EuroPython2日目の様子をお伝えします。
この日は私自身のポスターセッションや、日本から参加した他のメンバーが初めての海外LTに挑戦したりと盛りだくさんな1日でした。
Python 1994 ―Paul Everitt
Python 1994
Paul氏は現在はPyCharmのDeveloper Advocateですが、以前はZope Corporationの共同創業者だったりと、Pythonの黎明期から活動している方です。そのPaul氏が、1994年ごろのPythonコミュニティについてジョークを交えて面白おかしく発表していました。
最初に「EuroPythonが一番好きなカンファレンスです」と言ってから、突然クリーブランドとピッツバーグ(どちらもUS PyConの開催地)disを挨拶代わりにトークがはじまりました(冗談でしょうが) 。会場に「EuroPython 1に参加したことある人?」と聞いたところ3名いました。はじめてのEuroPythonは2002年に開催されました。
まずは1994年(25年前)がどんな年だったかを振り返ってみます。1994年は以下のような年でした。
アメリカの大統領はビル・クリントン(1993年に就任)
Amazonが設立した年
HTMLのバージョンは3.2
そしてPython Communityがはじまった年
1994年にPythonの初めてのイベントがあり、初回は20名が集まってそこで会話をしたそうです。当然現在のようなイベントサイトもないので、メーリングリストで告知して集まったようです。
Paul氏はそのころからPythonのコミュニティに参加し、現在までにPSFやPlone Foundationの立ち上げメンバーだったり、Zope Corporationの共同創業者などを歴任してきたそうです(すごい) 。なぜPaul氏がPythonを使うようになったかというと、当時はスクリプト言語としてはPerl、Tcl/Tk、Pythonが選択肢としてありましたが、勉強するために本屋に行っても良い本がなかったといいます。Pythonにはオンライン上にチュートリアル があったため、そこで学んで使い始めるようになりました。
他にもいろいろと歴史的な資料(Webサイトやメール)を引用しながら、当時のコミュニティの話が語られていました。Pythonの歴史を感じる発表でした。
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Otterは海外カンファレンスで超便利そう
イベントとは直接関係ないのですが、@komo_fr に教えてもらったOtterというサービスが、海外カンファレンスでは便利そうだなと感じました。
このサービスは、カンファレンスなどの音声を録音して自動的に文字起こしをしてくれるノートサービスです。私のように英語の聞き取りが苦手な人には、あとで振り返るときにかなり便利そうだなと感じました。AndroidやiOSのアプリもあり、ログインして録音を開始するとほぼリアルタイムで文字起こしがされていきます。実際に使ってみるとサーバー側で翻訳などを行っているため、スマートフォンの電池はそれほど消耗しませんでした。
ノートの途中に写真なども挿入できるので、あとで見返したときに「この部分の話だ」とわかりやすいのも便利です。無料プランでも600分/1ヵ月まで使用できるので、英語のヒアリングに自信がない人は一度試してみることをおすすめします。
Otter上のライトニングトークのログ
ポスターセッション
US PyConに続いて、EuroPythonでもポスターセッションで発表を行ってきました。
ポスターセッションとは、会場にボードが用意されており、そこに大きなポスターを貼ってその前でディスカッションなどを行う発表形式です。EuroPythonのポスターセッションはUSとは異なり、毎日2つずつのポスターセッションが行われ、ポスターセッションの時間も並行して通常のトークセッションなどが行われます。そのため、トークが始まると結構閑散としていて、休憩時間やランチタイム後半になると賑わってくるという感じでした。また、USと異なりEuroPythonでは私1人でポスターセッションの対応をする必要があるため、そこがドキドキでした。
当日ポスターを会場に持っていてまごまごしていると、隣でポスター発表している方が声をかけて掲示を手伝ってくれました。この方はUS PyConで「日本人の彼女がいる」と声をかけてくれた方です。1人だとポスター掲示も一苦労(ヨーロッパ人仕様で高さもある)でしたが、手伝ってもらえたのでなんとか掲示できました。本当に助かりました。
ポスターの掲示を手伝ってもらった
その後さまざまな方が私のポスター発表に来てくれて、いろいろとディスカッションしました。以下のような話が出てきました。
