6月9日、10日の2日間、PyCon Taiwan 2012 が開催されました。日本から も数人のPythonistaが参加してきたので、数回に分けてレポートします。
PyCon Taiwanに行こう!
Python Conference(PyCon) は世界中で開催されています。PyCon Taiwan はそのうちのひとつで、2012年に初めて開催されました。日本では2回目となるPyCon JP 2012 が9月中旬に開催さる予定で、現在講演内容を募集中 です。
PyCon Taiwan 2012の開催概要は次の内容でした。
昨年開催されたPyCon JP 2011に台湾から2人のスピーカーが参加してくれたということや、台湾で初めて開催されるPyConを応援したいという気持ちもあり、日本からPyCon JPのスタッフを中心に9名 の日本人が参加しました。最初は4人ほどでしたが、あれよあれよと参加者が増えて大所帯になりました。
PyCon Taiwan参加メンバー
PyCon Taiwanへの参加費用
PyCon Taiwanへ参加するためにかかった費用は次の通りです。実際には3泊する人や違う航空会社を使った人などもいましたが、一番多い旅程はこんな感じでした。
China Air
項目 金額(円)
PyCon Taiwan参加費用(早期申込割引):1,300TWD 3,454
往復航空券(空港税、サーチャージ等含む) 43,740
ホテル宿泊費(2泊) 8,817
合計 57,115
これ以外に食費や現地での移動費(MRT:台北の地下鉄、タクシー等)がかかりますが、総じて物価が安いため、3、4日であればぜいたくしなければ1万円くらいの現金で余裕で過ごすことができます。
また飛行機は羽田空港~松山空港を選びましたが、どちらも中心部からのアクセスが(成田、桃園に比べて)よく、さらに羽田空港の国際線ターミナルは空いていたため移動は快適でした。
以下、記事担当の3人がそれぞれ、どのように0日目(PyCon Taiwan前日)を過ごしたかをレポートします。
Mozilla Taiwan訪問
もりもとです。午後から寺田さんの知人でありMozilla Taiwan でコミュニティマネージャーを務めるBob Chao氏を訪問しました。そこではPyCon JP 2011に発表者として参加したThinker Lee氏 も働いていました。Mozilla Taiwanは、2011年10月19日に設立されたばかりで、現在は開発者が25人、その他のスタッフが10人といった35人程度の組織のようです。
Thinker Lee氏(左)とBob Chao氏(右)
オフィスの休憩スペースでお互いの自己紹介を始め、それから1時間程度、ざっくばらんに歓談しました。最初のうちは、双方ぎこちなかったものの、そこは開発者ならでは、スマートフォンを取り出して彼らの開発しているBoot to Gecko(B2G) のデモを見せてもらい、話題に欠くことなく盛り上がりました。
B2Gは、レンダリングエンジンGeckoを使ったブラウザベースのOSで、アプリケーションをHTML、CSS、JavaScriptで開発できるのが特徴です。実際に実機で紹介してもらったアプリは、WebGLのサンプル、電話をかける、カメラでの撮影、動画再生でした。JavaScript、HTMLなど既存のウェブアプリケーションの技術をそのまま応用できるのが良いと思いました。
後述しますが、その日のディナーも彼らと一緒に楽しみました。急な訪問にも関わらず、暖かく迎えて頂いたBob Chao氏とThinker Lee氏に感謝します。
Mozilla Taiwanでの集合写真
NVDA関連ミーティング
西本です。 私はチャイナエアラインで広島空港を出発、台北の桃園国際空港に到着しました。 一人で台北市内に移動、そして東京組のメンバー(寺田さん)と合流しました。
初日の私の活動はTaiwan Digital Talking Books Association の訪問です。事務所は若者ファッションの街である西門町からすこし歩いた場所にありました。道路の名前と番地を頼りに歩き、近くの病院の人に教えていただいて、ビルの5階のオフィスにたどり着きました。理事長さんとスタッフの皆様から、私たちは温かい歓迎を受けました。
Taiwan Digital Talking Books Association(TDTB)は、視覚に障害のある方々の教育や就労を支援する非営利組織です。DAISY(オーディオブックの世界標準規格)の書籍を制作したり、コンピューターを合成音声で操作する方法を教えたりしています。そして、オープンソースのスクリーンリーダーNVDA(NonVisual Desktop Access) の、台湾におけるコミュニティの拠点でもあります。オフィスにはパソコンがずらりと並んでいました。すでに100人以上がここでNVDAのトレーニングを受けたそうです。
