現地時間7月3日、ツアー一行はサンノゼ、シリコンバレーまで足を運び、現地企業の視察を行いました。
仮想化技術のトッププレーヤ―VMware
最初に訪問したのは、VMware, Inc.です。同社は、Hypervisorを利用した仮想化製品の開発・販売を行うなど、仮想化技術に関して世界トップクラスのIT企業です。2007年8月のIPO後、勢いはさらに増し、成長し続けています。
エコロジーを意識したオフィス
VMwareの本社は、San Joseの北西、Palo Altoにあります。現在のオフィスは、1年前に世界的に有名な建築家William McDonough氏によって設計・建築されました。“環境に優しいこと”を意識しており、水を再利用したり、オフィ内の家具はリサイクル資材のものが使われています。また、“森の中の会社”というコンセプトのとおり、キャンパス※内にはたくさんの緑が目に入ります。
このPalo Altoオフィスは、世界40ヵ所以上あるオフィスのヘッドクオーター、つまり、中心となる場所です。
※:シリコンバレーの企業では、オフィスの広い敷地を、学校になぞらえてキャンパスと表現します。
FORTUNE 100の企業すべてがクライアントとなり、今もなお成長を続ける
今回の企業訪問では、まず、同社Product Management&MarketingのWarren Wu氏による企業紹介が行われました。
まずはじめに企業概要が行われ、10万以上の顧客企業がいること、そしてアメリカ国内におけるFORTUNE 100(『FORTUNE』誌が行った最も優秀な人々を惹き付ける企業トップ100社)の企業すべてがクライアントであることを紹介しました。
また、Pacific Crest Securitiesの調査によれば、この3年間で10番目に大きくなったエンタープライズソフトウェア企業で、2005年から2007年の3年間、3億8,700万ドル、7億400万ドル、13億2,600万ドルと毎年50%以上の成長を遂げています。
仮想化を通じてコンピューティングを変える
さらに、同社のビジョンとして「仮想化を通じてコンピューティングを変える」ことが掲げられ、単なる仮想化技術製品のベンダではないことが強調されました。
現在、全世界で約6,000名の社員がおり、大学100校と提携しながら、今後の技術開発を担うトップタレントを採用し続けているそうです。
VMwareが目指すゴール―クラウドコンピューティングへの技術貢献
VMwareが考える仮想化IT環境の進化
続いて、VMwareの技術およびVMwareが考える仮想化IT環境の進化について解説されました。
VMwareでは、仮想化技術の進化について以下の5つのフェーズに分けて考えています。
- Separate:テストと開発環境として
- Consolidate:サーバ強化
- Aggregate:オンデマンド能力
- Automate:自己管理データセンター
- Liberate:ON/OFF環境でのクラウドコンピューティング
そして、現在はAggregateとAutomateのフェーズにいること、それを実現する技術として、VMotionについて解説されました。これは、ダウンタイムなしで仮想マシンを移行するための技術で、サーバのメンテナンスや突発的な障害時に有効なものです。
その他、サーバのプロセッサやメモリ、ストレージ、そしてネットワークリソースを複数の仮想マシンに割り当ててデータ基盤を形成するためのVMware ESXと、同様の機能をディスク占有量32Mバイトに落とし込んだVMware ESXiについて紹介されました。
Wu氏は、これらの解説をしながら、VMwareの技術により、資産投資および運用投資の額を下げながら、同等の投資額以上の成果をもたらすことが可能と述べました。また「VMwareを利用したサーバ環境構築・管理を実現することで、サーバ管理者1人あたりで管理できる物理的サーバ台数が30台から600台まで増やすことも可能です」と、VMware導入・利用のメリットについて紹介しました。
デスクトップ環境への取り組み強化―VDI
これまで、サーバ側の仮想化技術の取り組みと解説が行われましたが、今後のVMwareの方向性として、デスクトップ環境への取り組みも今まで以上に注力していくそうです。中でも、中核をなす技術がVirtual Desktop Infrastructure(VDI)です。
VDIは、同社の仮想化プラットフォームをベースに開発されている技術で、ユーザ向けデスクトップ環境を一括で管理しながらも、ユーザには通常のデスクトップと同じ環境を提供することができる技術となっています。これにより、エンタープライズクラスの制御および管理性が実現します。
さらに、同氏はこれからのVDIの取り組みとして「現在のVDIは、フルタイムオンラインが求められます。しかし、今後はオンラインだけではなく、オフライン時にもVDIを利用できる“オフラインVDI”を提供していく予定です。こ技術が実現すると、ユーザは状況に応じてサーバからVDIを自分のPCに保存し、その状態をサーバ非接続時にも実現可能となります。また、オフライン利用時の変更については、再度サーバに接続した際に同期を取れるような仕組みとします。現在すでに開発が行われており、近い将来提供できる予定です」とコメントしました。
また、同氏は「ノートPC以外にも、携帯電話やデジタルカメラなど小型デバイスにVMwareの仮想化技術が搭載される日も来るのではないでしょうか」とさらなる仮想化技術の進歩に大きな自信を持っていました。
VMwareが考えるクラウドコンピューティング
さて、前掲写真4で紹介した5つのフェーズ、最後のフェーズがクラウドコンピューティングへの取り組みです。まず、クラウドコンピューティングの最大の目的を「目の前にあるリソースを、ユーザのニーズや場所に合わせて有効に、フレキシブルに利用すること」と定義したうえで、VMwareの仮想化技術を利用することで、リソースの分割活用、負荷分散が実現できると述べました。
ただし、VMwareとしては、現在すでにクラウドコンピューティングサービスを提供しているAmazonなどのネット企業のようなプロバイダを目指すのではなく、そうしたプロバイダに向けてクラウドコンピューティングを実現するための技術を提供していくことを目指しているそうです。
実環境を利用したデモンストレーション
Wu氏のプレゼンテーションの後、ISV Solution EngineerのDesmond Chan氏による、データセンターを利用したデモンストレーションが行われました。今回行われたのは、
- VMotion
- DRS(Distributed Resource Scheduler )
- HA(High Availability)
の3種類のデモ。同社オフィスにあるデータセンターマシンを使い、それぞれのデモをツアー参加者の目の前で行ってくれました。
これからも目が離せない仮想化技術
以上、VMwareという企業、そして同社の中核を担う仮想化技術について紹介していただきました。仮想化技術は現在も進化し続け、これからのコンピューティングにおいて非常に重要な役割を担うと考えられています。
これからのVMware, Inc.の動向に注目しましょう。
最後に、途中から同社吉澤剛氏が参加してくれました。吉澤氏は、今年1月からVMware, Inc.に入社し、現在はEXSのアップデートやパッチリリースなどをおもな業務としているそうです。
元々、会社を立ち上げていてからシリコンバレーで働くようになったとのことですが、「自分で会社を運営していたときも自由でしたが、ここはそれよりも本当に自由です。自分のやりたいことを行う環境が整っていますね。エンジニアとして一番大事なのは、成果を出すことで、言い換えれば成果を出せば何でもできる風土があると思います」と、実際にシリコンバレーで働いている感想を述べてくれました。