組込み製品開発の多機能化、短期開発によって、現在、組込みソフトウェア開発では、生産性や品質の向上とともに、新規技術や人材確保などの課題がある。このような状況の中、マイクロソフト(株)は、組込みソフトウェア技術者に向けた「ソフトウェアファクトリ」の普及啓発活動の一環として、2007年12月14日に一泊二日の「Software Factories Boot Camp」を開催した。
ソフトウェアファクトリは、ソフトウェアプロダクトラインの一種で、定まった仕様に基づくテンプレートを用いたツール群を構成することで、開発や保守作業の自動化を行うものである。また、マイクロソフトが2004年に発表したソフトウェア開発の進化に向けたビジョンでもある。
今回のブートキャンプは、
- 組込みシステムにおけるソフトウェア開発の生産性、品質向上への寄与
- 日本の産業を担う組込み技術者の付加価値向上への寄与
を目的に、マイクロソフトのエンベデッドエバンジェリストである太田寛氏の呼びかけに33名が集まった。
具体的な活動として、ETソフトウェアデザインロボットコンテスト「ETロボコン」での開発プロセスをソフトウェアファクトリ化することによって、モデル駆動型開発を実践していくという。それにちなんで、開催場所もETロボコンのモデル審査合宿[1]が行われる「まほろば・マインズ三浦」(神奈川県三浦市)で開催された。
初日(基本プログラム)
全員が集合し、開催の挨拶や連絡事項説明のあと、いよいよ過密スケジュールのブートキャンプがスタートした。
最初の「Software Factories概論」は、ソフトウェアファクトリとは何か? から触れられる講義である。また、タイトルを英語表記で複数形にしているのは、戦略的な再利用の「ソフトウェアプロダクトライン」、成果物やノウハウの見える化を自動生成・変換する「モデル駆動型開発」、アーキテクチャを見える化する「アーキテクチャフレームワーク」、開発作業を支援する「文脈によるガイダンス」の4点が含まれるため。
続く「モデル駆動型開発概論(DSL)」では、DSL(Domain Specific Language)についての解説があった。これは大きな問題を小さな問題に変え、問題を効率的に表現する言語を見つけ、問題を解決する最終的な環境に言語の表現を結びつけるもので、参加者は興味深く聞き入っていた。
これで初日に予定された基本プログラムは終了したが、夕食後には事務局部屋に参加者が集まり、遅くまでモデル駆動型開発についてディスカッションが行われた。
2日目(応用プログラム/最終プログラム)
初日に引き続いて「モデル駆動型開発概論(変換)」が、朝の9時から開始された。さらに「Visual Studio開発環境カスタマイズ方法」「ガイダンスオートメーション概論」など、開発環境であるVisual Studioをベースとした解説が続いた。参加者はVisual Studioを操作するのが久しぶり、または初めてだったりすることもあって「ここまでできるようになったのか、できるのか」という感想が聞かれたのは印象的だった。
昼食をはさんで、最後に今回のブートキャンプをキックオフと位置づける、ETロボコンに向けた「モデル駆動型開発を極めよう団(仮称)」のスケジュールと担当決めが行われた。
今回は2日間で8時間の講習を受けるという超過密日程にもかかわらず、Visual Studioなどを実際に操作しながらの内容だったため、参加者はそれぞれに深い理解が得られたのではないだろうか。
今後は2008年の4月をメドに、太田氏を中心として、走行体となるPathFinderを実際に動かせるプログラムを開発できる環境の構築とその結果をホワイトペーパー化することを目指すという。結果やその後の活動内容については、『組込みプレス』でも取り上げて行く予定だ。