NVDAはPythonとC++で実装され、GPL v2でライセンスされているWindows対応のスクリーンリーダーです。オーストラリア在住の開発者を中心に精力的に開発が進められており、非営利組織NV Access が、企業や利用者から寄付を集めて、活動を支えています。高価な商用のスクリーンリーダに匹敵する性能があり、世界的にシェアを伸ばしています。NVDAの国際化を支える翻訳ボランティアも世界で活動しており、現在は約40の言語に対応しています。
しかし日本語や中国語など、東アジア言語圏において、NVDAは実用的とは言えませんでした。標準の音声合成エンジンがこれらの言語に対応しておらず、また、かな漢字変換などマルチバイトの文字入力をサポートしていなかったからです。 日本ではNVDA日本語チーム が、日本語の音声合成やかな漢字変換の読み上げ機能を追加した派生版をリリースしています。点字ディスプレイとよばれる装置に日本語の点字を出力する作業にも取り組んでいます。 一方NV Accessからは、台湾TDTBなどと協力して中国語対応を強化するという発表 がつい先日ありました。このプロジェクトについて詳しく話を伺い、どのように日本から貢献をすればよいのか、意見交換をしたいと考えました。
NVDA関連ミーティングの様子
まず中国語対応の方針について教えていただきました。台湾では中国語の繁体字が使われます。この文字をどのように入力しているのでしょう? 台湾で使われているキーボードをみると、アルファベットに加えて、ひとつのキートップに3種類もの漢字や記号が書かれています。台湾では使われている文字入力方式は、日本のかな漢字変換のように、文字の発音を入力して変換をする方式と、文字の形を入力する方式が、いずれも複数あり、入力方式が統一されていないようです。
では、スクリーンリーダーで使うときはどのような方法なのでしょうか? 見せていただいたのは嘸蝦米 というソフトウェアでした。これは文字の形と意味と発音をすべて使って、ひとつの漢字をアルファベット2文字から3文字で直接入力してしまうというものです。例えば「本」は t e j で入力するのですが、最初の t は「本」という文字を構成している「木」つまり tree の t なのだそうです。すべての漢字を覚えるのはとても大変だと思うのですが、覚えてしまえば「候補選択」が必要ないため、スクリーンリーダーで扱いやすいのだそうです。この「嘸蝦米」を音声で使えるようにすることがNVDAの開発の目標だと伺いました。ちなみに「嘸蝦米」は、もともとスクリーンリーダー利用者のためのソフトではなく、入力効率にこだわる上級者御用達のIME(Input Method Editor)として販売されている製品だそうです。
私は、日本の音声合成エンジンや点字ディスプレイ対応の説明をしました。中国語対応の参考にしたいというだけでなく、台湾でNVDA日本語版を使って日本語の勉強をしたい人がいるのです。 同じ漢字を使う言語ではあるものの、日本語の説明は簡単ではありません。なぜひとつの漢字にいろいろな読み方があるのか、どう読み方を使い分けるのか、スクリーンリーダー利用者は読みの同じ文字をどうやって区別するのか。 テキストを点字ディスプレイに送るための変換(点訳)についても、世界で使われているオープンソースのライブラリが日本語をうまく処理できません。多くの言語では文字と点字が一対一に対応しているのですが、日本語の点訳は複雑です。例えば「東京に行く」を「トーキョーニ イク」のような「読み」に変換し、適切に空白を入れて区切らなくてはなりません。
NVDAの日本語・中国語の対応を協力して進めていくために、このような情報交換の機会をもっと作りましょう、という提案を受けるとともに、私もぜひ日本にも来ていただけませんか、と提案しました。日本でのNVDA開発者イベントの実現に向けて、今回の私の訪問は大きな一歩でした。
また、NVDA日本語版を使って日本語を勉強をしたいという視覚障害の女性を紹介してだきました。「 日本のアニメが好き」というので、どんなアニメを知っているのか聞いてみたら、まず「ケロケロケロ」 。何かと思ったら(同伴のお姉さんの代筆で)「 軍曹」という文字。どうやら「ケロロ軍曹」のようです。他には?と尋ねると「小丸子」という文字。これもすぐに分からなくて困っていたら「櫻桃」という文字が書き足されました。「 さくらももこ」といえば「ちびまる子ちゃん」ですね。 台湾の人たちの、日本の文化への関心の高さに改めて驚き、嬉しく思ったのでした。
