開催間近!YAPC::Asia Tokyo 2010の見所、紹介します

#1今年もやります、YAPC::Asia Tokyo 2010

10月15日(金), 16日(土)に、国内最大のPerlのイベントYAPC::Asia Tokyo 2010が開催されます。場所は、昨年と同じく東京工業大学大岡山キャンパスです。

本稿では、昨年に引き続き、今年もYAPC::Asia Tokyo 2010の見所を数回にわたって紹介していきます。

今年のテーマは"Welcome, Perl"

今年で5周年を迎えるYAPC::Asia Tokyo 2010のテーマは"Welcome, Perl"です。このWelcomeには過去、現在、未来のPerlそしてPerl使い達を迎えようという意味が込められています。Perlが世に出てから23年、現在Perlにはルネッサンスの時代が訪れています。この時代に見るPerlの過去から未来、そして現在利用可能な最先端の技術に触れることができるはずです。

また例年のことではありますが、YAPC::Asiaは国内外のハッカー達が集結するイベントです。Perlはこのコミュニティに支えられており、彼ら一同と触れあえるYAPC::Asiaは技術的な意味でもネットワークを開拓するという意味でも最良の機会と言えます。技術に触れたい人、技術者を探したい人、自分がこれから働く会社を探したい人、誰もがきっと何かを得られる場となるはずです。是非お越しください。

なお、原稿執筆時点でチケットは売り切れ間近ですが、需要があるようであれば調整してみますので、チケットをまだ入手されていない場合はtwitterで本イベントのハッシュタグ#yapcasiaを使って発言してください。

編注
チケットは、今週月曜日(27日)に売り切れになっていますが、販売再開の予定であるとのことです。

ゲストスピーカー

今年のゲストスピーカー3名はこのテーマに沿う形で、Perlの生みの親Larry Wall氏、Perl5 の現在の開発責任者 Jesse Vincent氏、そして日本が誇るハッカー 宮川達彦氏を招待しました。

まず今年のYAPC::Asia Tokyoはご存じPerlの生みの親であるLarry Wall氏の発表から始まります。Perl5の次の世界であるPerl6の世界やPerl5との関連性などについて発表していただきます。Larry氏の発表はコンピュータ言語の枠組にとどまらず、我々に「言語」というものに関しての考察があふれています。まだ彼の発表を聞いたことの無い方は是非どうぞ!

Perl5 is Aliveを発表していただくJesse Vincent氏は日本での知名度こそ低いですが、過去のYAPC::Asiaには何回も来ており親日家なPerlハッカーです。現在、彼はBest Practical社の経営者としてCPANのバグ管理システムとして採用されているRequest Trackerなどのツールを世に送る他、Perl 5の開発の責任者Pumpkingとして活躍しています。そんな彼がPerl5 の現在の状態そしてこれからの開発スケジュールや機能追加に関して語っていただきます。

そして日本で行われるYAPC::Asiaの締めは、やはり同じ日本人である宮川達彦氏に登壇していただきます。今まで数々の名作を世に送り出してきた宮川氏は昨今ついに、群雄割拠だったPerlのWebアプリ界を統合する一つの解「Plack/PSGI」を、Shibuya.pmの方々を含む世界中のハッカー達と協力して発表したスーパーハッカーです。今年はどんなことが語られるのかのか、是非会場に来てその目で確認してください。宮川氏はここ数年米国を拠点に活動されていますので、今回を逃すとまたしばらく日本で氏の発表は見られません。この機会をお見逃しなく!

モダンなPerl5

ここ2年くらいの間に、Perlルネッサンスの動きの中でモダンPerlという言葉が連呼されるようになりました。野良CGIスクリプトで使われていたような適当なPerlではなく、言語とコミュニティの進化とともに台頭してきた保守性と拡張性に富んだ書き方やCPANモジュールの使い方を広めようという動きが活発になっています。Perlは過去の負の遺産もたくさんありますが、コミュニティも言語本体も日々進化している言語なのです。

一連のモダンPerlのトピックの中では 松野徳大tokuhirom氏によるモダンな Perl5 開発環境について - 2010年代を生きのびる Perl5 活用術の発表は現代のPerlユーザーは必見の発表となるでしょう。我々のPerl開発スタイルに劇的な変化を与えつつあるcpanmやperlbrewなどのツールの意味や使いどころなどが解説されます。これにより、より効率的な開発を目指せるはずです。

