WordCamp Kyoto 2009 最速レポート

WordCamp Kyoto 2009開催:コミュニティDayレポート(午前)

2009年10月16、17日、日本では3回目、関西地区では初となるWordPressに特化したカンファレンス「WordCamp Kyoto」が開催される。ここでは、その模様についてお届けする。

120名が参加したコミュニティDay

2日目は「コミュニティDay」と題して、WordPress開発者・ユーザ、また、WordPressに興味のある人などが参加した。定員120名の会場が満席になるなど、その注目度の高さが改めて伺えた。

この日も名刺交換からスタート
この日も名刺交換からスタート
公式アカウントによるTwitter中継の他、参加者からのTwitter投稿も行われた。ハッシュタグは「#wckyoto09」
公式アカウントによるTwitter中継の他、参加者からのTwitter投稿も行われた。ハッシュタグは「#wckyoto09」

WordPressの現在と未来

オープニングセッションに登場したのは、アジア圏から始めてAutomattic, Inc.に所属したマクラケン直子氏。自己紹介の後、⁠5分でわかるWordPressの歴史」というテーマで、WordPress誕生の歴史について、いくつかのポイントともに紹介した。

Automattic, Inc. Happiness Engineerという肩書きを持つマクラケン直子氏。WordPressを包括的に紹介し、日本におけるさらなるWordPressの普及を期待した
Automattic, Inc. Happiness Engineerという肩書きを持つマクラケン直子氏。WordPressを包括的に紹介し、日本におけるさらなるWordPressの普及を期待した

WordPressは、もともとb2というオープンソースソフトウェアからフォークし、その後WordPressという名称で開発が進んでおり、最近のトピックとしては、2008年3月にリリースされたWordPress 2.5におけるデザインに対して、ユーザからかなりの反響があったとのこと。また、その反応にはネガティブなものも含まれており、それをふまえて同年12月に2.7がリリースされたという経緯などについても話された。

2004年1月にリリースされたWordPress 1.0の管理画面
2004年1月にリリースされたWordPress 1.0の管理画面

現在、WordPressは人気のあるブログの中で最も使われているツールで、その内訳は、WordPress.org(自分でインストール)で31%、WordPress.com(レンタルサービス)で5%と合わせて41%と非常に多くの人気ブログで使用されている(Technorati Top 100ブログ調査による⁠⁠。

この他、最新版(2.8.x)は世界で690万回以上、最新日本語版も17万回以上ダウンロードされており、また、WordPress.comのトラフィックは全世界で17位(Alexa.com調査による)などのデータとともに、数字的に見たWordPressの利用率向上についても紹介された。

WordPress.comの17位の上には、1位Google、2位FaceBook、…、7位Blogger.com、…、10位Yahoo! JAPANなどブログ以外の大規模サービスが名を連ねている
WordPress.comの17位の上には、1位Google、2位FaceBook、…、7位Blogger.com、…、10位Yahoo! JAPANなどブログ以外の大規模サービスが名を連ねている

こうした背景には、世界中にある活発なコミュニティ、無料プラグイン(10/17現在約6,900種類⁠⁠、無料テーマ(10/17現在約1,000種類)といった、WordPressの強みに寄るところが大きいと、同氏は感じているとのこと。

そして、この動きをさらに促進するものとして、GlotPresshttp://www.glotpress.org/と呼ばれる翻訳フローシステムの開発が進んでおり、これにより今まで以上にユーザの参加、さらには参加から貢献への動きが助長されることに期待しているそうだ。

途中、WordPressを利用している著名サイトの紹介が行われた後、⁠WordPressの未来」という内容で、最新バージョン2.9の機能紹介が行われた。2.9ではメディアアップロードの機能が充実する他、Gmailで実装されるようなゴミ箱機能の搭載も予定されており、発表時点で、ベータ版が10月末のリリースで進められている。

そして、もっと先の未来について、同氏は「ユーザの皆さん、ユーザの参加にかかっています」と述べ、改めて

  • 参加
  • 共有
  • イノベーション

というポイントともに、より良いプラットフォームを目指していくということで発表を締めくくった。

投稿データのエクスポート/インポート

2番目に登場したのはPHPでWeb作成http://php-web.net/の管理者でもある水野史土氏が「投稿データのエクスポート/インポート」と題したWordPressのファイル/データ管理、とくにバックアップとサーバ移転に重点を置いて解説した。

