12月9日、米国Treasure DataのCTO 太田一樹氏とトレジャーデータ( 株) のジェネラルマネージャ堀内健后氏が会見を行い、同社の新サービスと新しい料金プランが発表されました。新たなサービスは、高速なクエリエンジン「Treasure Query Accelerator」とデータをドラッグアンドドロップでグラフ化できる可視化エンジン「Treasure Viewer」の2種です。
まず会見の前半に、太田氏からトレジャーデータの提供するサービスについてのプレゼンテーションがありました。トレジャーデータのミッションは「データ解析の世界をシンプルにする」ことにあり、AWS上でビッグデータの収集、保存、解析を文字通りすぐに始めることができるクラウドサービスを提供しています。2年前の創業以来業績は伸び続けており、現在100以上の企業顧客から集められるデータは1秒あたり15万件ずつ増加、保持する総レコード数は2兆5,000億件を超えています。
トレジャーデータのサービスについて語る太田一樹CTO
顧客にはグリーやクックパッド、MobFoxなど大手の企業も名を連ねています。このうちMoFoxはヨーロッパ最大のモバイル系広告配信企業ですが、同社が受ける月60億件以上のモバイル機器からのインプレッションを解析してダッシュボードに表示するシステムを、トレジャーデータのサービスにサインアップしてからわずか14日間で完成させたとのこと。インプレッションのログをトレジャーデータのエージェントに振り向けるためにアプリケーションを2行書き換えるだけで済んだそうです。
データの収集、保存、解析部分を同社が一手に引き受けることで、顧客企業に「バックエンドを置き換えるだけですぐに始められ、自分たち業務の本質的なところにリソースを集中することができる」( 太田氏)というメリットを提供するわけです。
Treasure Query Accelerator ─アドホック型の高速クエリエンジン
そんなトレジャーデータが考えるビッグデータ活用の新たな手段として、これまでのバッチ型のクエリエンジンに加え、アドホックなデータ解析向けの高速なクエリエンジン「Treasure Query Accelerator」が発表されました。Treasure Query Acceleratorはバッチ型のクエリエンジンに比べて10~50倍高速といいます。
Treasure Query Acceleratorにはオープンソースの技術も一部使われているそうです
バッチ型のクエリエンジンは定型のレポートに向いており、クエリを投げてから実行完了まで30分~1時間もかかるような大量のデータ処理向けで、定時に確実に終わらせることが重要な処理に適しています。これに対してTreasure Query Acceleratorは、今接続しているレスポンスの状態を切り出すといった、クエリを投げて数秒で結果を得たいような処理に向いており、Webサービス企業のサポート業務で、ユーザからの要望に応じたデータ集計をその場で行うのに利用する等の例が示されました。
それぞれのクエリの使いどころについての説明
Treasure Viewer ─簡易なデータ可視化エンジン
もうひとつは、解析したデータをブラウザで簡単に表示できるサービス「Treasure Viewer」 。こちらは上記のTreasure Query Acceleratorの機能を利用して、大量のデータの中からドラッグアンドドロップでグラフなどを表示して可視化するものです。たとえばシングルサインオンと連携したりといった高度な要件を満たす場合は別途BIツールなどを用いる必要がありますが、簡単に現在の状況を確認したい場合等に役立ちます。
「マネージャや現場の営業担当者など、SQLが書けない人向けのクエリツールとして使って欲しい」( 太田氏)という意図もあるようです。
新たな料金プラン ─Premium
そしてこれらの新サービス開始にともない、「 Premium」という新価格プラン(月額7,500ドル)も発表となりました。これは言わば「お試し版」といえる「Standard」( 月額3,000ドル)以外は「要ご相談」といういわばカスタムメイドのサービスだったところに、専任のサポート要員をつけて「Tresure Query Accelerator」の機能も利用できるという大企業向けのプランが追加されたことになります。
料金プランの一覧
Premiumプランのウリといえる手厚いサポートは、もちろん顧客のビジネスアワーに合わせたサポートデスク的な役割も担っていますが、おもに「どのように使うか」といったアドバイスを行うコンサル的な窓口を想定しているようです。
「ソリューションテンプレート」の提供
さらに、これは新サービスとは少し意味合いが違いますが、同社の基本サービスの上に、顧客の属する業界に合わせたデータ収集/解析のテンプレートの提供が始まりました。「 ソリューションテンプレート」と呼ばれるこのテンプレートは、同社の顧客の業界ごとに「やっていることが非常に似ている」( 太田氏)ところに目をつけたもので、ログの構造化テンプレートや、データ収集のエージェント設定、BIツールへのレポーティングダッシュボードなどを広告業、ソーシャルサービス行などに特化したものを、顧客の希望により初期セットアップ時に提供するとのことです。
今後の展開は?
太田氏は最後に今後の展開について少しだけ触れ、Webやセンサー、デバイス等「新しいデータソース」から得られるデータを収集し解析した上で、顧客の「ここがほしい」というところに新たなサービスを投入したいと語りました。
会見後、さらに新機能を追加していくのかという質問が出ましたが、「 機能を増やすと顧客にはわかりにくくなってしまう。ユーザに直結したレイヤで勝負したい」とだけ答えました。太田氏も「少しぼかした言い方ですみません」と言ってましたが、近々登場するサービスがあるのかもしれません。期待しましょう。
同社の考える「クラウドデータ活用のステージ」 、このあたりに新たなサービスのヒントがあるのかも
日本から世界に向けてのソリューションを作りたい
続いて堀内氏が日本法人の状況について発表を行いました。2012年11月に設立され、今年の5月から本格的に展開されている日本法人は、すでに国内顧客が約40社となり、サイオステクノロジー、ウイングアークの国内2社をはじめパートナー企業との連携も進んでいるとのこと。
日本での展開について説明する堀内健后氏
そして今後の戦略として、ECサイトや情報サイト等のWeb系サービスへの展開や、日本法人の本格展開時から目標としている製造業などで利用されるM2Mの事例を増やしていきたいと語ります。「 センサーからのデータを直接処理するソリューションを日本から世界に広げることを考えている」( 堀内氏) 。M2MからInternet of Things、Internet of Everythingの時代に対応したサービスへの期待が大きいようです。