「ソフトウェアテストセミナー」レポート

セッション5 エンジニアがテストエンジニアを選択しない理由 ~テストエンジニアのキャリアとテストエンジニアを採用する方法

セッション5は入江直樹氏(⁠⁠株)パソナテック)による「エンジニアがテストエンジニアを選択しない理由 ~テストエンジニアのキャリアとテストエンジニアを採用する方法」という, いささかショッキングなタイトルの講演です。人材派遣会社としての視点からテストエンジニアが抱える問題と将来性について, 興味深い話が繰り広げられました。

入江直樹氏(Photo:蝦名悟)
入江直樹氏(Photo:蝦名悟)

テストエンジニアは極度の不足

ソフトウェアの複雑化・高度化・開発短縮化・分業化によってソフトウェアの品質に対するか大意識が高まり, テスティングやテスト設計, 品質マネジメントなど品質領域関連の求人が増加しています。品質の一翼を担う評価・検証は重要な仕事であり, やりがいや勝ち制も高いのですが, 人材は非常に不足しています。

なぜ, テストや品質領域のエンジニアが不足しているのか。企業にとってエンジニアを確保するには, どのようなメッセージがポイントになるのか。テストや品質領域での活躍を考えているエンジニアにとって, キャリアとしてどのくらい魅力的な領域なのか。

今回は, これらの点についてお話しします。

テストエンジニアへの正当な評価が必要

実際の動向を見ると, テスティング領域の求人は年々増加しています。その内容も2006年前後は携帯電話のテストなど「検査」に近い求人が多数を占めていましたが, 現在は製品機能テストやビジネスシステム検証, Webページ検証など, 求人内容は「製品」から品質へと高度化しています。

一方, エンジニアの傾向はテスト志向ではありません。経済産業省の調査によると, これまでに就いた職種ではテストエンジニアが最多なのに, 今後就きたい職種ではプロジェクトマネージャやQAスペシャリストが高く, テストエンジニアは非常に低くなっています。

当社のITエンジニア登録者のうち10%前後は何らかのテスト作業を経験しているのですが, 残念ながら求人に応えられる状況とはなっていません。これは, ⁠テスト=検査」という人材が多いスキルのミスマッチ, ⁠つまらない」⁠将来性がわからない」などの理由で開発系のエンジニアが希望しないこと, また専門職としての経験者の希少さが原因です。

ソフトウェアの品質向上には「人」に依存する要素が多く, テストエンジニアを専門職として認める, すなわちきちんと評価することが重要です。求人側にとっては, テストエンジニアを認めることが品質重視の姿勢を表し顧客およびエンジニアの双方からの信頼を獲得でき, 競争力につながります。エンジニアにとっては, 品質を体現できることが自身の市場価値となります。

テストエンジニアを確保するポイント

求人側にとって, テストエンジニアを確保するためには何が必要なのでしょうか。その答えを導き出すため, ITエンジニアの意識調査を見てみましょう。

仕事環境の満足度は全体的に低く, 特に「正当な評価と待遇」への強い不満が見られます。ITスキルアップに関しては, ⁠幅広いプロジェクトに参加して, 専門性を磨き自分の可能性を試したい」との傾向が現れています。会社やオフィスについては, リスペクトできる上司の存在やプロジェクトにおけるチームワークの重視度が最も高く現状に不満を感じており, 会社の規模や知名度ではなく職場の人間関係を重要視しているといえます。

つまり, エンジニアの価値観に応えるなら, ⁠正当な評価と待遇を得たい」⁠専門性を磨きたい」⁠一緒に働く『人』重視」といった要件を満たすことが必要なのです。

テストエンジニアのキャリア展望

これからのシステム開発や製品開発では, 要件定義や仕様作成といった「入口」と, 品質保証という「出口」の重要性が高まります。入口の正解は1つではなく, 出口の正当性は誰にも判らないのが現状であり, 今後は未知・不可視・不確実な要素を「わかるように」⁠見えるように」⁠確実なものに」してくれる役割を担える人が求められます。

良い成長のためには良い経験が必要であり, 会社・事業の性格と業務の性格を掛け合わせたものが経験の性格(質)になります。半面でテストエンジニアとして良くない経験の場も多々存在し, 自らを高めるキャリアパスの選択が重要になるでしょう。

まとめ

最後に, 当社のテストエンジニアに関する取り組みをご紹介しましょう。

テストエンジニアについてはITSS(ITスキル標準)などを参考にITプロフェッショナルのために体系化したフレームワークを定義しており, 役割として認定しています。エンジニアへの啓蒙・啓発施策として, gihyo.jpでのコンテンツプロモーションや無料セミナー/スキルアップ/トレーニングの開催などを実施しています。また倒立二輪ロボットを題材とするV字プロセス学習トレーニングを通じ, エンジニアの育成支援にも注力しています。

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