米国時間2010年9月19日、14回目となるOracle OpenWorld(OOW) SunFrancisco 2010が開幕した。今回は、Sun買収後初となるOOWで、OOWの他、「JavaOne 2010」「Oracle Develop 2010」と3カンファレンス同時開催となった。
41,000人の事前登録、100ヵ国以上からの参加
19日夕方に行われたオープニングキーノートでは、まずOracle CMO Judith Sim氏より、参加者情報について発表がされ、今回、100ヵ国以上、41,000人もの登録者があり、世界でも最大規模のカンファレンスであることが説明された。
次に、OOWを楽しむポイントとして、
- Travel Light
- Catch the Vision
- Breath
- Networking is Learning
- Go Shopping
- Get Social
- Chart Your Course
- Cool Stuff
の8項目が紹介された。たとえば「Travel Light」では、手軽にSchedule Builderや専用iPhoneアプリなど、効率的なプログラム管理をするためのサポートが行われている点が述べられたり、また、「Chart Your Course」では、今回のOOWでは、JavaOne/Oracle Developとともに、サンフランシスコの公道までをも会場にしたイベント設計が行われていることなどが紹介された。
この他、Twitterハッシュタグとして「#oow10」「#javaone10」「#develop10」が用意され、ソーシャルメディアを活用していること、また、OOWのパスを使うことでサンフランシスコ市内のショップで特別優待割引が行われることなど、街を上げての一大イベントであることがうかがえた。
最後に、Sim氏は「我々はSunのカスタマーを含め全世界に370,000もの顧客がいる。すべての顧客の皆さんに感謝の気持ちを述べたい」と締め括った。
HPが考えるソフトウェアライフサイクル
続いて、キーノートゲストスピーカーとして、Hewlett-Packard Exective Vice President, Enterprise Business, Ann Livermore氏が登壇した。
Livermore氏は「これまでのHPとOracleのパートナーシップの強さ」を強調した上で、「予算比率が、これまではオペレーション70、イノベーション30となっていた。今後、この比率を逆転するための取り組みを行っていく」と、現状のソフトウェア開発の課題とその取り組みについて述べた。その具体的な方法として、ソフトウェアライフサイクルというアプローチを取り、古いものをリタイアさせ、新しいものを作り、拡張していく、そのための手段が、「標準化」「シンプル化」「仮想化」「自動化」などを積極的に行っていくとのこと。
さらに、「サービスで囲む(サービスを利用する)ことで、データセンターおよびアプリケーションを近代化していく」という、今後のデータセンターの姿を紹介した。
この他、これらのコンセプトを実現する新製品として、
- Scale Out NAS:X9000 IBRIX
- Scale Out SANS:P4000 LEFTHAND
- Data Depulication:D2D 4312 STOREONCE
について発表された。
The Exalogic Elastic Cloud―Cloud in a box
次に、Oracle CEO, Larry Ellison氏が登壇。冒頭で、America's Cup(ヨットレース)の優勝報告を行い、参加者とともに改めてその喜びを分かち合った。
続いて、Oracleの今後の戦略について語り始めた。Ellison氏は「改めてクラウドとは何か?について考えてみたい」という自分、そして会場への問いかけとともにプレぜーションをスタートした。
現状、世の中で使われている「クラウド」というキーワードは、さまざまな形態があり、またその内容がまったく異なるとし、その一例として、Salesforce.comのForce.comおよびPaaSとAmazonのEC2とIaaSに関する説明を行った。Ellison氏は「このようにクラウドといっても、1つのアプリケーションで実現する形のものを指すこともあれば、プラットフォーム、環境自体を指す場合もある。Oracleが考えるクラウドは、Amazonが定義しているクラウドに近いものであり、プラットフォーム、そしてElastic(拡張性)、仮想化されたものと言えるだろう。さらに言えば、クラウドはパブリックなものだけではなく、ファイアウォールの内側、プライベートでも実現できるものであり、Oracleが目指すのはその形である」と、Oracleとして定義した「クラウド」を説明した。
その説明の後に、新製品となる「The Exalogic Elastic Cloud」を発表した。
Exalogic Elastic Cloudは、Oracleが提供するクラウドミドルウェア・マシン。ハードウェア+ソフトウェアの組み合わせにより、誰もが容易にクラウド環境の構築が実現できる。ハードウェア、ソフトウェアのイメージは以下のとおり。
Exalogic Elastic Cloudは、標準のアプリケーションサーバ構成に比べ10倍以上のパフォーマンスを実現するため、ソフトウェアは「Oracle Exalogic Elastic Cloud」マシンでI/Oファブリックを利用できるよう調整されているのが特徴である。
Ellison氏は、ハイパフォーマンス、柔軟な拡張性といったメリットを挙げながら「ミドルウェア・マシン(ボックス)の中にクラウドを構築し提供できるのはOracleだからこそ」と、Oracleならではの強みをアピールした。
具体的なメリットとしては、
- 最高のJavaパフォーマンス
- オンデマンドでのキャパシティ拡張性
- ミスに対するリカバリ、スケーラビリティ、セキュリティ
- メンテナンスの容易性
などが紹介された。
また、この分野で競合となるIBMとの比較については、コストパフォーマンスの観点から、Exalogic Elastic Cloudの優位点が紹介された。
最後に、Exalogic Elastic Cloudについて「伸縮性および仮想化パブリック&プライベートクラウドをミドルウェア・マシンで実現できることに加えて、標準的なハードウェアおよびソフトウェアを利用していること、その結果として、最高のパフォーマンスおよびコストパフォーマンスが実現できる」と、その強みを繰り返し紹介しまとめた。
Oracle Linux―The Unbreakable Enterprise Kernel
Exalogic Elastic Cloudの発表に続いて、そのOSとしても利用されているOracle Linuxのアップデートについて新発表が行われた。Oracle Linuxは、Red Hat Linuxと互換のLinuxで、今回の発表ではその核となる
The Unbreakable Enterprise Kernel
に関する発表がなされた。
Oracle Linux+The Unbreakable Enterprise Kernelにより、
- Oracleのハードウェア/ソフトウェアにとって最適なLinux
- Red Hat Linuxとの互換性については継続的に取り組む
- 容易なUnbreakable Enterprise Kernelへのアップグレード
こういった特徴から、さらにOracleが考えるLinux、それを包含するクラウドコンピューティングの実現が行われるとのこと。
Fusion Applications
プレゼンテーションの最後は、現在、Oracleが推進しているサービス対応のエンタープライズアプリケーション「Fusion Applications」が取り上げられた。Ellision氏は「詳しくは水曜日のキーノートで」という前置きをしつつも、Fusion Applicationsの概念、コンセプト、それによって実現できることについて時間をかけてじっくり紹介した。
詳細については、水曜日のプレゼンテーション発表と合わせて、gihyo.jpで紹介する。
Oracleの新しい一歩が見えた一日、Javaはどうなる?
以上で、初日のオープニングキーノートが終了した。
Exalogic Elastic Cloudの発表からもわかるように、今、Oracleが取り組んでいるクラウド、そしてミドルウェアについて明確なコンセプトが伝わってくる内容となった。合わせて、Oracle LinuxやFusion Applicationsなど、インフラレイヤやアプリケーション/サービスレイヤなど、その周辺の具体的な部分についても発表が行われるキーノートとなった。
気になるJavaについてはそれほど触れられなかったが、明日以降の発表に注目したい。