2009 JavaOne Conference2日目は、基調講演の内容から、最新のモバイルJava事情、その先にあるSunのモバイル戦略、今後の展望についてレポートします。
Javaのライフスタイル―モバイル、TVを越えて
2日目の夕方、キーノートと同じくMoscone Center South Hallにて「Your Java Lifestyle: Mobile, TV and Beyond」と題したセッションが行われました。
携帯端末上のJavaの現在、未来
JavaFX Mobile 1.2、ソーシャルネットワークへの広がり
今回のキーノートのメインスピーカーは、Sun Client Systems Group VPを務めるEric Klein氏です。
まず、昨日発表されたJavaFXの最新版JavaFX 1.2に関連付けて、JavaFX Mobile 1.2の紹介をしました。JavaFX Mobile 1.2の特徴は次のとおりです。
- パフォーマンスの改善
- UIライブラリの拡充
- JavaFXアプリケーションのローカライズサポート
- ISVからのフィードバックの反映
具体的な機能追加というよりは、より実用度が高まったという印象です。
この後、実際にJavaFX Mobileを搭載した端末を使って、TwitterやFacebookなどのSNSとReallyMeというソフトウェアを同期させて通話を行うデモが行われました。
PayPalとの連携
続いて、オンラインペイメントシステムであるPayPalからVPや担当者が登壇し、モバイルJavaを利用した決済のデモを行い、今後Java版モバイル端末上でのPayPalの利便性がさらに向上することが説明されました。
なお、2009年秋にPayPalをプラットフォームとした開発者向けイベントが予定されているとのことです。
PayPal Developer Event(以下URLに詳細がアップデートされます)
https://www.x.com/
JavaFXオーサリングツールでJavaFX Mobileアプリを開発
この後、昨日のレポートでも紹介したJavaFXオーサリングツールのデモンストレーションが行われました。今日はPCデスクトップ上での開発の様子の他、JavaFX Mobile対応アプリの開発について紹介され実際に端末で動かすところまで実行されました。
携帯電話市場の隆盛
ここで、携帯電話の“市場”にフォーカスした内容へ話が展開しました。
去年までのJavaME
まず、去年のJavaMEというスライドが紹介され、標準化、インプリメンテーション、開発ツールという3つのカテゴリで、それぞれのトピック、進展が紹介されました。
このスライドからもわかるように、JavaMEは技術的に大幅に進化したことがうかがえます。
キャリアとメーカとのパートナーシップ
この技術的進化を受け、この先の重要なポイントとして(携帯端末の)キャリアとメーカとのパートナーシップの重要性を訴えました。
今回のJavaOneでは、
- Sony Ericsson
- Orange Partner
- SAMSUNG
- Sprint
の4社がMobile Java Partnersとして参加し、JavaOne Pavilionにて最新端末やアプリケーション展示をしています。この基調講演には、Orange PartnerのVP、Steve Glagow氏とSony EricssonのCreation&Development Group, Head of Developer and Partner Engagement、Christoper David氏の両名が登壇しました。
このメンバーから読み取れることとして、端末メーカやソフトベンダ間の関係性が強化されていくことが挙げられるでしょう。両名からも、これからの携帯電話を取り巻くコミュニティの拡張・強化を約束するコメントが述べられました。
また今日は登壇しませんでしたが、キャリア側の立場から、VodafoneのDirector、Guido Arnone氏から「JATAF(Java Application Terminal Alignment Framework)」が、Javaプラットフォームにとって本当の目的に近づいていることを信じています。コミュニティの貢献こそが、利益と費用対効果を高めるからです」と、各社の協力体制に賛同するコメントが届きました。
WHAT IS MOBILITY?―そもそも携帯性って
ここまではJavaFX、JavaME、それぞれが携帯電話を中心とした話題で展開されてきました。ここでKlein氏から「WHAT IS MOBILITY?」という意味深な質問がなされます。そして、Amazon Kindle? Netbook? など、携帯電話にとどまらない、さまざまな携帯デバイスに関する言及が行われました。
Smartbookという概念
「たしかに、今、携帯電話(モバイルフォン)の世界では大きな革新が起きています。しかし、携帯デバイスという点ではどうでしょう?」(Klein氏)――このコメントの後、Qualcomm Advanced Products & CDMA TechnologyのVP、Rob Chandhok氏が登場しました。
Qualcommと言えば、ワイヤレスやモバイル関連技術を利用した製品を提供するITベンダです。今回のJavaOne Pavilionでは、同社が提唱する「Smartbook」を全面にした展示を行っており、ここで改めてその紹介を行いました。
Chandhok氏は「Smartbookこそが、最初の“モバイルコンピューティングデバイス”だ」と断言し、スマートフォンの体験と、大きな画面、薄いサイズ、高い携帯性を紹介しました。
Smartbookの紹介ページ
http://www.hellosmartbook.com/
マネタイズからイノベーションが生まれる
基調講演も終盤にさしかかり、最後は、今回初登場した「JavaFX TV」、「Java Store」に関して、モバイルの観点から見た可能性、重要性を紹介しました。
TVというメディアの強み
まず、ある資料からアメリカ人の平均的な1日のTV視聴時間のデータとして4.5時間という数字が取り上げられ、「この数字からもわかるようにTVというメディアはとても大きなボリュームを持っており、大切なメディアの1つ」と、ネット全盛の現代において、TVの重要性を数値的に紹介しました。その上で、JavaFXは、JavaFX Desktop(PC)、JavaFX Mobile、さらに発表したばかりのJavaFX TVと、横断的にメディアを扱える強みがあるとし、実際に「Cloud DVR」というJavaFX対応アプリケーションを紹介しました。
以下3枚の写真のように、1つのアプリケーションがそれぞれの環境で動作している、クロスプラットフォームを実演しました。
とくに、JavaFX TVについては「現在、市場で見たとき、DVD/HDDプレーヤの売上は昨年比77%伸びており、コンテンツの売上は88%伸びています。今、ここが最も大事な市場であり、JavaFX TVがフォーカスしているところです」という、技術以外のビジネス的な視点で紹介したのが印象的でした。
Java StoreとWarehouse
ビジネス的な観点の流れで、Java Storeの紹介が行われました。Java Storeとは、各種Java/JavaFXアプリケーションの配信プラットフォームでいわば、店舗(売り場)を意味します。そのソフトウェアを開発する工場/研究所的な位置付けが、ここで紹介されたJava Warehouseです。
Java Store
http://store.java.com/
Java Warehouse
http://java.sun.com/warehouse/
Java Warehouseについては「Submit once, Sell Everywhere」と、Javaの「Write once, Run anywhere」をもじった文章で紹介し、会場の笑いを誘っていました。
さらに、Klein氏は「技術や開発も大事ですが、開発したアプリケーションでマネタイズすることはさらに重要です」と述べました。つまり、開発者は技術でアプリケーションを作るだけではなく、アプリケーションでお金を作ることができる、ということを述べたかったのだと思います。
これを裏付けるかのように「REACH MONETIZATION INNOVATION」というスライドが最後に紹介され、公演は幕を閉じました。