de:code 2019――Microsoftが目指すテクノロージと未来の社会

前編:de:code 2019キーノートで見えてきた人と社会とテクノロジ~AI、クラウド、MR

日本マイクロソフトとして目指す、日本の社会変革への貢献

1日目のキーノートは、日本マイクロソフト株式会社代表取締役社長 平野拓也氏のトークから幕を開けた。

日本マイクロソフト株式会社代表取締役社長 平野拓也氏
日本マイクロソフト株式会社代表取締役社長 平野拓也氏

平野氏は「5月初旬に、米国で開催されたMicrosoft Build 2019の日本版とも言える、de:code 2019では、さまざまな情報をお届けしていきます」と、今回のde:code 2019の位置付けを示した上で、今回伝えたい情報として、たくさんの新技術、そして、それらの新技術が生み出すさまざまな未来を紹介しはじめた。

たとえば、今、多くのメディアが取り上げ、全世界の注目を集めるAI(Artificial Intelligence)を例に上げ、一部の人から、多くの人たちに開かれてきているとし、⁠その要素となる)デジタルテクノロジは、エンターテイメントから、小売、農業、金融など、さまざまな産業で欠かせなくなっています。産業だけではなく、皆さんの家庭に浸透しているのです。すなわちそれは、今回ご参加いただいたエンジニアの皆さまにとって非常に大きなOpportunity(機会)があるとも言い換えられます」と、今のデジタル社会は、エンジニアにとって主役となりうる、必要とされる活躍の場になっていることを強調した。

⁠Microsoftは、デジタル社会において、地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるよう取り組んでいき、日本マイクロソフトとしては、インテリジェントテクノロジを通じて、日本の社会変革に貢献していきたい」と、同社のミッションを力強く宣言した。

Microsoftがこれから注力していく4つの柱。コアとなるクラウドテクノロジとしてMicrosoft Azureが存在し、その上に、⁠Microsoft Dynamics 365&Power Platform」⁠Microsoft 365」⁠Microsoft Gaming」が用意される
Microsoftがこれから注力していく4つの柱。コアとなるクラウドテクノロジとしてMicrosoft Azureが存在し、その上に、「Microsoft Dynamics 365&Power Platform」「Microsoft 365」「Microsoft Gaming」が用意される

働き方の進化と生産性の再定義――Microsoft 365

平野氏のプレゼンテーションに続いて、米Microsoftからのゲスト3名によるトークが続いた。

トップバッタはー、Corporate Vice PresidentのJared Spataro氏。Microsoft 365を題材に、技術革新に伴う、働き方の進化と生産性の再定義をテーマとしたプレゼンテーションを行った。

Corporate Vice PresidentのJared Spataro氏
Corporate Vice PresidentのJared Spataro氏

Jared氏は、⁠1970~80年台はアプリ中心の世界、1990~2000年台はデバイス中心の世界、そして、今は人を中心都市、その周辺にデバイスやアプリがある、人中心の世界になった」とし、すべてのテクノロジは人にフォーカスを当てるようになってきており、Microsoft 365が提供するエクスペリエンス(体験)は、まさに人を中心として開発が進んでいる、と、Microsoft 365のコンセプトを紹介した。

具体的なデモンストレーションとして、Microsoft 365でのカレンダーとメールアプリの連携を行い、メールでのやり取りが途中の操作を介在せずにそのままカレンダーに登録される機能を紹介したり、また、文章作成におけるWordのデモの中では、従来の文字校正・校閲の機能に加えて、AIを活用した文章の改善の様子を紹介した。

このように、部分的に切り取ったサポートではなく、ユーザ(人)が本当にしたいことをサポートしていくこと、それが人中心のエクスペリエンスの提供であるというのを説明し、今の時代のAIは、それを高い精度で実現できていることを証明する発表だった。

具体的な事例の紹介に続いて、MicrosoftがMicrosoft 365を通じて、エンジニアに提供できる機会の紹介が行われた。

具体的なアプリケーションとして、Windows/Office/Egde/Teamsがあり、横断的なデータとして、Microsoft Graphが存在する。そのデータへのアクセスにはREST APIやWebhookなどの標準化テクノロジがあり、エンジニアはこれらを活用できる、というもの。

また具体的なテクノロジとして、Windows向けのReact Native for Windowsや新しいWindowsターミナル、プラットフォームとして、Microsoft Windows Subsystem for Linux 2のリリースなど、エンジニアのためのさまざまながテクノロジがアップデートされていることが発表された。

このようにMicrosoft 365では、人中心の体験改善を通じ、働き方そのものを進化させることで、生産性の再定義、その先にある生産性の向上を目指すこと、また、それらを支える各種テクノロジを開発し提供していることが伝わってくる内容だった。

プレゼンテーションの合間に、エンターテインメント要素も盛り込まれた。日本マイクロソフトが開発を続ける、AIりんなの最新動向だ。今回、平野氏の動きを事前に動画で収録したものを、AI生成による振り付けスケルトンと生成動画で組み合わせた、ダンス動画が公開された
プレゼンテーションの合間に、エンターテインメント要素も盛り込まれた。日本マイクロソフトが開発を続ける、AIりんなの最新動向だ。今回、平野氏の動きを事前に動画で収録したものを、AI生成による振り付けスケルトンと生成動画で組み合わせた、ダンス動画が公開された