水野氏はphp.netにおいてさまざまな情報を公開している他、WordPressのコミュニティには翻訳などの作業を中心に貢献している
水野氏はphp.netにおいてさまざまな情報を公開している他、WordPressのコミュニティには翻訳などの作業を中心に貢献している

まず、データのエクスポートの基本的な手順として、管理画面の「ツール⁠⁠→⁠エクスポート」を選び、作者名を選択してダウンロードをすれば行えると紹介したうえで、

  • WordPress本体
  • プラグイン、テーマ
  • アップロードした画像

の3点についてはエクスポートできない点に注意が必要とした。

一方のインポートについては、管理画面でWPを選択してからローカルファイルを選択すれば行えるので、難しい作業はないとのこと。また、現在ユーザから挙がっている「他のブログツールのデータのインポート」については、10/10付けのwp-hackers MLでも議論がすすんでいるなど、今後何かしらの進展が起きる可能性があると示唆した。

エクスポート/インポートの基本操作を説明したうえで、実践的な用途であるサーバ移転の具体的な方法についても解説した。

基本的な手順は、⁠現サーバでエクスポート」⁠新サーバにWPをインストール」⁠新サーバでインポート」を行い、画像などは手作業で移行すれば完了する。このときの注意点として、扱えるデータサイズ制限があることを指摘し「これはWordPressによる制限ではなく、PHPとしての標準制限あるいは利用している共用サーバで起こりうる現象です」とし、前者のPHPとしての標準制限について、一時的回避方法について説明した。

具体的には、php.ini内にある

upload_max_size
post_max_size

の2つの指定数値を編集し制限値を大きくすれば良いとのこと。また、サーバ移転が終わった後は、負荷軽減をするために元の数値に戻しておくことを勧めていた。

本日の発表資料については、http://presen.php-web.net/ に公開されるので、興味のある方はぜひご覧いただきたい。

Ktai Style と Ktai Entry で楽しいブログ生活

3番目は、ビジネスDayでも発表をした池田百合子氏が、WordPressにおける携帯対応サイト構築および活用の話題について発表した。池田氏は、携帯対応プラグイン「Ktai Style」およびメール投稿プラグイン「Ktai Entry」の開発者として有名で、自身も「WordPressと携帯を組み合わせたい」という気持ちがあって、これらのプラグインを開発したそうだ。

その開発の経緯には「ブログと携帯は相性が良い一方で、素のWordPressは携帯非対応であると同時にPC向けにAjaxが多用されているため、携帯電話での表示が崩れます。また、海外の携帯対応プラグインは日本の携帯電話仕様に非対応でうまく利用できないため、自分で開発することにしました」と述べている。

次に、ユーザに向けたメール投稿の勧めとして「Twitterのようなブログとの連携が流行っていますが、140文字という字数制限があったり、写真投稿の際には外部サービスが必須になるという制約があります。この状況を鑑みたとき、ブログには、機動性が高く外部サービスに頼らなくて良いという点から写真付きのメール投稿が向いています。そしてKtai Entryはそれを実現します」と、Ktai Entryの強みに適した活用方法を紹介した。

さらに技術的な解説も行い、WordPressにおけるメール投稿の仕組みとして「外部メールボックス方式」⁠投稿スクリプト起動方式」の2つの手法を紹介したうえで、Ktai Entryはどちらにも対応していることを付け加えた。

WordPressにおけるメール投稿の仕組み:外部メールボックス方式
WordPressにおけるメール投稿の仕組み:外部メールボックス方式
WordPressにおけるメール投稿の仕組み:投稿スクリプト起動方式
WordPressにおけるメール投稿の仕組み:投稿スクリプト起動方式

この他、今はあまり使われていないがぜひ使ってもらいたい機能として、Ktai Styleのブログ管理機能を取り上げた。Ktai Styleのブログ管理機能では、外部から修正ができるため、記事そのものはもちろんスパム排除、コメント通知メールと連携した管理などが行えるそうだ。

