今年のAWS re:Invventには全世界から約6万5000人のAWSユーザが参加していますが、日本からの参加者も1,700名を超えており、加えて日本企業によるブース出展やセッション登壇も非常に多く見かけました。「日本のデジタルトランスフォーメーションは世界に較べて遅れている」などとよく言われますが、少なくともAWS re:Inventの会場にいる限り、そうしたネガティブな雰囲気は感じられず、どの国の参加者にも引けを取らない、トランスフォーメーションへの強い熱量を実感します。ちなみに今年の「AWS DeepRacer League」(強化学習で自走する1/18スケールのDeepRacerによるレーシングリーグ)では日本人2名がワンツーフィニッシュを決めており、この分野での圧倒的な強さを世界に見せつけたこともうれしいニュースでした。
今回はそんなアツい熱量でもってre:Inventに参加した日本のIoTスタートアップのひとつ、アプトポッドの代表取締役 坂元淳一氏に、同社の展示ブースにてお話を伺いました。
SageMaker、RoboMakerが“ミドルウェア的部分”をサポート
アプトポッドは自動車やロボットなどの産業分野に特化したIoTプラットフォームをハードとソフトの両方に渡って提供する「IoTのフルスタック企業」(坂元氏)です。おもな事業としてAI開発およびマシンラーニング基盤の提供、コネクテッドカーのデータ解析、ロボットの遠隔制御、産業機器のリアルタイム監視、IoTによるリモートデータの収集/解析などを展開しており、とくに大量のIoTデータを高速かつ安定的にストリーミングする双方向データ伝送プラットフォーム「intdash」は、100ミリ~1ミリ秒という高頻度で発生するストリーミングデータを時系列で確実にストアできるプラットフォームとして、自動車やロボット、産業機械といった業界から高い評価を得ています。
「高頻度で発生するIoTデータを時系列にストアできるプラットフォームはそう多くありません。IoTデータはネットワークが切断されたり、デバイスのバッテリーが切れたりして、高い頻度でデータの欠損が発生するからです。intdashはたとえ一時的にデータを取りこぼしても、独自開発のストリーム制御プロトコルであるiSCPによって完全回収ができるので、時系列なデータストアが可能になっています」(坂元氏)
現在、アプトポッドはintdashを「Amazon SageMaker」や「AWS RoboMaker」といったAWSのマネージドサービスと組み合わせ、リアルタイムデータをもとにした機械学習環境やロボット開発データパイプラインを構築し、自社ソリューションとして展開しています。同社はなぜAWSのマネージドサービスを選択したのか、坂元氏は「AWSのサービスは、我々が本来やるべき作業に集中させてくれる」と語っています。
「極端なことをいえばSageMakerのようなしくみ―さまざまなフレームワークを使ったモデル構築やトレーニング、エンドポイントへのデプロイなどを回すしくみを自社で作ることは可能です。しかしその構築作業にかかるコストや時間、さらにそれをメンテナンスする手間を考えれば、SageMakerを使ったほうがはるかにラクです。アプトポッドの強みは、リアルタイムデータを低遅延で欠損なく拾えること、IoTデータの伝送/管理/可視化を統合してアプリケーションとして提供できることであって、SageMakerやRoboMakerといった、いわゆるプラットフォームにおける"ミドルウェア"的な部分を作り込むことではありません。AWSのマネージドサービスはスタートアップとしてやるべきことに集中させてくれる補完的な存在」(坂元氏)
re:Inventへの出展は今回で2回目となるアプトポッドですが、グローバル展開にも積極的に取り組んでおり、全世界に拠点やパートナーをもつAWSのサポートは同社にとっても「我々のようなスタートアップにとって非常に力強い存在」(坂元氏)とのこと。AWSはサービス開始以来、伴走者として数多くのスタートアップを支えてきましたが、アプトポッドもまた、"IoTのフルスタック企業"としてAWSのサポートを得ながら、グローバルへの歩みを着実に進めているようです。