Intelliget CloudとIntelligent Egde、すべての基盤となるMicrosoft Azure

続いて、Azure Corporate Vice PresidentのJulia White氏が登壇し、Microsoftが提供する各種サービスやアプリケーションの基盤となる、Microsoft Azureに関するプレゼンテーションを行った。

Azure Corporate Vice PresidentのJulia White氏
Azure Corporate Vice PresidentのJulia White氏

Microsoft Azureは、冒頭の平野氏の発表内でも取り上げられたように、デジタルトランスフォーメーションを実現するIntelliget CloudとIntelligent Egdeの基盤となるコアテクノロジ。

Julia氏は、⁠Microsoft Azureは、ツール、言語、アプリ、すべてを支えるクラウドテクノロジです」と、Microsoft Azureの価値を改めて紹介した。

たとえば、統合開発環境であるVisual Studioファミリでは、Visual Studioに加えて、VS CodeやVS Onlineなどの製品群が用意されていること、また、半年前に買収が完了したGitHubとの連携強化なども紹介された。

GitHubとの連携強化と新機能として、今回Azure DevOpsが発表され、デモンストレーションが行われた。

デモンストレーションを担当したのは、日本マイクロソフト株式会社クラウド & ソリューション事業本部グローバル ブラックベルト セールス部テクノロジー ソリューション プロフェッショナル 井上章氏。

Azure DevOpsとGitHubの連携により、マスターブランチへマージする前にテスト・ビルドが行えるなど、より実践的かつ効率的な共同開発が実現できる
Azure DevOpsとGitHubの連携により、マスターブランチへマージする前にテスト・ビルドが行えるなど、より実践的かつ効率的な共同開発が実現できる

Azure DevOpsは、Azure BoardsやAzure Pipelinesなど、一連の開発サービスを活用して、効率的な共同作業を実現するMicrosoft Azureの機能。今回のデモンストレーションでは、実際に井上氏が担当しているタスクについて、GitHubアカウントと連携させて、マスターブランチへマージする様子が発表された。

サーバインフラ関連の発表では、この他、GitHubとAzure Active Directoryの同期サポートや、Azureサーバレスコンピューティングを実現する新拡張App Service on Linux、さらに、エッジサイドの話題で、Azure SphereやAzure Kinectなど、Azureエッジデバイスによるデモやなどが紹介され、サーバインフラおよびIoT環境としてのAzureの強みが全面にアピールされた発表となった。

Julia氏のプレゼンテーションの最後では、Microsoftが長年研究と開発を進めているAIに関しては、Azure Cognitive Servicesの新機能や、Conversation Transcriptionによる対面会話形のリアルタイム文字起こしのデモなどが取り上げられ、また一歩身近になったAIを体感できる内容で締めくくられた。

MR:Mixed Realityで変わるアイデンティティと時間の概念

3番目に登場したのは、Microsoft Corporation Technical FellowのAlex Kipman氏。Technical Fellowの立場として、新しい技術を「Magic(魔法⁠⁠」と表現し、Microsoftが社会変革を実現するキーテクノロジーである最新のMicrosoft HoloLens 2と、その可能性、そして、聴講者に対するたくさんの驚きを提供するプレゼンテーションを行った。

Microsoft HoloLens 2は、先の米国で開催されたBuild 2019でDevelopment Editionが発表され、ついにエンジニアが触れられるようになった最新のMR向けヘッドマウントディスプレイ。

Alex氏は、HoloLens 2を「これからのAIとMRの新しい世界を開くデバイス」と表現し、3つのポイントとして、

  • 没入感
  • 快適性
  • 価値創造時間

を上げ、それぞれについて、HoloLens 2の強みと魅力を紹介した。

HoloLens 2のデモ。スクリーンはHoloLens 2内のMRの世界には事前に撮影して準備したAlex氏が存在し(左側⁠⁠、そこに実際のAlex氏(右側。HoloLens 2を付けている)が入り込んでいる様子。まさにリアルとバーチャルが混在したMixed Realityの世界を、当事者以外の聴講者までもが体感できた、近未来だった
HoloLens 2のデモ。スクリーンはHoloLens 2内のMRの世界には事前に撮影して準備したAlex氏が存在し(左側)、そこに実際のAlex氏(右側。HoloLens 2を付けている)が入り込んでいる様子。まさにリアルとバーチャルが混在したMixed Realityの世界を、当事者以外の聴講者までもが体感できた、近未来だった

この様子と、目指す世界観については、後述するYouTubeの動画から、該当パートをぜひご覧いただきたい。

テクノロジーが変える、社会と未来

以上、de:code 2019のキーノートの模様をお届けした。今回、Microsoftが目指す世界について、まず、人に近いソリューションであるMicrosoft 365、そして、それを支えるインフラとしてのMicrosoft Azure、さらに、この先の未来を作り出すMicrosoft HoloLens 2というパートで発表が行われた。

冒頭で平野社長が述べたように、これからの社会変革を支えるMicrosoftの技術を、3時間のあいだに俯瞰できるキーノートだったと言えよう。

詳細については、以下のYouTubeにて公開されているので、より詳しく知りたい方はぜひご覧いただきたい。

 

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