RTOSを使いやすくするSDK、Androidのリアルタイム性を強化――イーソル
組込み機器開発においても汎用OSによるプラットフォーム開発が主流となりつつあるが、そんな中でもイーソルは、リアルタイムカーネルにこだわり、ソリューションを提供し続けている。ET2010の会場でのイーソルは、eT-Kernel SDKの展示に力をいれていた。
Iイーソルのブース
TOPPERSやT-KernelなどのリアルタイムOSは、その名のとおりリアルタイム処理に特化している反面、OSとしての機能はプロセッサやデバイスに近い部分のサポートがメインであり、GUIや複雑なアプリケーションに向かないとされている。eT-Kernel SDKは、OSのカーネルのほか、各種デバイスドライバ、OpneGLなどのグラフィックライブラリ、プロトコルスタック、データベースやQt、Flash Liteのようなミドルウェアなどを一体化したパッケージだ。
このSDKは、リアルタイムOSをベースにした高性能かつ高付加価値の端末製品の開発を支援するとのことだ。WindowsやLinuxのような汎用OSを使って、Web上のサービスを開発するまでには至らないかもしれないが、いわゆる「もっさり感」のない高機能端末にはリアルタイムOSの存在は重要である。そんな骨太なエンジニア向けのソリューションといえるだろう。なお、カーネル部分はマルチコア対応のeT-Kernel Multi-Core Editionを利用することもできるそうで、まさにクリティカル&ヘビーなアプリケーション開発のためのソリューションだった。
eT-Kernel SDKの説明パネル。GUIを含むアプリケーションの開発に必要なライブラリ、スタック、ミドルウェアはほぼそろっている
eT-Kernelの開発事例のデモ。GUIを完備したオーディオプレーヤーのアプリケーション
イーソルの展示でもうひとつ目を引いたのは、eSOL for Androidだ。これは、eT-Kernelのドライバやリアルタイム系のミドルウェアはそのまま残し、アプリケーション用のレイヤにAndroid Coreのアダプタを搭載したものだそうだ。このアダプタの上にHALやAndroidのカーネルドライバ、ライブラリ、ランタイムなどが積み上げられる構成になっている。
一言でいえば、Android端末のカーネルをLinuxではなくRTOSに置き換えるソリューションといえばいいだろうか。eSOL for Androidにより、GPLの問題は回避され、なによりカーネルのリアルタイム性が確保されることで、現状のAndroid端末にない付加価値を提供できる可能性がある。こちらもマルチコア対応のカーネルも利用できる。車載機器、高機能家電などへの応用が考えられそうだ。
Android端末や製品のカーネル部分をリアルタイムOSに置き換えてしまうというソリューション。マルチタッチやモーションインターフェースより基本的かつ重要な「応答時間」という操作性は、リアルタイム制御によってでしかチューニングできない領域がある
リアルタイムカーネル版のAndroidアプリのデモ
電子ブックリーダ専用SDKと開発プラットフォーム――グレープシステム
一部では、2010年は電子ブック市場の元年といわれているようだ。しかし、電子ブックの市場自体は20年ほど前から存在しており、近年のブームもオープンといいながら、端末、コンテンツともにApple、シャープとベンダーが制御する領域が多いような面もある。真にオープンな市場を確立するには、端末の開発環境も広く開放されたほうがいいだろう。ET2010では、グレープシステムがそのような問題へのソリューションとなりそうな開発環境のデモを行っていた。
グレープシステムのブース
電子ブックリーダのPDF用ソフトウェア開発キット(SDK)と、電子ブックリーダ向けの開発プラットフォームだ。PDF用のSDKは、Foxit Embedded PDF SDKといい、携帯電話などのPDFレンダリングエンジンがベースとなった開発ツールキットである。もうひとつは、Foxit Windmillという開発プラットフォームで、こちらはPDFだけでなくePub、HTML5、RTF、CHM、TXTなどの文書フォーマットをはじめ、JPG、BMP、PNG、GIFといったイメージフォーマットにも対応している。また、独自のDRMも実装されており、電子ブックビジネスにも対応する。
Windmillは、もともとFoxit社の電子ブックリーダ端末のために開発され、実装されたソフトウェアを、汎用的な電子ブックリーダの開発プラットフォームとして分離させたものだそうだ。
デモでは、Foxit社のeペーパーを利用した電子ブックリーダと、丸文社製のeペーパー電子ブックリーダ用のリファレンスボードに、実際のビューアーやコンテンツを表示させていたが、文字を読むという点では、やはり液晶画面よりeペーパーのほうが見やすかった。
Windmillソリューションの説明パネル
Iイーソルのブース
eペーパーによる画面表示
製品にそのまま組み込めるプロセッサモジュールと開発プラットフォームを発表――ソフィアシステムズ
1日、ソフィアシステムズは、マーベルのARMADA 168を搭載したプロセッサモジュール「Elbert」( エルバート)とElbertに対応した開発プラットフォーム「Sandgate 4」を発表すると同時にET2010の会場で実機のデモ展示を行っている。
ソフィアシステムズのブース
Elbertは、マーベル社製のARMADA 168を搭載したモジュールで、プロセッサのほか、NANDフラッシュメモリ、DDR2メモリ、電源、オーディオインターフェイス、イーサネット物理層、Wi-Fiモジュールなどが5cm×4.5cm角の基板に収められている。小型の基板に多機能デバイスのコア部分に必要な機能を搭載することで、組込み機器メーカーは、開発する製品のプロセッサ部分にこのモジュールをそのまま利用することができる。
携帯電話から業務端末まで、デバイスのリッチ化、高度化が進み、ローコスト、短期開発のニーズが高まるなか、ソフトウェアモジュールだけでなく、ハードウェアも既製品やモジュール化が進んでいる。Elbertは、そのような用途のために、プロセッサまわりとアプリケーション部分をモジュール化したものだ。
ARMADA 168搭載プロセッサモジュールElbert
Elbertの開発環境として、Sandgate 4が発表され、これも会場で展示されていた。Sandgate 4は、Elbertが分離可能な状態で実装されている。つまり、システム設計、プロトタイプ開発、デバッグ、量産までワンストップでカバーすることができる。対応OSは、Android、Linuxの加えWindows Embedded CE6.0や10月にリリースされたWindows Embedded Compact 7にも対応している。ちなみに、量産化については、ソフィアシステムズがElbertを量産供給してくれる。
マーベル開発プラットフォームSandgate 4。Elbertが着脱可能な状態で実装される
ソフィアシステムズでは、デバッグ後の量産供給だけでなく、製品の受託開発、ICEを使ったトータル開発のサポート、そして、マーベルプロセッサモジュールが日本語対応で利用できることも、国内ベンダーの開発ではメリットになるのではないかという。Elbert、およびSandgate 4は2011年2月から出荷を開始する予定だ。
受託開発について、具体的な事例を聞いてみたところ、「 受託開発案件は、じつはみなさんが外で目にするような端末も多数手掛けているのですが、先方の許可がないと公表できません。今回は近鉄車両エンジニアリングさまのGPS Train Naviを展示しています。」とのことだ。
他にも、Cortex M4の開発ソリューション、WiMAX機器の開発プラットフォームなどさまざまなデバイス開発のソリューションが展示されていた。とくにICEの老舗としてのプラットフォームはソフィアシステムズならではのものとなっている。
Cortex M4を利用したソフィアのトータル開発ソリューションのデモ