WordCamp Kyoto 2009 最速レポート

WordCamp Kyoto 2009開催:ビジネスDayレポート

2009年10月16、17日、日本では3回目、関西地区では初となるWordPressに特化したカンファレンス「WordCamp Kyoto」が開催される。ここでは、その模様についてお届けする。

会場となった京都リサーチパーク
会場となった京都リサーチパーク
WordCamp Kyoto 2009受付
WordCamp Kyoto 2009受付

WordPress関係者、参加者同士による名刺交換

初日は、京都リサーチパーク西地区4号館にて「ビジネスDay」が開催された。ビジネスと付いているように、WordPressをビジネスに活用する視点から、プラグインの開発者・提供者によるプレゼンテーションが行われた。

開催に先立ち、ビジネスDayの司会を務めた株式会社デジタルキューブ大串肇氏による開催の挨拶が行われ、⁠ビジネスを広げるためにも周りの方達と名刺交換をしてください」と、参加者同士による名刺交換の時間が設けられた。

名刺交換をする参加者
名刺交換をする参加者

WordPress/Automattic創始者マット・マレンウェッグ氏からのビデオメッセージ

オープニングは、WordPress/Automatticの創始者マット・マレンウェッグ氏から「日本の皆さんへ」と題したビデオメッセージが流された。

マット・マレンウェッグ氏
マット・マレンウェッグ氏

マット氏は、WordPressをビジネスに活用するうえでのGPLライセンスの重要性を述べ、WordPressには100%GPLライセンスのテーマが用意されていること、また、これによりビジネスを拡張しているとし、これからのさらなる普及に期待したいと、締めくくった。

ビジネスプラットフォームとしてのWordPress

続いて、株式会社デジタルキューブ代表 小賀浩通氏より「ビジネスプラットフォームとしてのWordPress」と題したプレゼンテーションが行われた。

小賀氏は環境という視点でWordPressのビジネスメリットを語った
小賀氏は環境という視点でWordPressのビジネスメリットを語った

同氏はWordPressにはビジネスに向けた環境が整っているとし、それを4つの項目に分けて説明した。 まず、一番重要なこととしてGPLライセンスを採用している点を挙げ、これがビジネス用途に合わせた柔軟な利用ができる最大のメリットであると述べた。

続いて、WordPressを中心とした「豊富なラインナップ」があることを紹介し、WordPressの他、WordPress MU、BuddyPress、bbPressなどの拡張やP2と呼ばれるTwitterライクに表示するテーマや動画対応機能VIDEOPRESS、レンタルブログとして利用できるWordPress.comを紹介した。

さらにオンラインの情報に加えて、今回のようなWordCampやWordBenchのようなオフラインイベントの存在が「共有して成長できる環境」を整備しているとし、また、公式テーマ・公式プラグインといったように、ユーザがほしいものを探せば見つかる環境が整っているのもWordPressが持っている強みとのこと。

まとめとして、⁠WordPressにはインスピレーション次第で無限の可能性があるので、ぜひ活用してください」と、ビジネスチャンスを広げられるWordPressという観点からの発表を終えた。

オープンソース界最強の携帯対応ツール Ktai Style のご紹介

次に登場したのは、Ktai Styleプラグイン作者の池田百合子氏。WordPressの携帯対応ツール「Ktai Style」について、開発の経緯や特徴、最近の動向について紹介した。

同氏はまず会場にいるWeb制作者の方たちに「これまでの案件の中で携帯対応を求められた割合は?」という質問を投げかけ、約半分ぐらいの案件でそういったニーズがあるという反応が上がった。

日本ならではの部分をとくに意識しているとのこと
日本ならではの部分をとくに意識しているとのこと

このように、日本でのWeb制作・Web開発ではいかに携帯対応が重要なことなのかというところからスタートし、実際に携帯に対応するサイト制作における課題の明確化、そしてKtai Styleがそれらの課題を解決できるプラグインであるということを、細かな機能とともに説明した。

とくに、日本における携帯対応は「文字コード」⁠絵文字」⁠キャリア別に仕様が異なる」といった具体的な課題がある中で、Ktai Styleはそれらを解決するために「5キャリアおよびスマートフォン対応」⁠絵文字対応」⁠長文の自動分割」⁠画像縮小」⁠テンプレートの表現の編集」といったような、サイト運営者側が求めるための機能を実装していることを、実際の動きとともに紹介した。

最後に「携帯サイトを作れば、サイト利用者のためになりますし、また、アクセス数が増やせます。ぜひ携帯サイトを作りましょう」とKtai Style+WordPressによる携帯サイト制作促進に期待をして発表をまとめた。

企業サイトを WordPress で作れば顧客とのコミュニケーションもより円滑に

3番目は、非常に多くのユーザを獲得しているプラグイン「Contact Form 7」の開発者 三好隆之氏が、Contact Form 7開発の経験をふまえた、ビジネスプラットフォームとしてのWordPressというテーマで発表を行った。

「何かサービスを開発して世界に広げたいときに、WordPressはその土台になっていることを気付いてもらいたい」と熱く語った三好氏
「何かサービスを開発して世界に広げたいときに、WordPressはその土台になっていることを気付いてもらいたい」と熱く語った三好氏

