ESEC2007開催!
2007年5月16日(水)~18日(金)、東京ビックサイト(東京都江東区)にて組込みシステムに関する製品、技術が一堂に会する専門展/セミナーの「第10回 組込みシステム開発技術展(ESEC)」が開催された。
同時開催は「第16回 ソフトウェア開発環境展(SODEC)」「第12回 データウェアハウス&CRM EXPO(D&C)」「第9回 データストレージEXPO(DSE)」「第4回 情報セキュリティEXPO(IST)」「第2回 RFIDソリューションEXPO(RIDEX)」「第1回 ダイレクトマーケティングEXPO(DME)」「Web 2.0マーケティングフェア」で、主催はリードエグジビションジャパン。
今回は1,381社が出展(前回は1,119社)があり、3日間で11万626名(前回は9万538名)が来場し、出展社数、来場者登録数ともに過去最大規模での開催となった。
ここでは、会場の風景とともに会期中を通して来場者からどのような問い合わせや要望があったのかについて各ブースでのインタビューを交えて紹介する。
LSI・オブ・ザ・イヤー表彰式
初日(16日)に恒例となった「第14回 LSI・オブ・ザ・イヤー」の表彰式が行われた。同賞は、最新のエレクトロニクス製品の中で、その成果が過去1年間を通じて最も顕著であったLSI製品・技術および設計環境/開発ツールの企業・開発者を表彰するものだ。国内・海外からノミネートされたうち、グランプリと準グランプリ、優秀賞は次のとおり。
開発プロセス改善
情報化業務の最適化などを推進するコンサルティングファーム「豆蔵(株)」のブースでは、来場者からの「○○という課題を持っているので手伝ってもらえないか」「どういうところでサービスが受けられるのか」という問い合わせが多く寄せられた。IT系におけるコンサルティング内容の違いについては「自分たちの事業部も全体でオブジェクト指向技術を使うから手伝ってとか、オブジェクト指向技術で自分たちの技術を資産化したいんだという声が聞ける点」(取締役会長 羽生田栄一氏)という。
テスト検証
海外の開発ツールとそのサポートを提供する「富士設備工業(株)」のブースでは、モデル検証、フォーマルメソッドの「T-VEC」などが展示され、「人海戦術」に“×”とつけられたところが興味深い。また自動車や家電、携帯電話などの業種を問わず問い合わせがあった(電子機器事業部 浅野義雄氏)。
システム検証サービス、パッケージ開発、システム受託、システムコンサルを行う「日本ナレッジ(株)」のブースではコーチングシステムの「MVP2000」の展示と実際にゴルフスイングのチェックも行っていた。これは、開発部隊が持つ画像処理技術とシステム検証サービスで培った検証技術を融合させたサービス(営業部 深川康弘氏)ものだ。
研修サービス
ロボットを活用した新しい教材・研修サービスを提供する「(株)アフレル」のブースでは、ETロボコンでも利用される「レゴ マインドストーム」が展示されていた。来場者とものづくり現場での教育の話になると、異口同音に「机上だけでなく実際に動かしみることが重要」という認識がある(代表取締役社長 小林靖英氏)という。
車載システム
「NECエレクトロニクス(株)」のブースでは、昨年のET2006(組込み総合技術展)にも出展されていた画像認識用並列プロセッサ「IMAPCAR」を使ったデモが行われていた。今回は、白線の間隔や「止まれ」の標識などを画像認識して走行していた。半年前と比較して進化した部分について、「まずクラッシュしなくなった。さらに破線の切れ目をカウントして、ある一定以上になるとブレーキをかけるなどしているのでペーシングがだいぶ安定している。また、究極は2台走らせて追い越しなどをさせてみたいと思っている」(第四システム事業本部 自動車システム事業部 伊賀直人氏)という。次回のイベント時も要チェックだ。
NC制御システム開発、車載組込み制御システム開発などを行う「(株)ヴィッツ」のブースでは、おなじみになったFlexRay搭載電動カートの展示していた。これは組込みプレス Vol.7の表紙を飾っている。昨年までの違いについては、「『機能安全』という新しいキーワードが加わり、保護機能OSが実証段階になった」(開発第3部 部長 服部博行氏)ことだ。今後はこのカートが単なるFlexRayのby-Wireではなく、機能安全OSを開発するために車やOSに求められるのかを分析するものとして利用される。
POSIX準拠のリアルタイムOS
組込みシステムの「ONE STOP SOLUTION」を提供する「イーソル(株)」では、5月8日に発表された「開発環境」「リアルタイムOS」「ミドルウェア」に加え「プロフェッショナルサービス」までを含むソフトウェアプラットフォームの「eCROS」が展示されていた。来場者がもっとも興味を引いた点はPOSIX準拠のリアルタイムOSの『eT-Kernel/POSIX』だったそうだ。「T-Kernelのコアを使ってPOSIXの機能を載せており、単なるラッパーではない。OSの内部も改造を入れているので、他のPOSIX準拠のOSと同等の機能と性能を実現している。API自体も8割サポートしており、残りの2割はほぼ使わないものやどうしてもT-Kernelとの整合性が合わないものをはずした」(エンベデッドプロダクツ事業部 マーケティング部 村上泰代氏)という。
ワイヤレスUSB
基本計測機器のほか、各種産業用測定装置の開発・製造する「(株)東陽テクニカ」では、ワイヤレスUSBプロトコル・アナライザ「UWBTracer」(LeCroy社製)が展示されていた。ワイヤレスUSBの評価ボードがそろそろ出るので、モジュールを作るメーカーやセットメーカーからの問い合わせが多いという。日本の場合は電波法の関係で「それに対してはどうすればよいか?」などの質問もあるそうだ。周波数帯が日本の場合ではCS放送や第3世代携帯と重なるので、屋内で利用することが規定されている(I/Oアクセス解析ソリューション部 井邊和幸氏)。なお、2007年1月1日よりすべてのLeCroy社製プロトコル・アナライザ関連製品の日本における販売・サポートは、株式会社東陽テクニカへ業務移管されている。
未踏ソフトウェア創造事業
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)では、個人または数名のグループを対象として、次世代のIT市場創出を担う独創性と優れた能力を持つ研究者(スーパークリエイター)を積極的に発掘するとともに、彼らが開発に専念できる環境を整備し、新市場を切り拓くソフトウェアの開発支援を「未踏ソフトウェア創造事業」として行っている。組込みプレス Vol.5の特別企画で取り上げた「WideStudio/MWT」など、いくつかの企業/学校の製品が展示されたいた。
まとめ
組込みシステム開発技術展としては、やはり「組込みボード・コンピュータEXPO」ゾーンが大きく占めているが、徐々に「設計・開発サービス/コンサルティング」や「テスト検証」ゾーンが大きくなっている印象だ。じっくり見学をしたい方には複数日で来場することをオススメしたい。なお、次回(2008年)は5月14日(水)~16日(金)の予定で、同時開催も含めて東京ビックサイト全館が利用される。