台湾レポート
鈴木たかのりです。ちなみに私は台湾に訪れるのは初めてでした。
朝早く起きる(他のメンバーは6時羽田集合!!)のがいやだったので、別行動で台北に向かいました。羽田空港の新国際ターミナルは非常にきれいで、出発ロビーの上の階には「江戸小路(えどこうじ) 」なる小さなショッピングスペースがあります。ここには手ぬぐい、風呂敷など日本ならでは商品が多く扱ってあり、海外から訪れた人も喜びそうです。
江戸小路
私が乗った機体には座席のモニターの横にUSBポートがついていました(初めて見ました) 。試しにNexus Sをつないでみると充電がされ、台北に到着する頃には満充電の状態になりました。私は試せませんでしたが、iPhoneを接続してその中の音楽を聞いたりすることができるようです。便利な世の中になったものです。
後日調べてみたら全席に電源がついて いたようです。とくにMacのバッテリーには困りませんでしたが、次回乗ることがあったら有効に使ってみようと思います。
座席のUSBポート
空港に到着したら最初にすることは両替もありますが、通信環境の確保も大事です。松山空港内には中華電信の窓口があり、ここで台湾で使えるSIMカードを購入することができます。ここではデータ通信専用のSIMを3日250TWDで購入しました。ちなみに初日分はサービスとなっており、購入した日の3日後の23:59まで通信できるので非常にお得です。店員さんも手慣れたもので、スムーズに通信確認ができました。SIMフリーの端末を持っている人にはおすすめです。
短期間データ通信プラン
SIMを無事購入したのでホテルに移動します。台湾はタクシーも安いのでそれでもよいのですが、私は旅先の公共交通機関で移動するのが好きなので、MRTで移動します。台北市内のMRT、鉄道、バスで使用できるEasyCard というSuicaと同じようなプリペイドカードを入手して、無事ホテルまで移動しました。
ただし、駅で入手できるEasyCardは500TWD(デポジット100TWD含む)という料金になっており、普通に移動しているだけではなかなか使いきれません。EasyCardはコンビニやスーパー等でも使用できるため、買い物をしてチャージした金額を減らすことをおすすめします。実際私も全然使いきれませんでした。
Easy Card
ホテル に無事到着し、Mozilla Taiwan や寺田さんの台湾の友達も交えてのディナーに向かいます。お店は定番の鼎泰豊(ディンタイフォン) です。本店は狭くてだいぶ待つらしいので支店の忠考店へ。定番の小籠包をはじめ前菜、チャーハン、スープなど、どの料理もとてもおいしく、日本語、英語、中国語が飛び交う楽しい時間を過ごしました。
うまうまの小籠包
鼎泰豊でのディナー
ディナーを食べた後何人かで士林夜市に繰り出しました。台湾には夜市(ナイトマーケット)という露天が軒をつらねた祭りの出店のようなものが、毎日開催されています。台北周辺でいくつかある夜市のうちでも最も規模が大きいものがこの「士林夜市」です。食べ物の屋台だけでなく、射的やスマートボールのようなゲーム、洋服や靴が売っていたりとまさになんでもありです。
士林夜市(ナイト・マーケット)
ビールのカーリングのようなゲーム
食後のデザートが食べたいなということで、士林夜市の中にある地元の方おすすめのかき氷屋さんに連れて行ってもらいました。ここのかき氷(雪片氷)には氷自体にマンゴー・ミルクなどの味がついていて、しかもふわふわで非常においしかったです。地元の人のおすすめはハズレがないですね。
私以外のメンバーは昼のMozilla Taiwan訪問後にもマンゴーのかき氷を食べた そうですが、グルメ担当の文殊堂曰く「全く別のもの」ということで、士林夜市に来て大正解でした。
マンゴーのかき氷
士林夜市を楽しんだ後はMRTに乗ってホテルに戻り、0日目が終了しました。明日からいよいよPyCon Taiwan 2012が開幕します。
私が0日目に使ったお金は次のようになります。
項目 金額(TWD) 日本円
空港で両替(1TWD=約2.726円) 3,698 10,000
SIMカード(3日間データ) 250 681.57
EasyCard 500 1,363.14
お茶(ペットボトル) 25 68.16
鼎泰豊ディナー 台湾メンバーにおごってもらったので不明
屋台のフルーツ盛り合わせ 200 545.26
かき氷 60 163.58
お茶(ペットボトル) 25 68.16
残金 2,608 7,110.14
[PyCon Taiwan 2012初日のレポートに続きます。]