「Chrome+HTML5 Conference~第20回記念HTML5とか勉強会スペシャル~」レポート

プログラマートラックレポート(前編)

Chrome+HTML5 Conferenceのプログラムのうち、本稿ではプログラマーセッションの最初の3講演についてレポートします。

HTML5により、APIの機能が格段に向上し、Webは本格的なアプリケーション開発基盤へと進化します。その結果、Webの秘めるポテンシャルが引き出され、これまでの常識を覆す、様々なWebサービスが登場すると期待されます。

新たなエコシステムを形成していく、これからのWeb。それを実現するためには、以下の事項が重要となります。

  • 様々な課金により、健全な経済活動が行われていくこと
  • 開発ツールが整備され、効率的なサービス開発が可能なこと
  • リアルタイム性を活用した、新たなサービスモデルの登場

いずれも、これまでは不足していた項目で、Webが次の局面を迎えるにあたり重要なものばかりです。本稿では、これら3項目に関する講演について、レポートします。

あんどうやすしさん「Chrome Web Store入門」

プログラマーセッションのトップバッターは、Chrome API Expertのあんどうやすしさん。Chrome Web Storeについて講演いただきました。WebアプリケーションとChrome Web Storeの姿について、あんどうさんの様々な「妄想(!?⁠⁠」を語っていただきました。なお、講演資料はこちらで公開されています。

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Chrome Web Storeは、Googleが Chrome ブラウザで展開している、マーケットプレイス。様々な Web アプリや Chrome 拡張を入手できます。主な特徴としては、以下の2点が挙げられます。

  1. Chrome限定のため、HTML5の機能をふんだんに使った、リッチなWebアプリを提供できる
  2. 様々な課金メニューが提供されており、Webアプリの販売が行える

そして、これは「Googleの考えている未来のWebを現している」という妄想が、最初に語られました。

まず、Webアプリについてです。⁠iPadを電子ブックリーダーとしてのみ利用し、発展していくと考えることを自然だと考える人は、まずいないでしょう。それは、iPadが様々なアプリケーションを利用できる環境であると認識されているため。一方、Ajax などにより Webアプリという言葉がもてはやされている中、作りはモザイクの時代からさほど変わることなく、類似のデザインパターンで提供されているWebページがほとんどです。これは、Webがドキュメントビューアーから始まり、人々は当初のままの認識でWebと対峙しているからでしょう」とあんどうさんは言及し、⁠iPadのような『高機能のWebが最初の出発点』だとしたら、Webアプリ開発はどのようになるか?という視点で、Webを見ていくことが大切。それにより、明確で主体的な目的をもち、オリジナリティーにあふれるWebアプリが登場するでしょう」という妄想を述べました。

次にマーケットプレイスです。マーケットプレイスであるためには、まず提供されるアプリが何であるかを簡単にユーザーに伝える仕組みが必要です。⁠その仕組を提供するのがマニフェストファイルです」とのこと。Webアプリにメタ情報が付与されることで、適切なWebアプリを効率的に見つけられるようになります。また、課金は重要な機能です。技術的に素晴らしくても、経済活動が回らないサービスは、消え去る運命にあるのが世の中の定め。Chrome Web Storeでは、様々な課金メニューが提供され、Webの経済活動を生み出すであろうとの妄想が語られました。

北村英志さん「Debugging on Chrome Developer Tools!」

今回のカンファレンスのマネージャーを務めた、Googleの北村英志さんより、Chromeのデバッギングツールである、Chrome Developer Toolsについて講演いただきました。

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Chrome Developer Toolsは、Chromeに標準で備わっているデバッギングツールで、これを用いることでWeb開発を効率的に行うことができます。講演では、北村さんが開発されたメトロノームのWebアプリを使い、Developer Toolsの様々な機能を説明しました。

「Webアプリを構成するリソースを簡単に確認できる」⁠CSSのプロパティをレンダリング結果を確認しながら、直接変更できる」⁠ブレークポイントを用いたデバッギングができる」⁠CSSと同様に、Javascriptについても、直接編集や保存を行うことが可能となっており、IDEとしての側面も持つ」といった特徴をデモを交えながら示しました。

Developer ToolsはHTML5で作られているWebアプリで、それ自身をさらにDeveloper Toolsでデバッグ可能というユニークな一面も紹介しました。また、開発陣がユーザーから要望される機能を積極的に実装しており、昨年のGoogle Developer Day2010の講演で会場からあがった要望も反映されているとのことでした。

小松健作さん「WebSocketでリアルタイム通信」

午後最初のセッションは筆者、小松健作より、WebSocketについて講演させていただきました。なお、講演資料はこちらで公開しております。

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WebSocketは、一般的に難解な印象を聴講者に与える傾向があります。理由の一つは、Web開発者には馴染みの薄いプロトコル(通信方式)に関する解説を中心に進められる講演が多いこと。このため、今回はプロトコルについての解説は排除しました。 ⁠WebSocketが何者か?を知る」ことを目的とし、⁠何ができる?」⁠何が違う?」⁠どうやって使う?」という3点にターゲットをしぼり解説しました。

WebSocketはチャットのようなリアルタイムサービスを実現するもの。APIも大変シンプルで、利用するのは非常に簡単です。しかしながら、チャットは WebSocketを使わずとも、現行のWebでもサービス提供されています。このため、これらの違いについて話しました。

現行のWeb技術(HTTP)で、リアルタイムサービスを行うテクニックは、一般的に"Comet"と呼ばれています。このCometは、テレビ番組でコメントを視聴者が送るのに、メールなどの放送波とは別の手段を用いるように、下り(受信)と上り(送信)とで、それぞれ異なるHTTPセッションを用います。ここで、コメントを送信するユーザーが増えると、テレビ番組では多数のオペレータが必要となり、どんどん大変になるように、Cometでも頻繁なデータの送信が行われると、サーバーなどの負荷が上昇してしまいます。一方WebSocketは電話のモデルに近く、頻繁にデータが送信されても、サーバーの負荷がそれほど上がらないのがそのメリットです。

また、チャットのようなコミュニケーションサービスだけでなく、スマートフォンからPCを操作するリモコン利用のユースケースや、Webの高速化にも利用できることをデモも交えつつ、解説しました。

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