今年で13回目を迎える世界最大のJava開発者向けイベントJavaOne が、現地時間2008年5月6日に米国サン・フランシスコのMoscone Centerで開幕しました。今回のキャッチフレーズはJAVA+YOU 。多くの開発者たちの創造性を刺激する発表や展示が行われ、また開発者同士の熱い議論が交わされる4日間の始まりです。
写真1 今年で13回目を迎えるJavaOne
ダンスパフォーマンス、そして恒例のTシャツバズーカ
開幕は毎年恒例のGeneral Sessionから始まります。開幕直前ダンスチームによるパフォーマンスが行われ、会場の雰囲気はヒートアップ。
写真2 開幕前に会場を盛り上げるダンスパフォーマンス
写真3 午前8時30からのスタートでも超満員に
そして、ついにスタート……いつものようにJohn Gage氏のオープニングトークからスタートと思いきや、今回のJavaOneでは、最初にJames Gosling氏によるTシャツバズーカ のデモが行われました。James Goslingを射手に、John Gage氏とCGO(Chief Gaming Officer)のChris Melissionsの両名がサポートしながら、会場に向けてオリジナルTシャツを「発射」します。
動画1 おなじみGosling氏によるTシャツバズーカ。今回は旧式のパチンコ型ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm3226632 JavaScriptを有効にしてください。
“Don't be shy”
オープニングパフォーマンスが終了し、いよいよGeneral Sessionのスタートです。最初は、毎回恒例となったホスト役John Gageによる来場者のJavaOne参加回数調査、そしてJavaOneのルール「Don't be shy 」の説明が行われ、参加者に向けて積極的な交流、名刺交換を促します。その後、JavaFXを使ったCO2センサーの紹介をして、オープニングトークは終了しました。
写真4 CO2センサーのデモ。技術とともに環境問題についても触れた。アプリケーションはJavaFXで開発されている
JavaのRIA対応―JavaFXの最新動向
続いて登場したRich Green氏 による講演では、Javaの最新動向について述べられた後、2つのベンダからゲストを呼び、JAVA+YOUのコンセプトを実現しているデバイスについて紹介されました。
Kindleと携帯電話
最初のゲストは、Amazon.com、Vice President、KindleのIan Freed氏 。同氏は、Amazonの電子ブックリーダーKindle の紹介をしました。同製品は、インターネットを介したデータ転送機能を実装した電子ブックリーダーで、Javaアプリケーションを内蔵しています。今回の「JAVA+YOU」のコンセプトでもある、いつでもどこでもを実現できるデバイスとして紹介されました。
左:写真5 Sun Microsystems, Inc. Exective Vice President, SoftwareのRich Green氏右:写真6 Amazon Kindleを手に登場したIan Freed氏
2人目はSony Ericsson Senior Vice PresidentのRikko Sakaguchi氏 が登壇。同社が2年前に発表したコンセプトを実現し、携帯電話を使ってWebやマルチメディアがつながるようになったことを強調しました。
ユーザエクスペリエンスを満たすための技術
この2つのデモから、Rich Green氏は「Javaが開発され進歩したことにより、いつでもどこでつながることが可能になった」と述べ、さらにその結果として求められるユーザエクスペリエンス(UX)がどんどん高まっていることを強調しました。
そして、それを解決する技術がRIA (Rich Internet Application)であると説明しました。同氏はRIAについて、
Great user experience
That merges information from different services
Across all the screens of your life
So developers can choos how they monetize
の4つを特徴としてあげています。
そしていよいよ今回のGeneral Sessionの目玉である、JavaFX の最新動向のプレゼンが行われました。
JavaFX最新動向
JavaFXは、昨年のJavaOneで発表された技術で、今回の講演では3つのアプリケーション実装のデモンストレーションが行われました。
Facebook Widgets
