昨日に引き続き 、ET2009のエキシビジョンホールを中心に、いくつかの展示を紹介していく。
アドバンスドデータコントロールズ
アドバンスドデータコントロールズ (ADaC)のブースでは、INTEGRITYというリアルタイムOSとそのソリューション一式が展示されていた。INTEGRITYは、Green Hills Software社のリアルタイムOSであり、非常に信頼性の高いカーネルが特徴だそうだ。組込み分野でも、信頼性や可用性が求めらる分野での実績が高い。アドバンスドデータコントロールズは、日本での独占権を持つ代理店だ。
日本ではまだなじみがないかもしれないが、本社のある米国では、FA分野など堅牢性が要求される領域での採用が多い。リアルタイムOSでありながら、ネットワークセキュリティに対してEAL 6+の評価を得ているそうだ。カーネルはマルチコア(SMP方式)と仮想化にも対応し、デバッガやテスト、ソースコード解析など各種ツール、開発環境もINTEGRITYという統一ブランドで供給される。
日本では、高信頼性の領域だけでなくコンシューマ系の機器にも展開していきたいそうだ。
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ARM
携帯電話やAndroid端末などのプロセッサとして市場を伸ばしているARM のブースではハイエンド端末やデジタルエンタテインメント機器向けのマイクロプロセッサの展示が目を引いた。Coretex-A8はスマートフォンやモバイル情報端末など、オープンプラットフォーム系のOSや上位アプリケーションの実装に向くプロセッサだ。会場でもA8プロセッサの評価ボードにLinuxをインストールし、ほとんどPCと同じようなアプリケーションを動かすデモが行われていた。
もうひとつの目玉は、A8に続くCoretex-A9プロセッサの展示だ。クアッドコアのマルチプロセッサ対応の高性能機器向けのチップだが、これにもLinuxがインストールされさまざまなアプリケーションを動かしていた。まだ試作段階ということでチップは仮のパッケージだそうだが、搭載された液晶画面には、普通のPCのように多数のウィンドウが開いて、アプリケーションが動作していた。
プロセッサが高機能になってくると、当然デバッグツールや開発環境も重要となってくる。同じブースではRealView Development Suiteによるハードウェア/ソフトウェアの並行開発をサポートするARM Fast Modelsというモデルライブラリのデモも行われている。デモでは、Windows CE6.0 R3をシミュレーションし、アプリケーションの開発を行うという状況が再現されていた。
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キャッツ
組込みシステムの開発支援、CASEツールの展示を行っていたのはキャッツ のブースだ。同社は「ZIPC」という開発ツールが主力製品のひとつだが、状態遷移図をグラフィカルに作図しながら、実際のプログラムコードを生成するというツールだ。
キャッツでは、ZIPCの新しいバージョンとなるV10の展示に力を入れていた。ZIPC V10は2010年1月にリリースされる予定だそうで、旧バージョンからの改良点は、派生開発を簡単に(アサート機能) 、複数インスタンスのシミュレーション機能などとなっている。
派生開発とは、同じソフトウェアの高機能版と廉価版を開発するような場合に、別々のプロジェクトを管理するのではなく共通部分などをまとめて管理できるようにし、グループ開発は複数のプログラマが同じソースコードやプロジェクトを同時にデバッグするための機能となる。複数インスタンスのシミュレーションは、通信プログラムなどの開発で送信側、受信側のインスタンスを同時に起動し、通信させながら開発を支援する。
デモでは、Android端末(HTCのスマートフォン)で、オーディオプレーヤーを開発するというもので、ボタン操作の状態遷移図から、実際の画面の動作を実機で確認しながら開発する様子を見せていた。写真でケーブルがすべて写っていないが、スマートフォンからのケーブルはそのまま奥のPCに接続され、そこでプログラムを生成し、実機で操作しながらデバッグができるようになっていた。
ところで、ZIPCで生成されるプログラムはC言語だけでなく、Android端末でデモしているようにJavaのコードも生成可能とのことだ。
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イーソル
イーソル は、T-KernelのPOSIX対応バージョンの展示を行っていた。T-KernelはμITRONの流れを汲むリアルタイムOS(RTOS)として定評があるカーネルだが、イーソルでは、POSIX対応にあたって、ライブラリ互換というレベルではなくカーネル自体に手を入れてほぼネイティブにPOSIXに準拠するようにしたという。そのため、製品名も「eT-Kernel/POSIX」となっており、T-Kernelと互換性を保ちながらも、別カーネルという位置づけだ。
また、イーソルでは、LinuxやPOSIX向けのソフトウェアリソースを活用しやすいように、Autoconf、Automakeなどビルド支援環境も用意している。このため、リアルタイム性が要求されるクリティカルなアプリケーションでも、Linuxなどのオープンプラットフォーム系の一般アプリケーションのような開発もカバーできるようになる。
そして、組込み機器にインターネットに接続するサービスを実装するために、Flash LiteやGUIのためのミドルウェアのデモも行っていた。Flash Liteは以前からイーソルのソリューションの一部として組込み機器向けに展開していた。GUIのミドルウェアについてはUIEジャパンのUIEngineによるソリューションを提供する。UIEngineは、IPTVのようなストリーミングサービスを携帯電話に実装するために利用できるのだが、デモはまさにそのような動画を再生していた。
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レクロイ・ジャパン
