12月1日~3日に開催した「組込み総合技術展 ET2010」会場からのレポートをさらにお届けしよう。
Androidに特化した高速起動「QuickBoot」/空間検索機能サポートのDeviceSQLを展示──ユビキタス
ユビキタスは、同社のLinux高速起動技術「Ubiquitous QuickBoot」の新たなオプションとして、「Android Pack」の展示を行っていた。
QuickBootは、Linux稼働時のシステムイメージをフラッシュメモリに保存して、この状態をブート時に反映させることで1秒以下でLinuxを起動させる技術。アプリケーションが立ち上がった状態でも、それを保存しておくことで高速起動が可能だが、このスナップショットを頻繁に書き換えると、フラッシュメモリの書き換え回数制限が気になってくる。
そこでAndroid Packでは、Android起動の基本的な部分のみの起動に高速化技術を使うことで、起動時のボトルネックのみの解消を狙っている。このモードを「Androidモード」と呼び、通常のQuickBootのようにコンマ数秒とは行かないが、4~5秒程度でAndroidが起動する。
また11月24日に発表されたばかりの組込みDBMSの新バージョン「Ubiquitous DeviceSQL Release 5.0」ももちろん展示されていた。おもな新機能は空間検索機能と全文検索機能のサポート。アプリケーションレベルでは高速化するにも限界がある機能については、こうしたミドルウェアレベルでのサポートが今後も進んでいくと思われる。またDeviceSQLでこうした機能をサポートすることで、同社の軽量化ノウハウを生かすことができ、システム全体のフットプリントもミニマムに保つことができるという。
TOPPERS OSの実用事例が続々登場──TOPPERSパビリオン
TOPPERSパビリオンでは、各企業で採用が進むTOPPERS OS搭載のプロダクツが展示されていた。最も目を引かれたのが自動車制御用リアルタイムOSであるTOPPERS Automotive Kernel採用の自動車(ススキ製「キザシ」)だ。TOPPERS Automotive Kernelは業界のECU(Engine Control Unit)間接続の標準規格であるOSEK/VDX仕様 V2.2.1 ECC-2に準拠したシステム。このほどスズキ自動車製の一部の車種/モデル(キザシ、スイフト、ワゴンR)のドアロック、ワイパー、ライト、ウィンカー、車両運動協調制御システムに採用された。
このほか高田教授によると、「SafeG」というデュアルOSモニタも注目とのこと。これはARMプロセッサのハードウェア仮想化支援機能を用い、TOPPERSカーネルとAndroidやLinuxといった汎用のOSを仮想化レイヤ上で動かすことによって、汎用OSへの不正アクセスをTOPPERS側がチェックし、保護するというもの。
Linuxなどの汎用OSが組込みシステムに採用され、ネットワークに接続することによって、これまで難しかった組込みソフトウェアへの不正アクセスの敷居も下がっている。たとえばレンタカーを借りたときに、そのクルマのシステムを不正に書き換えて返すといったことも、それほど難しいことではなくなってきているのだ。
AndroidがWindows上から起動 ──BlueStacks for Windows
このET2010に合わせて日本で発表されたのが、x86アーキテクチャのWindows上からAndroidアプリを起動できるソフトウェア「BlueStacks for Windows」である。
今後は逆にAndroid上からWindowsを起動するシステムも検討中とのことで、今後の市場展開によってさまざまな活用が考えられるシステムだ。