まず最初に紹介されたのは、Facebook Widgets です。Facebookは米国を中心に流行っているWebサービスで、開発プラットフォームとして活用されています。今回紹介されたサンプルは、Facebook上でFlickr/Twitter とマッシュアップさせるアプリケーション。これはJavaおよびJavaFXで開発しており、Webブラウザ上のFacebookで稼働するだけではなく、そこからドラッグ&ドロップでデスクトップの別アプリケーションとして稼働します。さらに同じ機能を実装した携帯電話対応版も紹介されました。
これまでのWebアプリケーションの枠を越えたUIを実現しており、今後の展開が非常に楽しみです。
写真7 JavaFXで作られたFacebook Widgets。TwitterとFlickrのマッシュアップをしている
写真8 写真7と同じアプリの携帯電話版
3Dレンダリングアプリケーション
続いて紹介されたのは、3Dレンダリングを実現したアプリケーションです。JavaFXが目指すところの1つが、JavaプラットフォームをベースにリッチなUIおよびUXを実現することであり、まさにそれが実践されたデモとなりました。
動画2 JavaFXによる3Dレンダリングのデモニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm3226642 JavaScriptを有効にしてください。
写真9 JavaおよびJavaFXとRIAの相関図
JavaFX Mobile
最後のデモは、Googleが発表した携帯電話向けプラットフォーム「Google Android 」の上で稼働するJavaFX Mobile アプリケーションでした。実際のデモでは、Androidエミュレータの上でJavaFX Mobileのアプリケーションを動かすもので、今後の可能性を期待させる内容でした。
写真10 Google Android上のエミュレータで稼働するJavaFX Mobileのデモ
JavaFXのロードマップ
3つのデモが行われた後、これからのJavaFXロードマップが発表されました。今年(2008年)7月にはJavaFX Desktop SDK Early Access Previewがリリースされ、秋にJavaFX Desktop 1.0がリリースされる予定とのことです。さらに、2009年春には、JavaFX Mobile 1.0およびJavaFX TV 1.0のリリースが予定されており、いよいよ研究開発フェーズから実装フェーズに入ったと言えるでしょう。
Project Hydrazine
その後、もう1つ新しいプロジェクトが発表されました。「 Project Hydrazine 」です。これは「クラウドコンポーネント」を元にした技術で、開発環境やクライアントフレームワーク、さらには市場や収益モデルまでも統合し、サービスコンポーネントとして提供することでユーザアプリケーションを構築していくためのプロジェクトの総称です。詳しくは追ってまたご紹介します。
写真11 Project Hydrazineの紹介
“JAVA+YOU”が実現されている
JavaFX関連の発表の後、Sun CEO&PresidentのJonathan Schwartz氏 が登場しました。同氏は「insights 」というキーフレーズとともに、生活の中におけるJava、そして人のつながりにおけるJavaの存在感が高まったことを紹介。また、Sunとしてこれからもオープンな展開を積極的に進めていくと述べました。
その他、Java 6のアップデート、新しいビジネスモデルとして提案された広告モデルの話題などが紹介されました。
写真12 Rich Green氏とJonathan Schwartz氏
Java+Neil Young
最後に、スペシャルゲストとしてウッドストックを象徴するアーティストの1人、Neil Young氏 が登場しました。今回参加した背景には、Bru-Ray Disc を制御するシステムとしてJavaが使われており、Neil Young氏も自身のBru-Ray Discをリリースしているという関係があってのことだそうです。このつながりを、今回のコンセプトになぞらえて「Java+Neil Young」として紹介されました。
写真13 Neil Young登場!
「見た目より中身」のGeneral Session
今回最初のGeneral Sessionは、見た目の派手さではなく、より実践的な内容が盛り込まれたものとなりました。また、Web 2.0以降の1つの概念である、参加や共有を含めた「つながり」というものを強く意識し、そのハブ的存在にJavaが存在していることを十分にアピールした内容になっていたと感じます。
JavaOne Pavilionの展示や他のセッションについては、明日以降お届けします。