PC向けのボードなどが市販されはじめ、普及の兆しが見え出したUSB 3.0は、転送速度が5Gbpsという仕様だ。これくらいの帯域幅になるとファイバチャネル(FC)と対して変わらないスピードだ。このような高周波になると、開発環境をどうするかというのも重要だ。そのような波形を観測するウェーブジェネレータ、測定器、アナライザは、それ以上の帯域(解像度)を持たなければならない。ハイエンドのオシロスコープでも1GHzがやっとである。
レクロイ は、USB 3.0の物理層からプロトコル層までをワンストップでカバーする開発環境(測定器など)を提供している企業だ。ET 2009の会場では、USB 3.0に対応したシリアルデータアナライザ、テスタ、プロトコルアナライザを展示していた。
デモ機器は、送信データのアイパターンが確認できるオシロスコープを搭載したデータアナライザ SDA813Zi(13GHz、40GS/s) 、ジッタプロファイルを再現し受信性能を検査するPeRT3 データジェネレータ/エラーディテクタ、そしてプロトコルモニタが可能なVoyagerに、それぞれに必要な試験パッケージやツール、プローブなどだ。
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グレープシステム
グレープシステム のブースでは、DLNAを使ったメディアコントローラのデモが行われていた。Android端末向けのソフトウェア開発の例として、DLNAで接続されたNAS、テレビ、Android端末で構成されたシステムで動画再生や音楽再生などを端末とテレビで行うというものだった。
Android端末には、制御用アプリがインストールされ、開発されたDLNA制御のミドルウェアも搭載される。端末からは、WiFiでNASにアクセスし、保存してある音楽データをストリーミングで再生したり、端末をコントローラとして、NAS内の動画コンテンツをテレビ(DLNAユニットが接続されている)で視聴したりが自由にできるというシステムだ。Android端末で撮影したカメラ画像をそのままモニタに表示させることも可能だ。
そのほか、ネットワーク接続される機器として、今後対策を強化しなければならない部分として、マルウェアの検出や侵入検知のミドルウェアも手掛けているそうだ。
DLNAを使ったメディアコントローラは、AwoX社のmedia CTRLモバイルといういミドルウェアソリューションで、セキュリティ関係のミドルウェアはmocana社のNanoDefendar、DSF for Androidなどをベースにしている。グレープシステムでは、これらを活用し、日本向けのマルチメディア端末のソリューションを提供しているそうだ。
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日本ローターバッハ
日本ローターバッハ は、ドイツ ローターバッハの日本法人として7年前から営業している、組込み機器のデバッガやアナライザを手掛けている企業だ。ローターバッハはARMチップのデバッガ、開発ツールベンダとしては長年の実績があるそうだ。とくにノキアが自社の携帯電話の開発にローターバッハのデバッガ、ツールを採用している点が、世界では評価されている。
さしずめ「ノキアが認めるローターバッハのデバッグツール」といったところだろうか。同社はARMとの付き合いも長く、新しいプロセッサであるA5も世界でいち早く対応デバッガ、開発環境をリリースしているという。
展示の中で目をひいたのは、長時間トレースを可能するというシステムだ。トレースメモリをLIFOとして、ホストコンピュータに順次転送を続ける仕組みによって、時間あたり5GBの転送速度なら500GB程度のハードディスクに4日分の連続トレースが可能だという。もちろん、ハードディスクの容量さえ許せば何日でもログを蓄積させることが可能だ。
長時間のトレースログからは、めったに発生しない事象やカバレッジテストに有効だ。
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ソフィアシステムズ
日本におけるICEの老舗といえるソフィアシステムズ は、今回のETでは、正規代理店となっているARM KEILのARM用の開発システムを展示していた。ブースでデモを行っていたシステムは、Coretex-M3のJTAGアダプタとStellarisの評価キット、RealViewによる開発環境だ。
また、ソフィアシステムズのEJSCATTについては、Coretex-M3に対応したモデルの展示もあった。さらに、その奥には、かなり大型のICEのような箱を発見した。これは、ハードディスクを内蔵した長時間トレーサだそうだ。内蔵ハードディスクの容量は100GB以上ある。長時間トレースには、ログデータを通信により外部ストレージに転送するタイプがあるが、ハードディスク内蔵型は、構造がシンプルな分、数日といった蓄積期間でもネットワークトラブルなどの心配がなさそうだ。
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テクマトリックス
テクマトリックス でデモしていたのは各種の自動テストツールだ。Javaの自動テストツールjtest Ver.8.4、ウェブサービスのテストツール SOAtestなどの他、参考出品としてC++test Ver.7.3のデモを行っていた。
リリース前の参考出品とのことで、製品とは画面や仕様など異なる可能性はあるとしながら、新しいバージョンの追加機能など説明してくれた。まず、ターゲット上のメモリリークを検出する機能だが、ランタイム上での検出が可能になるそうだ。実際にどのような関数が、どのような順番で呼び出されるかによって、コード上はメモリを解放しているつもりでも、実行時に解放コードが実行されないといったことはよくある。それが事前に検出可能というのはかなり役立ちそうだ。
また、評価・解析時間の向上、対応するクロスコンパイラがさらに増える予定もあるという。解析時間は、前回の差分を解析するインクリメンタルサーチとマルチプロセッサ対応の解析アルゴリズムによって、レスポンスを向上させるそうだ。
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