冒頭から「WordPressの魅力はプラグインです。私は数年前からプラグインの開発を行っています」と、プラグイン開発にかける思いを述べた。

そこから、インターネットの本質は双方向性であり、コミュニケーションを重視したサイトを作ることが大切と、サイト制作そのものに対して改めて定義付けを行い、それを解決するためのプラットフォームとしてWordPressが持つメリットについて、プラグインを利用すればSNSとしての運用やマイクロブログライクなサイト表現が実現できることを、事例とともに説明した。

続いて、実際に同氏が開発したContact Form 7の特徴、また、現在その拡張として開発しているSupport Ticketsを紹介した。Contact Form 7はお問い合わせフォームを実現する機能で現在約5万~10万サイトで利用されているとのこと。また、Support Ticketsは、サポートチケットシステムのためのプラグインで、10月中には正式にリリースされる見込みとなっている。

これらは多言語サポートを実現するなど、世界展開を行ううえでも大きなアドバンテージを持っており、また、実際に利用しているツールにWPMLと呼ばれるWordPressマルチリンガル化の仕組みを採用していて、質の高い翻訳が行える。

そして、⁠まず、WordPressがいわゆるブログツールであるという固定概念をここで捨ててもらって、ビジネスプラットフォームとしてのWordPressという意識を持ってください」と、今のWordPressは単なるCMSツールではないことを強調した。

最後に「Contact Form 7」が本日累計ダウンロード数が100万回を超えたこと、そして5~10万サイトに採用されていることなどから、アイデア次第、工夫次第で世界展開が行える可能性を秘めていることを、実際の体験談と合わせて紹介し、締めくくった。

WordPress とプラグインで連携する Web サービス

4番目は、株式会社ヌーラボ 縣俊貴氏が、本日本邦初公開となったWebサービス「Cocoo」を発表し、その機能と今後の展開について話した。

サービス+プラグインという形でWordPressへのアプローチを行っている縣氏
サービス+プラグインという形でWordPressへのアプローチを行っている縣氏

Cocooとは、オンラインで図形を書いて公開できるツールで、この日の発表もCocooを使って作成されていた。Cocooを開発するに至った経緯は「これまでWikiやブログのように、テキストをオンラインで複数のユーザが編集し公開する仕組みがあり、これは非常に大きな革新をもたらしました。ただ、これらは図に関しての編集は不可能で、一度公開されたものはバイナリとして扱われてしまいました。Cocooではこの壁を解消することを目的に開発をスタートしました」と話す縣氏。Cocooには、オンラインでの複数ユーザによる図の編集・公開が行える機能が実装されている。

また、最近注目を集めるGoogle Waveのようなオンラインコラボレーションツールを例に挙げ、これからはテキストや図といったものを含め、オンラインでの情報共有・交換、それらの編集をリアルタイムに行うことが求められるのではないかという、今のユーザ体験のトレンドについても触れた。

その後、実際に、東京・福岡・京都の3個所からの同時アクセスによるCocoo利用のデモンストレーションが行われるなど、大変インパクトのある発表となった。

3カ所からのリアルタイムコラボレーションを実現
3カ所からのリアルタイムコラボレーションを実現

なお、Cocooに関しては、本日からクローズドβの形で公開されており、11月中の公開予定となっている。

Cocoo http://cacoo.com/beta

また、11月の正式公開時には、WordPressのプラグインとして提供することを発表し、たくさんのWordPress開発者・ユーザにぜひ使ってもらいたいとコメントした。

今後の展開については「Opensource and Freemium」というキーワードとともに、オープンソースモデルとフリーミアムによるビジネスモデルの親和性について述べた後、Cocooでもフリーミアムによる無料版および高機能有料版による展開をしていくそうだ。 このとき、フリーミアムのモデルを採用した事例の1つに、ヌーラボが開発するBacklogがあるが、これは無料版から有料版へのコンバージョンが5~10%と非常に高い数値を残しているという興味深いデータが紹介されている。

この秋始動の WordPress ビジネスネットワークサイト WPBiz

最後の発表は、司会を務めた大串氏から「この秋始動の WordPress ビジネスネットワークサイト WPBiz」について紹介が行われた。

詳しくはコミュニティDayにて
詳しくはコミュニティDayにて

WPBizとは、WordPressのプロとプロを探すが出会う場所というコンセプトに解説されたサイトで、⁠ビジネスディレクトリ」⁠情報交換フォーラム」⁠お仕事マッチング」⁠製品・サービスの紹介」が用意される。

実際のオープンは明日10/17からとのことで、コミュニティDayにて詳しく説明されることになっている。

WPbiz http://wpbiz.jp/

質疑応答、そしてコミュニティDayへ

最後に、各プレゼンテーションに対する質疑応答が行われ、Contact Form 7に関して「ブレイクの分岐点があったのか」⁠印刷対応は?」など、興味深い質問が行われ、それぞれに対し「とくに分岐点はなくクチコミの積み重ねだと思います」⁠印刷に対しては、印刷したい部分を別途スタイルシートで出すようにしている」といった具体的な回答がなされた。

以上、明日10/17開催のコミュニティDayにつなぐ形で、ビジネスDayの幕を閉じた。

ここまで紹介した内容からもわかるとおり、WordPressを使うことでどういったビジネス展開ができるのかというテーマのプレゼンが多数行われた。とくに、WordPressが持っているプラグインやテーマといった機能・表現の拡張性の高さ、また、英語圏を含めた世界展開のしやすさといった点が伝わってきたのが印象的。

今後のWordPressを利用したサイト制作環境の、さらなる進化に期待を感じられる1日となった。

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