Evernote Devcup、Japan Prizeとは?
Evernote Devcup、Japan Prizeとは、Evernote社の広く日本の開発者を応援するという趣旨に賛同した楽天株式会社ご協力によって創設されたもので、今回で2回目の開催となります。
今回のJapan Prize審査員は以下の5名。
- 辻村清行氏(ドコモエンジニアリング株式会社 代表取締役社長)
- James Chen氏(楽天株式会社 執行役員 楽天市場サービス開発・運用部 部長)
- 長谷川敦士氏(株式会社コンセント President)
- 外村仁氏(Evernote Japan 会長)
- 井上健氏(Evernote Japan General Manager)
Japan Prizeを受賞したmemogram
数ヵ月の応募、審査期間を経て、28の応募作品の中から選ばれたのが、小麦株式会社 新井浩司氏、竹本雅彦氏が開発する「memogram」です。
memogramは、Evernoteをバックエンドシステムとして、作成するカード(Evernote上のノート)のグループ化・カテゴリ分けを美しく可視化したiPad アプリケーションです。ノートブックやスタック、ノートへのタグ付けを意識せず、フラットで直感的に操作できるようなUIとなっており、あるテーマ別にそってさまざまな種類の情報を集めてタブレットで視覚的に整理できます。
今回の受賞理由について、審査員からは「従来のEvernoteが縦の整理だとすると、memogramは横の整理が行え、今後の方向性の1つを見せてくれたことが一番のポイントです」と述べています。
こうして、Japan Prizeに選ばれたmemogram、そして、開発者の新井・竹本両名がEvernote Trunk Conference(ETC)2012に参加することになりました。
出発からのサプライズ
今回は、日本時間8月23日の深夜便(0時過ぎ)での出発となりました。日本航空JAL002便にて。22日22:00に集合すると、最初のサプライズが!
当初エコノミークラスと言われていたチケットが、羽田とシリコンバレーを結ぶ唯一のキャリアであるJALの、Japan Prize受賞者を祝う粋なはからいでビジネスクラスにアップグレードされており、さらに、日本航空のラウンジおよびVIPルーム「輝」での、出発前のひとときを過ごす権利がついていたのです。
Evernote本社でのアプリレビュー
約9時間ほどのフライトを終え、無事アメリカ・サンフランシスコに到着しました。到着したのは現地時間22日の17:00過ぎ。東京都内が30度を超える暑さから出発したにもかかわらず、現地では15度前後とかなり寒い気候が待ち受けていました。
無事入国審査を終えると、ツアーメンバー全員で車に乗り、滞在先のInterContinental San Franciscoへ。この日は夕飯を食べ、次の日に備えました。
スカッとした青空が広がるRedwood Cityにある、Evernoteヘッドクォーターへ
翌日、Evernoteヘッドクォーターに。同社のオフィスは、今年の6月にMontain ViewからRedwood Cityに移り、規模も大きくなりました。
ここでは、オフィス見学のほか、各担当者との充実したミーティングが実施されました。
Android担当者、iOS担当者とのミーティング、アプリレビューを体験
まず、Android担当者、Evernote本社で働くエンジニア寺崎和久氏とのミーティング&レビューが行われました。「memogramのAndroid対応に向け、貴重なご意見をいただけました」(竹本氏)といったコメントからもわかるように、充実したミーティングになったようです。
続いて、デザイナーのJosh Taylor氏、パートナーリレーションシップを担当する佐藤真治氏との、iOSおよび現時点でのmemogramに関するディスカッションが行われました。
Joshからデザインに関して「もしたくさんのノートが存在して、バランスが崩れたときは?」という質問が上がると、新井氏は「この(iPad)のサイズのスクリーンの中で綺麗に見られるように自動調整します。とにかくシンプルに、5分使えばわかるUIを目指しました」という回答をし、memogramの特徴をしっかりと伝えました。
