エンジニアサポート CROSS 2015 レポート

「Webアプリケーションから機械学習まで ~ PythonとPythonコミュニティの2015年大展望 」レポート

去る1月29日(木)に通算4回目となる「エンジニアサポートCROSS 2015」が開催されました。本レポートでは、Webアプリケーションから機械学習まで~PythonとPythonコミュニティの2015年大展望の当日の様子をお届けします。

はじめに

このセッションでは⁠株⁠ALBERT池内孝啓氏がオーナーを努め、各Pythonコミュニティのコアメンバーである次の方々が登壇しました。

池内孝啓氏
池内孝啓氏

セッションでは、各テーマに応じてコミュニティの方がプレゼンを行い、そこからディスカッションを進めていく方式でした。それぞれのコミュニティの成り立ちから今後の展開、また各テーマに関する技術について熱いトークが繰り広げられました。

当日のセッションの動画やTwitterのまとめなどは、次のURLから閲覧可能です。是非併せてご覧ください。

Python.jp

まず最初のテーマである Python.jpについて石本氏が発表を行いました。Pyhton.jpは、2001年9月に開設され、またメーリングリストはその3年前である1998年に開設したと紹介がありました。

石本敦夫氏
石本敦夫氏

次にPython.jpのコンテンツに関しての説明になり、もっともアクセス数が多い日本語版Pythonドキュメントまたニュースページイベントページの紹介を行いました。

日本語版PythonドキュメントはPythonドキュメント日本語翻訳プロジェクトで翻訳を行っており、いつでも翻訳者を募集しているとのことです。またPython関連のイベントや、Pythonを使用した製品のリリースなどを紹介したい場合には、サイト上の登録フォームへから応募をしてくださいと案内がありました。またPython.jpのコンテンツは GitHubにソースを上げており、修正したい部分や、イベント、ニュース情報の追加などはプルリクエストでも受け付けていると案内がありました。

次にサイトの利用者数について、実際にグラフを見せながら説明を行いました。サイトの利用者数は3年前と比べると160%増加しており、また年20%位ずつ利用者が増えているそうです。最近ではデータ処理や統計関連の分野で利用が増えている印象だと述べました。

今後のPython.jpの予定としては、企業からの求人情報を掲載したり、メーリングリストの改善を行っていきたいと述べました。改善のアイデアを募集しているそうで、ぜひ良い案があればご連絡くださいと述べました。

ディスカッション

ディスカッションでは、Python.jpの具体的なコミュニティ活動の内容や、新しいコミュニティとの関わり方などについて議論がありました。Python.jpのようなコミュニテイサイトの運営は、なかなか難しく、ここ10年くらいは主に石本氏が1人で運営しているそうです。また以前はメーリングリストを中心として他のコミュニティと繋がっていたが、これからは新しいツールを活用していきたいと述べました。他のメンバーからはPython.jpがハブになると良いのではという提案もありました。後半では石本氏がPythonを使用するきっかけや、なぜPythonを使用しているかという話題になり大変盛り上がりました。

広がるPythonのコミュニティ

次にPythonのコミュニティを中心としたディスカッションに移りました。

一般社団法人PyCon JP

まず寺田氏がPyCon JPについて発表を行いました。PyCon(Python Conference)は世界30カ国以上で開催されており、PyCon JPはそのうちの1つであると述べました。日本では2011年から毎年開催しており、もともとPyCon APAC(アジア太平洋地域でのPyCon)が2010年にシンガポールで開催され、それに参加したメンバーと一緒に立ち上げを行ったと述べました。またアジア太平洋地域とのPyConともリレーションリップがあり、2013年はPyCon APAC 2013 in Japanを日本で開催したと紹介しました。

寺田学氏
寺田学氏

次に昨年開催されたPyCon JP 2014を振り返り、次のような特徴を紹介しました。

  • 海外からのキーノート(同時通訳あり)
  • 座長を中心にチーム制で運営
  • 来場者数545人
  • 有料1万円(ランチ、パーティを含む)

PyCon JPは英語のセッションもあり、国際色豊かであると述べました。またランチ、パーティなどの企画を通して、発表を聞くだけではなく、参加者同士が交流して楽しめるイベントを目指して運営を行っていると述べました。PyCon JPは2015年も開催を予定しており、現在スタッフも募集しているとのことです。