また、モダンなテンプレートエンジンと言えば、藤吾郎gfx氏のText::Xslateをあげないわけにはいかないでしょう。これまではTemplate::ToolkitというテンプレートエンジンがデファクトスタンダードとしてPerl界では君臨していましたが、Text::Xslateはその常識を吹っ飛ばす性能を持ったテンプレートエンジンです。氏の発表How Xslate worksでは、このXslateがどう実装されているのか、内部に実装されている仮想マシンについてなどが解説されます。Xslateの使い方に関しての発表ではないため、初心者の方には少し難しいかもしれませんのでご注意ください。

Perl6: 進化の先

Perl5とPerl6は親が同じ、しかし違う系統の言語です。今後もPerl5はPerl 5.14, 5.16として進化していきますが、その間にPerl6が着々とその完成度を高めています。先日(2010年4月)にはPerl6の実装である Rakudo Starの正式版 1.0がリリースされました。今年のYAPC::AsiaではそのRakudo Starを使ったPerl6に関するトークが3つ発表されます。

まずはrisou氏のWelcome Perl 6! Is Rakudo Star useful?ではRakudo Starが実用に耐えられるのか、これからどうなるかについて検証していただきます。

そして竹迫良範氏によるPerl6正規表現プログラミング楽土入門では、Perl6に実装されている進化したPerl6の正規表現の実力を見せつけていただきます。Perl5の正規表現のままでは何故駄目だったのか、Perl6ではこれがどのように変わるのかがわかるはずです。

Perl6における正規表現に関して、Ingy dot Net氏によるPegex - Perl 6 Rules for Everyoneも発表が予定されています。氏はすでにPerl6正規表現をベースに単位テストフレームワークであるTestMLを作成しており、新たな正規表現の可能性を実地調査し始めているようです。このTestMLはPerl6のテストフレームワークであるTest::Baseからの移行も簡単で、様々なテストを簡単に書けるようにすることを目指しています。なお、TestMLについてはTestML - Write Once, Test Everywhereで話されます。

地方と、そしてカジュアルと

Perlの未来について考えるのに避けて通れないのが、ユーザーベースの獲得です。JPAでは以前より、コミュニティによる自発的な参加だけをベースにしていたPerl界について危惧しており、今後少しずつでもコミュニティ同士のネットワーキングや、コミュニティと企業との橋渡しをしていきたいと考えています。

今回は、さらに初心者やいわゆる「カジュアル」なユーザー層に、もっとリーチするため、和田裕介yusukebe氏主催のperl-casualとタッグを組み、perl-casualとのコラボ企画を10月16日に行います。

その中でも今回ちょっと珍しい取り組みが「特別企画 PMグループディスカッション」⁠10月16日14:20~)です。こちらは本サイトgihyo.jpの馮氏にモデレータとなっていただき、東京以外のPerl Mongerグループの方々に登壇していただき、それぞれの活動や抱えている問題などについて話していただく予定です。東京でエンジニアを捜せない方、各地方で他にPerlユーザーがいなくてもどかしく思っている方、自分でユーザーグループを立ち上げたいと思っている方、是非いらしてください。また関連する話題で、横山(acotie)氏の私とPerlの関わりでは上記のようなコミュニティとの関わりについて話していただける予定です。

それ以外にも和田氏や杉sugyan氏のコーディング解説が聞ける予定のNoSQLで作るTwitter解析サービスとある自社サービスの運用事例があるほか、kazuho氏によるUnix Programming with PerlではいわゆるUnixシステム上でプログラムを書く際に気をつけるべき基本のおさらいをしていただく予定です。

なお、この時間帯では休憩等も少なくしており、比較的自由に出入りできるようにしてありますので、セッションの途中でもお気軽にご参加ください。


このように2日間を通してPerl界の様々な取り組みに触れられる YAPC::Asiaですが、今年はなんと最近ソーシャルゲームプラットフォームとして有名な会社などからも登壇していただけることになっています。次回は、そのあたりのセッションについて紹介します。

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