最後に「WordPressと携帯を組み合わせましょう」と改めてコメントし、参加者に対して、これまで以上にWordPressへのメール投稿を行い、出先からの携帯電話を利用したブログ閲覧・管理を勧める形でまとめた。

絞り込み検索プラグイン―WordPressの用途の広がりと検索機能の重要性

午前中最後のセッションを務めたのは長野でWeb制作・開発業務を行うファーストエレメントの宮澤大治郎氏が、同社で開発・販売を行う絞り込み検索プラグイン「FE Advanced Search」を紹介した。

ファーストエレメント宮澤大治郎氏
ファーストエレメント宮澤大治郎氏

このプラグインは、同氏が以前受託した求人サイト制作において、WordPressを採用したことがきっかけで開発が始まったもので「当時の案件を受けたとき、WordPressは無料で使えて、どんなサイトでも作れるということを聞き試用することを決め、⁠そのとき)今後のためにWordPressを勉強するために自社で企画から制作/運営を行いました。実際に開発して公開してみてわかったのですが、求人サイトに必要な条件による検索が実装されていないことがわかり、自分たちで開発することにしたのです」と、WordPressになかった機能を補うために開発を始めたエピソードを話した。

そこで、検索について改めて利用シーンとニーズについて調査・分析を行った結果、ブログのようなコンテンツが少ないもの、データが時系列に更新されていくタイプのものでは、通常のキーワード検索のみで対応できる一方で、CMSのようにコンテンツ量が多く、また、時系列とは関係なくデータが蓄積されていくタイプのものについては、キーワード検索だけではなく、それを絞り込むための検索、絞り込み検索が必要と考えたそう。

この例として、不動産検索サイトを取り上げ、絞り込み検索の利用シーンと求められる機能を紹介した。実際の絞り込み検索を実装する際には、ユーザ自身にキーワードを入力してもらう自由度をなくす代わりに、ドロップダウンなどのメニューを利用し、その結果としてユーザの意識をリードしてシステム側に対して明確にカテゴリを指定できるようにしているそうだ。

こうした考察から「検索におけるノイズをなくし求めている情報に早く、確実に、簡単に探し出せるようになるとのことで、これは検索の根元のテーマでもあります」と、同氏は述べた。

現在、FE Advanced Searchには、複数のカテゴリやタグ、カスタムフィールドの値、投稿年月、キーワード、投稿者といった属性での検索が行えるようになっており、今後は

  • 複数の検索フォームの作成・管理
  • 投稿者による絞り込み
  • 検索フォームのレイアウトをさらに簡単に
  • 範囲検索
  • 検索結果のソート機能(動的)

といった機能の実装を予定しているとのこと。

最後に、なぜ有償化したかについて、同氏および同社が考えるビジネス戦略とともに紹介した。前述にも紹介した最初に制作した求人サイトが公開されたとき、そのサイトを見たいくつかの制作会社からシステムの導入に関して相談があったそうで、元々はサイト構築を請け負うビジネスモデルを検討していたとのこと。ただ、その場合、ファーストエレメントとしての規模・リソースでは難しいと判断し、結果、収益性の高い優勝でのプラグイン販売を行うようになったそうだ。

ただ、当時はGPLに対する理解が浅く、試行錯誤を重ねて現状のようなモデルを構築できたなどの体験談を話ながら、今後も、再配布や同様のプラグインが登場する可能性といったリスクについても対応していかなければいけない、と述べていた。

それでも、有償化プラグインからのWordPressコミュニティへの貢献というアプローチについては、

  • ニーズに応えるプラグインの提供
  • 売上の一部を寄付
  • Tipsやノウハウをブログで公開
  • フォーラムで質問者に回答

などを積極的に行い、ユーザの皆さんには、WordPressプラグインを利用するための4つ目の選択肢として「購入」についても検討してもらい「ビジネスユーザ連携でビジネスユース促進を!」とコメントして内容で締めくくった。

宮澤氏が考えるプラグイン購入4つの選択肢のメリット・デメリット
宮澤氏が考えるプラグイン購入4つの選択肢のメリット・デメリット

以上で、コミュニティDay午前中のセッションは終了した。午後のセッションについては後日公開の記事にて紹介する。

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