用状況 割合 n=215 Excelなどパソコン付属ソフトを活用 48. 4% 104 とくに活用していない (電話・ 紙・ FAXが主体) 32. 1% 69 不動産業界向け業務支援システムを導入 15. 3% 33 セールスフォースなど業務システムを導入 4. 2% 9
従業員数 割合 n=215 1-9名 83. 3% 179 10-49名 8. 8% 19 50-99名 2. 8% 6 100-299名 2. 8% 6 300-499名 1. 4% 3 500名以上 0. 9% 2 「自社業務のIT活用状況」 については、 活用している/ 活用されていないの回答割合は半々と拮抗していますが、 「ITツール活用状況」 の回答結果を確認すると、 Excelなどの簡易的なツールで物件情報を管理している企業が大半で、 業務支援システムを導入している割合は20%以下です。 また、
いまだに紙やFAXベースで業務をこなしている企業の割合が、 32. 1%もあります。 アンケート対象とした企業の内、
83. 3%が従業員数10名未満、 50名未満も含めると90%を超えます。中小・ 零細不動産会社はITリテラシーの高い人ばかりとはいえず、 日常業務がある中では社員のITリテラシーを上げるために教育コストを割くことも現実的には難しいです。 なかなかIT活用が普及しない不動産業界の実態や課題を表しているといえるでしょう。
不動産業界特化型SaaSとして培ってきたいえらぶCLOUDが展開する業務支援サービス
- 松木氏:
入力作業に課題が多い不動産物件情報ですが、
基本的にどの不動産会社様が入力しても差が生じにくい項目もあります。 当社は、
中小の仲介・ 管理会社様を中心に、 不動産業務支援システムに特化して10年以上前から事業を展開してきた強みを活かして、 多くの定型業務を簡略化できるサービスを提供しています。 例えば
「いえらぶCLOUD業者間サイト」 では、 空室情報の募集から入居申込みまでの手続きを一元管理することができ、 定型業務のワークフロー全体を同サービス上で処理できます。 さらに300項目以上を対象とした入力不備を検知・
通知するチェックツールも備え、 正確でミスのない定型業務処理を可能にします。 - 小玉氏:
そして当社は、
グローバル企業であるUiPath社様のRPAプラットフォームを採用し、 「RPAらくらくロボシリーズ」 というRPAサービスをリリースしました。 - RPAらくらくロボシリーズ
- https://
ielove-cloud. jp/ service/ rpa/
自動化による定型業務解消の効果が見込めるRPAプラットフォームですが、
費用が高く、 導入後の保守・ 運用が大変で、 オンプレミス型の自社システムなどでは連携が複雑でうまくいかない、 といった課題もよく耳にします。 しかし今回、
当社のRPAサービスは、 クラウド経由でサービスを提供するRaaSモデルのため、 安価でのご提供、 かつクライアント様側でロボットを作成 (タスク自動化処理を設定) いただく必要もありません。 当社がサービスの一環として、
RPAロボットの提供から、 システムの更新、 保守までを請け負うので、 中小の仲介・ 管理会社様を含めた幅広いクライアントの方へ当社のRPAサービスをご提供できます。 定型業務にかかる時間をさらに削減して、
多くの不動産会社様がお客様対応や営業活動など、 より生産性の高い業務に集中できると自負しています。
なぜUiPathプラットフォームを採用したのか
- 松木氏:
いえらぶCLOUDのシステムと連携してさまざまな定型業務をRPAで自動化するため、
当社はこれまで20以上のRPAプラットフォームを検証して比較してきました。 当社が、
RPAサービスをクラウド型のRaaSモデルとして展開していくためには、 高い保守性と更新性を備えるシステムが必要と考えており、 そういったシステムの開発・ 構築が可能だったのがUiPath様のRPAプラットフォームでした。 UiPath様のRPAプラットフォームは、
「ブラウザとマウスの挙動を記録して再現する」 という初期のRPAソフトウェアによく見られた、 操作対象の要素の抽出を画像認識で行う単純な方式ではなく、 HTMLのソースコードから操作対象の要素を抽出して認識する方式を取り入れています。 ですので、
HTML文書構造が一新されない限りは、 UIに多少の変更があっても、 タスクの自動化処理が安定的に稼働し続けます。 高精度な情報要素の抽出ができる正確性、
UIの変更にもエラーが起きづらい安定性において、 UiPath様のプラットフォームが最も優れていると判断して採用に至りました。 また、
ITツールがなかなか普及しない課題を抱える不動産業界ですが、 クラウド型SaaSを利用する企業も着実に増えています。SaaS型サービスは、 アップデートによってユーザーサイドのUIを変更することが多々あるため、 頻繁なUI変更にもUiPath様のプラットフォームなら対応できると考えています。 また、
採用を決定したのには事業面からの理由もあります。 UiPath様は日本市場のシェア拡大を重要視しており、
大手企業を中心にシェアを伸ばして評価を得ている一方で、 SMB (中小企業) 向けのシェアをなかなか伸ばせない、 という課題を抱えていました。 なぜなら、
日本の中小企業には、 そもそもRPAソフトウェアをうまく使いこなせる人が少なく、 予算規模でもRPAサービス自体、 導入が難しい、 といった企業が多いからです。 そんな中、
当社は中小の仲介・ 管理会社様に寄り添い、 (各社様のITリテラシーも把握しながら、) サービスを拡大してきたこともあり、 当社が培ってきたSMB向けの運営ノウハウがUiPath様のさらなる日本国内のシェア拡大に寄与できることも、 採用の決め手でした。 国内の不動産業において、
当社が初めてUiPath様と提携してRPAを活用したサービスを展開します。 当社のサービスを導入されるクライアント様は、
オプションサービスを取り入れる感覚で、 安定的に稼働するRPA自動化のメリットを得られます。 またさきほども述べましたが、
当社サービスなら、 定型業務のワークフロー全体を当社サービス上で処理できるので、 UiPath様のプラットフォームの操作面でつまずくこともほぼありません。
続々とリリース予定「RPAらくらくロボシリーズ」
- 小玉氏:
当社の、
業務支援サービスは、 約12,000社様からのご利用実績がございます。 その内の1割ほどの不動産会社様に、
今回リリースした 「RPAらくらくロボシリーズ」 を導入いただきたいと考えております。 - 松木氏:
これまで
「らくらく物出しロボ」 「らくらくコメント入力ロボ」 「らくらくぶっかくロボ」 「らくらく画像AI判定ロボ」 と続々とサービスラインナップをリリースしています。 物件情報の更新やメンテナンスを意味する
「物確」 作業をRPAで自動化できる 「らくらくぶっかくロボ」 は、 「らくらく物出しロボ」 とセット利用が可能など、 さまざまなプランもあります。 今後もスピード感をもって、
次々と新しいサービスをリリースしていく予定です。