日本でPythonってどのくらい盛り上がってるの? Rubyが有名なんでしょ? という質問が多かったです。「 最近は日本でもPythonは盛り上がっていて、PyCon JPの参加者も2011年は130名だけど2018年は1,000名くらい参加した」という話をすると、盛り上がっていると感じてもらえたようです。
バーゼル在住の日本の方が来てくれました。普段はRとかを使っているらしいです。
Remiさんという人が、友達の入場パス(名札)を借りてわざわざこのポスターを見に来てくれました。とてもうれしいです。
Guidoに大ウケだった「UDONPy」にウケている人が2名いました。ネーミングって大事ですね。
日本に1ヵ月くらい旅行予定の方がいて、「 その時にPythonイベントがあったら参加をしたい」といっていたので「何かあったら連絡ください」と名刺を渡しておきました。
ポスター発表の様子(その1)
他に、PyCon JPとPyCon TWでスピーカーになってるSebastianさんが来てくれました。「 日本と台湾でまた会いましょう」と話しました。「 私も(日本と台湾の)両方で発表するよ」と伝えたら「世界は狭いね」と言われました。確かにww
ポスター発表の様子(その1)
(脳が)へとへとになりましたが、なんとか1人でポスターセッションをやりきりました。EuroPythonに参加している方に、日本のPythonの状況や、Python Boot Campで日本中に広めようとしているという動きを知ってもらえたかなと思います。このポスターセッションがきっかけで日本に興味をもってもらえたり、Python Boot Campのような活動がヨーロッパで生まれるといいなと思います。
EPS General Assembly 2019
これは通常のトークセッションとは異なり、EuroPythonを主催しているEuroPython Society (EPS)の年次報告と役員改選などを行うミーティングです。筆者は一般社団法人PyCon JPの副代表理事 をやっていることもあり、ユーロではどんな感じなのか興味があるので参加しました。
EPS General Assembly 2019
基本的な議題は以下のページにまとまっているようです。
EPSには現在233名のメンバーがいること、年次会計報告の回覧、2019年の活動報告などが行われました。EPSはEuroPythonの登録商標を持っているそうです。会計報告を見てみたんですが、私の見間違いでなければ銀行に34万EURがあるそうです。お金持ちですね!!!
最後に2019年の理事候補が前に出て発言し、参加者の承認を得ていました。9名の新理事はEuroPythonのクロージングで紹介されていました。
Day 2 ライトニングトーク
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2日目のライトニングトークです。この日のライトニングトークから接続が2系統となり、人の入れ替えがスムーズになりました。
最初に抽選コーナーがあり、書籍のプレゼントがありました。抽選方法はJupyter Notebookに書いてあるコードでランダムにキーワードを選んで、それに合致する人が勝ち残るという方式です。誕生日が偶数/奇数、名前に含んでいる文字などで抽選していましたが、レアな文字が出ると全員がはずれになってやり直しになるなど、いい感じのグダグダ感でした。
Jupyter Notebookを使用した抽選の様子
binder
このサービスでGitのリポジトリを指定すると、Web上でJupyter Notebookが参照できます。Buildに少し時間がかかりますが、便利そうだなと思いました。
inspectモジュールを使用したクラス置き換え
Pythonのinspectモジュール を使用して、動作中のクラスを別のクラスに置き換えて、振る舞いを動的に変更するというデモです。 全てライブコーディングで説明しながら実装して入れ替えていて、すごいなーと感じました。
はじめての海外LT参戦で得たもの
古木友子(@komo_fr )
私にとって、今回のEuroPythonは初めての海外PyCon参加でした。海外のPyConには以前から参加したいと思っていたのですが、「 せっかく参加するなら何か発表したい」「 発表するなら大きいカンファレンスがいい」という気持ちから、 EuroPythonでのLTを決めました。
EuroPythonのLTは先着順です。受付近くに用意されたサインアップ用の紙に、発表タイトルと連絡先を記入します。先着順なので当日の朝は早めに会場に向かったのですが、開場15分前にはすでに5、6人の参加者が入口で待ち構えていました。開場直後はサインアップ用の紙が見当たらなかったため、私が受付に「LTやりたいんだけど」と伝えて用意してもらい、他のLT希望者といっしょになって柱に紙を貼りました。
みんなで貼ったLTのサインアップ用紙
