2日目の午後、JavaOneとしてのキーノートが開催された。スピーカーはOracle Executive Vice President, Thomas Kurian氏。Oracleが考えるJava、そしてJavaコミュニティに向けたOracleからのメッセージを聞くことができた。
JavaOneのロゴが約1年3ヵ月ぶりに戻ってきた。
Javaは重要なプロジェクト
Kurian氏は、Javaを重要なプロジェクトと位置付けて、その中でも現在具体的に進んでいる3つのプロジェクトを紹介した。
Project Coin:Productivity with More Concise Code
Project Lambda:Closures for Java
Project Jigsaw:The Modular Java Platform
メインスピーカーを務めたOracle Executive Vice President, Thomas Kurian氏。
Project Coin は、Genericsの改善など、生産性を上げるためにJavaの言語仕様を簡潔にするために進められているプロジェクト、Project Lambda は、JavaへのClosure実装に関するプロジェクト、Project Jigsaw はJavaプラットフォームにおけるモジュール化を実現するためのプロジェクトとなっている。今後のバージョンのJavaでは、これらのプロジェクトに関する機能が実装されていく予定。
OracleがリードするJRockit
プロジェクトに関して紹介した後、Oracleが開発する、サーバサイドに向けて独自に最適化したJVM「Oracle JRockit」の紹介、また、実際の実行例としてJRockit Flight Recorderのデモンストレーションが行われた。これはJVMの稼動情報(スレッド/メモリ使用状況など) )を常時記録して自動的にダンプファイルとして出力するもの。
JRockit Flight Recorderのデモンストレーション。
OpneJDKの今後
オーバービューとOracle JVMの紹介に続いて、気になるOpenJDKに関するアップデートを紹介した。既出ではある情報だが、改めて2011年と2012年にOpenJDKの新バージョンを2つリリースことが発表された。詳細については、詳細はOpenJDKの公式ページ で公開されている。
HTML5とネイティブアプリとしてのJava
続いて、「 HTML5そしてネイティブアプリにおける最良の体験をJavaから提供していく」という観点から発表が行われた。Kurian氏によれば、Webアプリケーションとして稼働させる上で重要なポイントとして
プログラミングモデル(JavaのパワーとJavaFXの容易さ)
ネイティブレベルでのJava、JavaScript&HTML5の互換性
すぐれたパフォーマンスの2Dおよび3Dエンジン
デスクトップおよびモバイルデバイスへのハードウェアに最適化した設計
完全かつ統合された開発ライフサイクル
を挙げ、JavaFXに関するアップデートへと繋げた。
Prism―JavaFXの新しいグラフィックエンジン
今回、JavaFXのアップデートで発表された中で、とくに気になったのが「Prism」と呼ばれる新しいグラフィックエンジン。新しくハードウェアアクセラレートされた2D/3Dのグラフィックパイプラインや簡単なプログラミング(エフェクトなど)が行えるもので、来年提供予定とのこと。なお、開発ビルドは現在ダウンロードサイトから入手できる。
JavaFXのデモ。レイヤごとにスムーズなレンダリングが行われている。
タッチパネルで操作できるゲームのデモンストレーション。これもJavaFXで開発されている。
今後のJavaFXのロードマップは以下サイトにアップデートされる。
・JavaFXロードマップ
http://javafx.com/roadmap/
NetBeans
次に取り上げられたのが、Java統合IDEのNetBeans。この6ヵ月でユーザ数が20%伸びている状況とともに、来年2011年に2つのバージョンをリリースと発表された。
・NetBeansロードマップ
http://netbeans.org/community/releases/roadmap.html
アプリケーションサーバとしてのJava
デスクトップ&ツールの話題に続き、サーバサイド側、つまりアプリケーションサーバとしてのJavaに関して説明が行われた。
アプリケーションサーバとしてのJavaについて説明するKurian氏。
JavaアプリケーションサーバGlassFishについては2011年に2つのリリースが行われるそうだ。
・GrassFishロードマップ
http://glassfish.dev.java.com/roadmap/
次のステップへ
さらに、Javaの次のステップとして「Javaアプリケーションはすべてのコンシューマデバイスで動く」と、モバイルおよび組込みに関する説明が行われ、Java Mobile.Nextの話題の他、すでにJavaが搭載されているAmazon KindleやJavaOne 2008でも紹介されたLiveScribe Penの紹介ビデオ、さらに実際に利用されているJavaカードの紹介が行われた。
すでに身の回りの至る所で利用され始めているJavaカード。
エンターテインメントのJava
最後に、エンターテインメント分野のJavaとして、Star Wars: The Old Republic というJavaゲームが登場した。このゲームサイトでは、GlassFishとCoherenceを組み合わせたシステムを開発して、1ノードあたり数万のトランザクションの認証などの処理を行っているとのこと。
まとめ
以上、デスクトップ、サーバサイド、モバイル、エンターテインメントなどさまざまな分野におけるJavaの現状と未来という構成で発表が行われた。一部既出情報などは含まれていたが、JavaFXの新しいグラフィックエンジンなど、気になる発表が見られた。
次回JavaOneについては、登録時に配布されたガイドブックにも紹介されていたが、米国開催が2011年10月2~6日となっており、その他、南米(2010年12月7~9日) 、北京(2010年12月13~16日)が予定されている。また、今後はロシアやインドなど世界各地で開催していくことも発表された。
今後のJavaOneスケジュール。
最後にゲストとして登場したApollo Anton Ohno氏。スケートショートトラックの選手だ
キーノート最後にKurian氏は「Javaの将来はOracleだけにあるものではない。デベロッパコミュニティのための言語だ」と、これからもコミュニティドリブンでJavaを開発していく意向を示し、発表を終えた。