国内外のIT業界の経営者、経営幹部が集まる招待制イベント、Infinity Ventures Summit 2010 Fallが12月7日、8日の2日間、京都市にて開催された。初日はグルーポンのCEOがSkype会議で参加し登場。その後、各セッションでベンチャー企業の熱いビジネス展開が紹介された。
インフィニティ・ベンチャーズLLP共同代表パートナーの小林雅氏が登壇しイベントの開幕を告げる
シカゴの自宅からグルーポン創業者が登場
最初のセッションは、Googleによる買収が噂となり世界でいま最も興味を集めているといってよいグルーポンの創業者、Andrew Mason氏がSkypeでシカゴの自宅からスピーチを行った。Mason氏が語ったグルーポンの生い立ちは、thepoint.comという地域のコミュニティー活動を支援するためのサイドプロジェクトとして始まったものだと言う。結果的にはサイドプロジェクトとして始めたものが大当たりし、世界最速で成長するネット企業と言われるようになったわけだ。
Skypeで登場したAndrew Mason氏
グルーポン誕生のきっかけとなったthe pointの仕組み
the pointは、地域を改善しようとするコミュニティー活動を支援するためのサイトだ。たとえば、ある公園を改修するのに5000ドルが必要だとしよう。この活動のために、あなたは20ドル程なら寄付してもいいと考えるかもしれない。しかし、自分が寄付をしても5,000ドル集まらなければ公園は改修されず無駄になってしまう。そこでthe pointでは、総額で5,000ドル集まるなら20ドルを寄付する、というように目標額を設定した地域改善のためのキャンペーンを登録することができるようになっている。この仕組みが、設定された人数に達しないと取引が成立しないというグルーポンのサービスに引き継がれたというわけだ。
グルーポン最速成長の秘密。世界各国の間でのKPI競争と、うまくやる、早くやること
続けてグルーポン・ジャパンの執行役員である野田臣吾氏からグルーポンの組織や成長のスピードに関するエピソードが紹介された。
グルーポンは世界展開において各国で生まれたグルーポンのクローンサイトを買収してきて成長。グルーポングループは米国を担当するグルーポンUSAとグルーポンInternationalの2つの組織に分かれており、グルーポン・ジャパンはグルーポンInternationalに属しているという。
グルーポンInternationalの本部はベルリンになり、そこではGroupon Worldcupという名称でグルーポンが展開されている各国のKPIが競われているという。米国以外で最も成長が著しいのはフランスであり、グルーポン・ジャパンも12月5日時点で割引総額が30億円、月間のユニークユーザ数は50万人に達したとのことだ。
グルーポンの割引総額
会社の成長にあわせて、グルーポン・ジャパンは社員の採用を急ピッチで進めており、 「 毎週新入社員が50人から60人入社している」と野田氏が話すと会場には驚きの声があがった。現在の従業員数は600人ほどだという。
2週間おきに、KPIの計画が上方修正されていっており、「 史上最速の成長」と謡われる成長を達成していっている。その後のセッションで参入障壁が低く、雨後のタケノコのように新しいフラッシュマーケティングサイトが誕生している現状において、グルーポンの差別化のポイントについて尋ねられた野田氏は「うまくやる、早くやる。この2つにつきる。いかにうまくやるかを徹底すること」と語った。
本質的でないものは広がらない時代
本荘修二氏がモデレータを務めた「ネットマーケティング最前線」のセッションでは、グルーポン・ジャパンの野田臣吾氏、日本コカ・コーラの江端浩人氏、UNIQLOCKなどを手がけ独立したユニット・ワンの勝部健太郎氏によりソーシャル社会でのマーケティング、そしてモノからコトへのシフトについて話が展開された。
パネルディスカッション「ネットマーケティング最前線」
勝部氏は、「 ユーザにとって必要なものと必要でないものがはっきりしている。本質的でないものはまったく売れない時代。人のクチコミがすべてを裸にしてしまう」と語り、そのためには「( 商品コンセプトやマーケティングの)初期設定が間違っていると成功しない。ソーシャルを駆け巡るには元が良くないと流通しない。大元をみつけて抽出して『流れるキーワード』を設定することが大事」と語った。
いま面白いのはガジェットやプラットフォーム
そしてユーザにとって選ばれるようになるには、「 なんでもいいからひとつ、世界水準に持っていくということが高みにのぼることに繋がるのでは?」と提案し、また「いまマーケティングキャンペーンで面白いものはないのでは?いま面白いのは(iPhone、iPadのような)ガジェットや、プラットフォーム」とプラットフォームの持つ力について意見を投じた。
日本コカコーラの江幡氏からは自社サイトであるコカ・コーラパークが紹介され、会員数が900万人を突破しており、ひとつのプラットフォームとして機能している事例が紹介された。
またグルーポンみたいなモデルがなぜ今まで生まれなかったのかという理由については、登壇者によって「TwitterやSNSに見られるソーシャルプラットフォームが整ったことが大きい」とまとめられ、グルーポン・ジャパンの野田氏は「グルーポンはモノを買っているのではなく、エクスペリエンスを含めて買っているのでは?」と述べた。ソーシャルでの共有体験や成立するかを観察する体験を含めたものがグルーポンというサービスであるという。
そしてグルーポン内には「驚きをもったディールをいかにつくるか?」という部門がマーケティングの中にあることが紹介され、サプライズを生み続けることが大事であると語った。
グルーポンのソーシャルでのマーケティング力が注目されているが、そのためにはソーシャルというプラットフォームを活用することの大切さ、そして拡散していくための本質となるものをいかに生み出していくかに重要であるかが再認識させられるセッションとなった。