寺田氏は今後の展開として、mini PyCon JPと呼ばれるような、東京以外での地域PyConを開催していきたいとお話しました。一般社団法人としても地域のPythonコミュニティに支援を行い、コミュニティ同士コラボレーションしていきたいので、ぜひ興味のある方はお問い合わせくださいと説明しました。

PyLadies Tokyo

次に真嘉比氏がPyLadies Tokyoについて発表を行いました。PyLadies とは女性Pythonistaのための国際的なコミュニティであり、全世界の30箇所以上の地域でコミュニティが活動していると述べました。またpip install pyladiesとして、pyladiesモジュールのインストールを行うと、pyladiesコマンドが使用可能になると紹介しました。実際にpyladies handbookコマンドを打つと、pyladiesに関するハンドブックが閲覧できたりするそうです。

真嘉比愛氏
真嘉比愛氏

PyLadies Tokyoは、昨年の7月くらいから準備をはじめ、昨年のPyCon JP 2014で正式にお披露目し、メンバーの募集を開始したと述べました。月に1回程度イベントを開催しており、今年の3月末には女子学生(高校生、大学生)にむけてイベントを行う予定であると説明しました。また今年の5月に台湾で開催されるPyCon APAC 2015のなかで、アジアのPyLadiesコミュニティ(台湾、韓国、シンガポール)と連携して、 何かできないか模索していると説明しました。

ディスカッション

Pythonのコミュニティに関するディスカッションでは、PyCon JPやPyladies Tokyoの設立に至った経緯などについて議論がありました。また他のコミュニティの運営者からは、PyCon JPのようなコミュニティのように、コミュニティを継続していくにはどうしたら良いかという質問がありました。寺田氏はコミュニティを続けることに関しては、続けるための努力をしていると説明しました。またPyCon JPはカンファレンスを良いものにしようとスタッフが頑張りすぎているので、その辺のバランスが難しいと述べました。さらにコミュニティの中心人物は一人ではなく、複数人設けた方がバランスが取れていて、そのほうが良いのではと説明しました。石本氏はやりたい人がとにかく、意地でも続けることが大事だと述べました。

データ分析とPython

次にデータ分析とPythonのコミュニティについてのディスカッションになりました。

PyData Tokyo

このトピックでは、はじめにシバタ氏が、PyData Tokyoについて発表を行いました。PyDataはもともとアメリカで始まったコミュニティであり、西海岸から東海岸へ、そしてアジアではシンガポールなどでコミュニティが設立されたと述べました。PyData TokyoはPyCon JPで出会った3名(シバタ氏、池内氏、田中氏)が、Pythonのデータ系のコミュニティを立ち上げたいと意気投合して、発足したと述べました。

シバタアキラ氏
シバタアキラ氏

次にPythonについての話題となり、Pythonは学会で研究している方や、研究者の方が多く関わっていて、さまざまな分野のライブラリがあると説明しました。またWebフレームワークもたくさん種類があり、それぞれ特徴があると述べました。エンジニア、科学者、ビジネスの人間が、Pythonを共通言語として使用することで、幅広く活躍できるようになるのではとお話しました。また具体的な事例として、CSVの分析、アドサーバー、深層学習(ディープラーニング)の例を挙げて説明を行いました。

次にPyData Tokyoの具体的な運営の話に移り、PyData Tokyoでは勉強などに参加できる人数は、あえて少なくしていると述べました。理由としては、対面でのコミュニケーションをとても重視しており、質問やディスカッションの時間を大切にしたいからだと説明しました。実際に勉強会ではスピーカーが話している最中でもどんどん質問が飛ぶそうです。最後に今年の3月7日に行う、初心者向けのチュートリアルの紹介を行いました。

Python野球クラスタ(仮)

次に中川氏による発表となりました。Python野球クラスタ(仮)はPythonで野球をHackするコミュニティであると紹介しました。コンセプトとしては、好きな言語で野球のデータをHackしてハッピーになりましょうという事を掲げているそうです。

