福岡を拠点に展開する施策を考えているそうです。
また、前身から数えて設立17年目を迎えるGMOペパボは、現在の本社は東京にあるものの、福岡自体の規模も大きく、また、ホスティング事業を中心に、同社の中核をなす拠点として活動が続けられています。同社はとくに「おもしろさ」を大事にしている企業で、おもしろさからを創造の起点にすることの強みなどを、自社のサービスに合わせながら紹介してくれました。また、同社取締役福岡支社長 永椎宏典氏は、ずっと福岡で育ってきた背景から「福岡への愛着」という観点で福岡の良さを高校生たちに伝えてくれました。
同じく、福岡で起業し、今では日本国内(福岡・東京・京都)に加えて、アメリカ(NYC)、オランダ(アムステルダム)、シンガポールの3ヵ国にも拠点を持つヌーラボは、前述のイベント明星和楽の発起人の1人でもる代表取締役の橋本正徳氏が、暮らし続けているからこそわかる福岡の良さについて、また、スモールスタートからの世界展開の実践について、紹介してくれました。
また、今回のフィールドワークでは、ヌーラボオフィスにあるセミナールームとカフェを会場として提供していただき、受講生たちは講義を聞いたり、グループワークを行ったりと、フィールドワークの拠点として活用させていただきました。
そして、企業ではなく施設として2017年4月にオープンした官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」では、ブランコ株式会社代表取締役CEO/CCOの山田泰弘氏が、施設立ち上げの背景と、現在、施設ん準備されているスタートアップ支援の仕組み、また、運営されているカフェやスペースについて紹介してくれました。
非常に短い時間で、さまざまな場所を訪問することで、受講生たちは福岡のスタートアップの現在を、少なからず感じられたのではないかと思います。
また、これはどの企業・施設に訪れても異口同音で話してもらったことで、「福岡は都市としてコンパクトで、(物理的な)距離が近いことがスタートアップに向いている特徴の1つ」ということです。
たしかに、人と人との距離が近いことで、さまざまなコミュニケーションが短期間で生まれ、そのコミュニケーションから、今までにない何かを生み出す可能性が高いのかもしれません。
AIが変えるクリエイティブの世界~Adobe Senseiが目指すこと
また、今回の福岡フィールドワークには、サーティフィケート企業であるアドビ システムズ株式会社より、Creative Cloudエバンジェリスト仲尾毅氏が同行し、現地でのプレゼンテーション資料制作のほか、クリエイティブの観点から講義を行ってくれました。
今回、スタートアップ都市福岡という場をふまえ、これからの、とくにITを活用するスタートアップにとっては避けて通れない技術の1つAIについて、同社が現在開発を進める「Adobe Sensei」を題材に、AIがなかったときでのクリエイティブとAIが進化してからのクリエイティブについて解説してもらいました。
仲尾氏自身がこれまで体験してきたクリエイティブの世界について、ツールの進化をふまえながら講義が進みました。
後半では、現在、プロトタイプとして開発されているAdobe Senseiを組み込んだレタッチソフト「Photoshop」のデモが行われ、その内容に、受講生が皆、驚いていました。
ここで紹介されたのは、仲尾氏自身が、デザイナーの役割として1つのクリエイティブ(架空の映画チラシ)を作るというもの。デモ中、Photoshopが、仲尾氏の操作を学習することで、利用者(ここでは仲尾氏)が目指すであろう、クリエイティブのサンプルを生み出していくのです。
加えて、このプロトタイプでは、ルールによる制御も高機能化しており、一般的にルールに従ったパターン出しが増えることが多い制作業務において、作業そのものが簡略化できるようになるのです。
仲尾氏はこうしたツールの進化の先にあるのはただ業務が楽になるだけではない、とし、
「今、皆さんにご覧いただいたように、AIの進化はクリエイティブ作業にも大きな影響を与えます。初めて見る皆さんにとっては、楽になって便利!と思うかもしれません。もちろんそのような効果はありますが、AIによるクリエイティブ制作のサポートは、楽になったことによる時間的余裕、つまり、何を創るか、生み出すかに、今まで以上に時間を割けるようになるということです。
これが意味することは、創作活動に今まで以上に注力できることでもあり、逆の味方をすれば、何かを生み出すことが求められる、これからのAI時代には、今まで以上に0→1を生み出す能力が必須になるということです」
と、AI時代のクリエイティブ制作の1つの指針を提示してくれたのが印象的でした。
福岡という場所で、実際にスタートアップとして活躍する企業、また、それを支える人や施設、さらに、クリエイティブとクリエイティブツールの役割など、今回のプログラムで感じ取ってもらいたいことを、まとめて体験してもらった2泊3日のフィールドワークとなりました。
スーパーITプログラム2018最終プレゼンテーションとこれからのICT利活用
初日の講義、3日間の福岡フィールドワーク、また、今回は割愛しましたがプレゼンテーション実践に関する講義を終え、2018年8月25日に受講生たちは最終プレゼンテーションを行いました。
今回、筆者が最終プレゼンテーションに設定したテーマは「ICT活用で日本を変える~東京オリンピック、そのあとに」でした。非常に大きなテーマで、受講生である高校生にとっては手に余るものだったかもしれません。ただ、このテーマに込めた想いは、今、多くの大人たちは東京オリンピックを1つのゴールとして、積極的に行動し、取り組んでいますが、東京オリンピック後にも、日本の社会は続きます。
そこで主役となるのが、今の学生であり、若い方たちです。その意識を少しでも持って、当事者として何かを考えるきっかけを作ってほしいと願い、この設定にしました。
また、最終プレゼンテーションでは、筆者に加えて、筆者も参加しているWebコミュニティWebSig24/7の代表でもあり、インテリジェントネット株式会社代表取締役社長 和田嘉弘氏、そして、早稲田塾スタッフを審査員に迎え、全5チームによる発表が行われました。
詳細については割愛しますが、どのチームも、福岡で感じた東京都の違い(良い点・悪い点)、とくに、福岡がなぜスタートアップと相性が良いのかというあたりをふまえながら、福岡を東京に置き換え、スタートアップブームをオリンピックとしたときに、見つかった課題を解決するためのアイデアをまとめたものが多くありました。
そして、最優秀プレゼン賞を受賞したチームが選んだテーマは「民泊」でした。民泊については、すでに多くのメディアで取り上げられ、現在も、法整備や環境整備を含め、日本国内でも進行している産業の1つです。
受賞したチームは、民泊をより良いものにしたいというアイデアを、自分たちの目線で盛り込んだ点、そして、Adobe XDを活用したことで、いわゆるページモノの資料だけではなく、自分たちが考えたアプリのモックをプレゼンの中に盛り込むことで、立体的なプレゼンテーションを実施した点が、審査員間に評価され、受賞となりました。
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以上、2回にわたり、早稲田塾スーパーITプログラム2018の様子をお届けしました。
今回で4回目となる本プログラムでは、スタートアップ、そして、2020年以降を題材に、高校生たちがどのようにICTを利活用し、自分たちの社会をつくっていくか、について、自分ごととして考えられる講義を準備しました。
本プログラムでは一貫して「ITリテラシーを身に付ける」というテーマを設定しているのですが、筆者はこの「ITリテラシー」は、時代時代によって変わるものであり、その変化や進化に合わせて、どのように考えていくのか、行動していくのか、このプログラムを通じてきっかけを掴んでもらえたらと願っています。