LTでは、私が個人で取り組んでいる、PEP(Python Enhancement Proposals)同士の引用関係ネットワークの分析について紹介しました。会場の反応が欲しかったので、途中でクイズも交えつつ発表したのですが、本番では無事、歓声と拍手をいただきうれしかったです。
発表の様子
登壇後のSocial Eventでは、「 アイデアがいいね!」「 わかりやすかった」と本当に多くの方から暖かい言葉をいただきました。また会場の外でも、電車の中でスタッフの方々とお話できたり、ホテル近くの道端で「君のLT面白かったよ!」と声をかけられたりしました。
またTwitter上でも、「 OMG Such an amazing project 」「 君は14時間かけてきたんだから10分喋るべき 」といったコメントをいただきました。特に、PyPAのメンバーでPyPIのメンテナでもあるDustin氏にパッケージング関係の内容について反応いただけた のはうれしかったです。発表中は、会場の方々の表情まではよく見えなかったのですが、帰国後にYouTubeで公開されている動画を見たところ、客席でみなさん笑っていてくれて嬉しかったです。
今まで国内で発表したことはあったのですが、今回の経験から「英語で発表すると、今まで届かなかった人にも届く」という手応えを感じることができました。EuroPythonに限らず、PyConのトークはYouTubeなどで公開されるため、トークの内容自体は現地に行かなくても把握できます。しかし、「 実際に発表して、フィードバックをもらう」「 会場の熱を感じる」といった生の体験は、実際に足を運ばないと得られません。もしこれから海外PyConに参加するという方は、ぜひなんらかの形で発表してみることをおすすめします。
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Social Event
カンファレンス2日目の夜はSocial Event という名前のパーティーがあります。パーティーは25EURで簡単な食事と2ドリンクとがついてくるそうで、私も参加してきました。
パーティー会場はチュートリアルやスプリントの会場でもあるFHNW Muttenz(大学)のロビーで行われました。この大学ですが、かなり建築にお金がかかっているらしく、広々としたロビーはとてもきれいで快適でした(街の中心部からは結構遠いですが) 。
パーティー会場
フードはドイツ語圏なのでやはりソーセージ。ビールは残念ながら一種類だけでした。
ソーセージとビール
私は少し遅れて到着したのですが、会場の奥の方でライブ演奏が行われていました。この演奏は1日目に「Python for Realtime Audio Processing in a live music context」と題して発表されていた方です。実際に自分の演奏をループ再生して、そこにさらにライブで音を重ねてというパフォーマンスをしていて、非常に興味深かったです。
ライブ演奏
EuroPythonの主催メンバーの一人であるMartin Christen氏(@MartinChristen )は、Social Event会場である大学で教授をされているそうです。Noah氏(世界中のPyConでボランティアスタッフをしている筆者の友人)の紹介でMartin氏と話をしていたんですが「屋上を見せてあげるよ」と言って、連れて行ってくれました。屋上に入るためのカードキーは一部の教授しか持っていないらしく「みんなには内緒ね」と言っていました。バーゼルにはそんなに高い建物はないため、13Fの屋上からの眺めはとても素晴らしいものでした(明るいですが21時過ぎてます) 。
FHNW Muttenz屋上からバーゼルを一望する
降りてから、EuroPython SocietyのChairであるMarc-André Lemburg氏(@malemburg )と話をしました。氏は2018年に続き2019年もPyCon JPに参加するそうで「日本でまた会いましょう」と再会を約束しました。また、PyCon APAC 2019にも参加していたTaihsiang Ho(台湾)とLi-Ting Chen(台湾出身でオランダ在住)とも再会しました。2人ともPyCon JPと(当然ですが)PyCon TWにも参加するそうです。「 今年はその4ヵ所で全部なんだよ」と言っていたので「世界のPyConに1年で4ヵ所参加するなんて、十分クレイジーだよ」と言っておきましたw。まぁ、私や各国PyConでスタッフをしているNoah氏はもっとクレイジーだとは思いますが。
まとめ
2回目のレポートは以上です。ポスター発表をなんとか1人でやりきった心地よい疲労感の中、Social Eventでのビールや屋上からの眺めは格別でした。
次回レポート(最終回)ではEuroPythonのカンファレンス最終日の様子をお伝えします。