中川伸一氏
中川伸一氏

昨年までの活動としては、勉強会やカンファレンスでHackした結果を発表したり、作成したアプリケーションを公開してきたと述べました。アプリケーションを公開している理由として、趣味でデータ解析などを行っているユーザは潜在的に多いと思っており、そういう人たちの背中を後押しできれば良いと述べました。

2015年の活動としては、まずはコミュニティを立ち上げてメンバーを募集し、ミートアップやPython mini Hack-a-thonのようなイベントを開催していきたいと述べました。

ディスカッション

ディスカッションでは、PyData Tokyoの実際の雰囲気や、参加する人々がさまざまなバックグラウンドを持っていることなどが、話題に挙がりました。またPythonをどのくらい業務で使用しているかという質問も飛び出しました。 実際にメイン言語として、Pythonを使用している会社もあれば、業務では他の言語を使用している会社もあるとのことです。

次にスポーツとデータのお話になり、中川氏は野球は一球投げるたびに、投手、打者、守りに必ず記録がつくスポーツなので、とてもやりやすいと述べました。スポーツ分野でのデータの活用は進んでおり、野球、サッカー、テニス、またその他のスポーツに関するオープンデータの活用などについて議論がありました。池内氏は海外ではデータの活用が進んでおり、日本でもまだまだビジネスチャンスがあり、面白くなるのではと述べました。

WebアプリとPython

次にWebアプリとPythonについてのディスカッションになりました。

djanog-ja

はじめに清原氏がdjango-jaについて発表を行いました。djanog-jaはDjangoの日本コミュニティであり、djangoproject.jpなどで情報を発信していると紹介しました。またイベントの開催も行っており、主にハッカソン形式で開催していると述べました。初心者の方もよく参加しているようで、お互いに情報交換をなどを行っていると述べました。

清原弘貴氏
清原弘貴氏

2015年の活動としては、イベントを定期開催して行きたいとの説明を行いました。運営に関しては定期的に開催しつつも、ゆるさを失わないように進めていきたいと述べました。

次に2015年のDjangoの話題になりDjango 1.8の紹介をしました。Django 1.8の大きな特徴として、テンプレートエンジンが差し替え可能になると紹介を行いました。また最近お気に入りのライブラリとして、Django REST frameworkを紹介し、とても使いやすく便利であると説明しました。

ディスカッション

ディスカッションではFlask、Django、Pyramid、Ploneなどのフレームワークに関する話題となりました。フレームワークの選定について清原氏は、業務などできっちり作りたいときにはフルスタックであるDjangoがお勧めだと述べました。一方でPyramidのようなフレームワークのメリットとして、Pythonで標準的に使われているライブラリを使用できること、学習コストが低いことなどが話題に挙がりました。またフレームワークやツールを選ぶ際に、コミュニティの活動がしっかりしている物を選ぶのが良いのではという意見も挙がりました。

いろいろな分野でのPython

最後に寺田氏よりさまざまな分野での、Pythonコミュニティについて紹介が挙がりました。

まずは視覚障害者の方へのツール(NVDA)のコミュニティであるNVDA日本語チームを紹介しました。NVDA日本語チームでは定期的にミートアップなどのイベントを開催していると述べました。また2015年はメンバーを増やすためにイベント活動を強化していきたいと述べました。今年は4回ほどのミートアップを予定しているとのことです。

次にPlone User's Group Japanの紹介となりました。Plone User's Group JapanはPython製の高機能なCMSツールであるPloneの日本コミュニティです。2015年は国際的なシンポジウムである、Plone Symposium Tokyo 2015を6月13日~14日に開催予定であると紹介しました。

最後にMOOCサービスの1つであるedXがオープンソースで開発を行っているOpenedXについて紹介しました。MOOCとはオンラインを利用して、無料で受講できる大規模な講義のことです。MOOCの事例として東京大学での例を紹介しました。

まとめ

各Pythonコミュニティのコアメンバーが集まり、それぞれのコミュニティの設立から、今後の活動予定、またPython、データ、Webに関する話題で、とても盛り上がったセッションとなりました。

どのコミュニティもとても魅力的であり、コミュニティに興味を持たれた方は参加してみると良いのではないでしょうか。2015年もますますPythonが盛り上がる年となりそうです。

登壇者の皆さま
登壇者の皆さま

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