さらに、実際にサービスを作っている立場からのアドバイスとして「まだリリース前なので頭で考えてしまいがち。とにかくベータ版でもいいので一般公開をして、本物のユーザの声を聞いて改善していくべきです。ユーザに使ってもらうこと、それが優れたアプリを作る上で一番大事なことです」(Josh氏)という貴重なアドバイスをもらっていました。
ETC2012、Unconference
本社訪問の翌日が、ETC2012の本番でした。その模様については、本連載のこれまでをご覧いただくとして、ここでは、memogramが登場したUnconferenceについてお届けします。
Unconferenceは、キーノートや個別セッション、展示とは異なり、正式発表までは至らなかったものの、注目できるアプリやサービス、発表を行う場として提供された時間です。
memogramチームも12:30~13:00の30分間を準備され、参加者に向けてプレゼンテーションを行いました。
「誰も来ないんじゃないか」という不安がよぎるも、いざ始まってみると、同じアジアから、韓国の参加者たちが聴講をしていました。
持ち時間を過ぎたあと、「英語でのプレゼンテーションに不安がありました」(新井氏)と述べながらも、2人とも安堵の表情になっていたのが印象的でした。
ETC2012を終えて
本社訪問、ETC2012とあっという間に時間が過ぎ、現地時間26日に帰国の途につきました。行きと同じく、JAL便にて。JAL001便を待つ間、サンフランシスコ国際空港のSakura Loungeでの休憩時間があり、そこで、今回のツアーの感想について伺いました。
竹本氏は「とにかく初めての海外ということで緊張しました。それと、本社訪問やETC2012に参加してみて、自分がまったく英語ができなかったことが悔やまれます。もし、次回もこの場にいることを目指しながら、そのときはまず英語を身につけておきたいです」と、自身の初海外体験と英語に対する感想を述べました。
“オープン”の強み
一方の新井氏は「アメリカ、そしてシリコンバレーというベンチャーが育つ風土を肌で感じられたことはすごく良い経験になりました。私自身、日本の大手企業に所属していた経験もあり、たとえば、ミーティング風景や来客対応1つとっても、まったく異なる文化だったのが印象的です。とにかく“オープンであること”、それを感じることができたのが良かったです」と、全体を通じて感じた、シリコンバレー、ベンチャー企業が持つ“オープンさ”について何かを感じ取ったようです。
また、本社でのエンジニアやデザイナーとのミーティングについて「これまで、自分が考えてきた機能について、客観的なコメントをもらえたのがすごくためになりました。また、エンジニア界隈のネットワークというのも見ることができたので、そういったつながりも活かしてmemogramのさらなる開発に役立てていきたいです」(竹本氏)と、開発の糧になるものが得られたことが伝わってきました。
自分たちがやってきたことの延長線にある
さらに「今回、片言英語ではありましたが発表したという経験が財産になります。また、ファイナリストではない自分が言うのもおこがましいのかもしれませんが、Devcupを見て、自分たちがつくっているものがすごく離れているのではなく、延長線、その先にあるものだということがわかったのは本当に良かったです。これからのモチベーションになります」と、新井氏は経験とともに、新たな自身とモチベーションを得たようです。
最後のまとめに関しては、異口同音に「今度こそあのファイナリストの舞台にたって、日本の代表として発表したいです。まずは10月リリースに向けてがんばります」と、memogramの開発に力を入れることを誓いました。
さまざまな体験ができるJapan Prize!来年はあなたが受賞するかも
今回は、Japan Prize受賞者に同行し、その模様をお届けしました。開発者向けコンテストは多数ありますが、このように、日本国内にとどまらず、海外にいけるチャンス、そして、さまざまな体験ができるコンテストというのは、それほどありません。
来年、Evernote Trunk Conference、Devcup、そして、Japan Prizeが開催されたときには、ぜひ多くの日本の開発者たちの参加を期待したいと思っています。
コンテストの情報などについては、これからもgihyo.jpにて紹介していきます。