にある。
これはアメリカでは非常に便利なサービスだろう。アメリカではほとんどの買い物にクレジットカードが利用されている。スーパーマーケットの行列に並んで観察していると、10人中9人くらいがカードを使う。しかもスナック菓子などあきらかに10ドル以下の買い物にもカードを使うのが珍しくない。金融機関も口座情報をオンラインでユーザーに通知するのが普通だ。もちろん給与も金融機関振込みが当たり前。つまり国民の大半にとって金は出るのも入るのも、ほとんどがオンライン上に記録されていることになる。口座をクロールしてモニタすれば、たしかに家計の財務動向はほぼ完全に把握できるだろう。
日本でもMint的なサービスは可能だろうか?
なるほど、たしかにマスにアピールしそうな有望なサービスだ。現在ベータテスト中で、この段階ではまったく無料のウェブサービスなのでビジネスモデル的にはまだ未知数だが、巨大なトラフィックさえ確保できれば広告モデルにせよ、広告プラス有料レミアムサーブス・モデルにせよ、まちがいなく成立する。
問題はユーザーの急増に対してサーバー能力の拡張が追いつくか(そのための資金調達が間に合うか)だが、TechCrunh大賞の受賞でベンチャーキャピタルからの資金調達については心配がなくなった。あっという間にメジャーリーグ入りする可能性も十分だ。
ひるがえって日本ではどうだろうか? スーパーでクレジットカードを使う消費者はまだ少ない。またオンライン・バンキングの利用者の割合もまだネット利用者の半分未満。オンラインでモニタ可能な資金の流れの割合はまだそれほど多くないはずだ。しかし考えてみると、コンビニで「おサイフケータイ」をかざしてアイスクリームを買っていくのを見るのは珍しくない。ある程度高額な取引はカードで、小額の支出はケータイでということになり、個人の金の流れが完全にオンライン化する時代は日本でも案外近いかもしれない。
ただ、その場合でも携帯での買い物の状況をウェブサーバからクロールして把握するのは難しそうだ。むしろ携帯キャリア側で「おサイフケータイ用家計簿」のような付加機能を充実させ、ウェブ側と連携するかたちをとるのが現実的なのか? Mintの受賞を見ていろいろなことを考えさせられた。
BeFunkyで自分そっくりのアメコミ風アバターを
2日目で印象に残ったサービスをランダムにあげてみる。
BeFunkeyは「写真からカートゥーンを自動的に生成する」サービスで、開発したのはトルコのスタートアップ企業だ。昨夜のクラブFluidでのパーティーで知り合いになってかなり詳しく話を聞き、よさそうな感触があったのだが、デモを見ると予想以上に完成度が高くて驚いた。Photoshopなど高度な画像処理ソフトには輪郭線抽出機能があるが、手動で補正する必要があるし、そもそもこういったソフトは操作、価格両面で敷居が高い。
BeFunkyは予備知識のない一般ユーザーでも、写真をアップロードするだけで簡単にカートゥーン(アメコミ風イラスト)が作れる。当面の用途としてはブログやSNSのプロフィール欄に掲載する「ユーザー本人そっくりなアバター」を作ることだというが、これほどの機能があれば、用途はいろいろ考えられる。
重要なのは、処理して得られた成果物はベクターデータだという点だ。任意の場所をマウスでつかんでドラッグするだけで簡単に画像の変形処理ができる。この点を強調するためにマイケル・アリントンがトルコを訪問したときの写真を例にデモをしてみせた。
マイケルはオリジナルの写真では背景の椅子の背いっぱいに座っていたのだが、わき腹をつまんでぐっと引き寄せるとご覧のとおりスマートに。顔も2割ほど細面に整形してみせて、会場に受けていた。プライベートベータ段階のようだが、トライアル用のコードを会場に配っていた。さっそくトライしてみたが、例によってアクセス殺到で動かない。ぜひ試してみたいサービスだ。
XTR3Dは第二のWiiコントローラーになるか?
最後にもうひとつ、面白かったのが、ハンドパワーで画像をコントロールしてみせたこのデモだった。XTR3Dという。
この画像は実はパソコンの上に取り付けられたウェブカムからプレゼンターを映しているところ。左下の輪の中がモーション認識領域。ここに手をかざしてジェスチャーをするとシステムがその動作を3次元的に認識して、たとえばGoogle Earthの画像を傾けたり横にずらしたりする。
要は3Dモーショントラック機能なのだが、従来のモーショントラッカーは複数のカメラを用意したり、被写体にトラッキング用の目印をつけたりする必要があった。こちらは安価なウェブカム1つだけで、被写体側にはなんの目印もいらない。当然機能は限られるが、利用範囲は飛躍的に広くなる。
開発者はゲームへの応用をまず第一に考えているようだった。第二のWiiコントローラーを目指しているらしいが、ビジネス戦略としてこれが成功するかどうか注目。エキスパート側には、それならサンフランシスコ(TechCrunch40)へ来るよりシアトル(Nintendo)へ行った方がいいのでは、という微妙な空気もあったようだが、注目の技術には間違いない。
ほかにもFacebookのファウンダー、マーク・ザカーバーグが童顔を通り越してビールを買うにも免許証を見せろといわれそうなほど小柄な少年にしか見えないことや、MCハマーがブルックリンの繁盛している酒屋のオーナーくらいに普通の人にしかみえなかったこと、ヘザー・ハードCEOの美貌、ジェイソン・カラカニスの気配りと腰の軽さなど、おもしろかったことは山のようにあるのだが、そろそろ空港へ向かう時間になってしまった。ひとまず現地からの速報はここまでとして、TechCrunch40全体のまとめは帰国後となるが、評価や分析もまじえて引き続きご報告したい。
(続く)