2007年8月5日~11日の1週間、韓国の首都、ソウルで行われた学生のための技術コンテスト「Imagine Cup」に同行取材しました。
会場に到着した日本代表の面々
Imagine Cupとは
Imagine Cupは、Microsoftが開催する学生を対象とした技術コンテストです。第1回は2003年にスペインで行われ、年々その規模を大きくしながら、今年で5回目を迎えました。Imagine Cup 2007は、8月5日から11日までの1週間、韓国はソウルで開催されました。今年のテーマは「テクノロジの活用による、より良い教育の実現にむけて」です。100以上の国々から、10万人を超す学生が地区予選で戦い、その地区予選を勝ち抜いた112チーム、計344人の学生が参加しました。競われる部門は次の9つです。
ソフトウェアデザイン部門
組み込み開発部門
Web開発部門
ビジュアルゲーミング部門
ITチャレンジ部門
アルゴリズム部門
写真部門
ショートフィルム部門
インターフェースデザイン部門
今年は、ソフトウェアデザイン部門に日本代表が参戦しました。以降では彼らの活躍についてレポートします。
Team Someday「LinC」
ソフトウェアデザイン部門では、55チームが決勝戦を戦います。本大会の中で最も参加人数の多い部門です。日本からは下田修さん、丸山加奈さん、坂本大憲さん、大和田純さんの「Team Someday」が参加しました。
4人は北海道大学大学院情報科学研究科の学生です。この夏、研究室と修論、卒論の準備で忙しい最中、4人は合間をぬって集まり、誰かが忙しいときは代わりに自分が頑張るなど、助け合いながら開発を続けてきたそうです。
彼らの作品はデジタルノートシステム「LinC(リンク) 」です。ユーザは自分の興味ある事物をカードに記し、カード同士が関連性を持つ場合、リンクしてノードを広げていきます。また、他人のカードともリンクできます。同じ趣味を持つもの同士が同じカードを持っている場合でも、自分の知らないことが書かれているカードにノードが伸びているのを見ることができ、新たな発見があります。この「気づき」を促進することが「LinC」の目的です。
自分のカード一覧(LinC)
審査第1次ラウンド
ソフトウェアデザイン部門では、1次ラウンドで55チームのうち上位12チームにまで絞られ、2次ラウンドではその半分の6チームのみが決勝戦で駒を進めることのできる、大変ハードな勝負が繰り広げられます。1次ラウンドは2日間で一度ずつ、異なる審査員にプレゼンテーションを行います。与えられる時間は、質疑応答も含め30分。その中で、テンポのよい進行と、審査員からの質問に当意即妙に答えることが求められます。
ここで、筆者は彼らの目ざましい成長を目の当たりにしました。ソウル出発の前日に行われた壮行会で見たプレゼンはたどたどしく、LinCの機能説明も、お世辞にもわかりやすいものではありませんでした。しかし、1次ラウンド1回目の彼らのプレゼンテーションは流れの良い、強調したい機能が明確に説明される素晴らしいものでした。壮行会のとき、教授やMicrosoftのサポーターから受けた多くの厳しいアドバイスを、たった1日で理解し、昇華させたようでした。
カードのつながりを可視化(LinC)
また、2回目の審査では、同時に使用する2台のモニタのうち1台の設定がおかしくなってしまったため、そのまま1台だけでプレゼンテーションすることになってしまいました。突然のアクシデントでしたが、すぐに彼らは1つのモニタでも説明できる内容構成に切り替え、プレゼンテーションを行いました。壮行会のときは、画面の切り替えだけでも説明の流れが止まっていたのを見ていたため、この件でも、大会中での彼らの飛躍的な成長を感じました。
LinCに対する審査員の反応はよく、手書きの文字でも読み込むことができる手軽さや、自分の蓄積したカードを一覧できるモード、カード同士のつながりを3次元で可視化するモードなどの洗練されたUIに、高い関心を示していました。
結果は敗退、けれど…
残念ながら、彼らは2次ラウンドに進むことは叶いませんでした。同じブロック内のほかのチームのプレゼンと比較しても、引けをとらない作品とプレゼンテーションだっただけに、2次ラウンド進出チームの発表でTeam Somedayの名が呼ばれなかったときの彼らの落胆と悔しさはひとしおでした。
勝ち進めなかったことは本当に残念でしたが、彼らはそれ以上にあまりある貴重な経験をすることができたようでした。同世代の外国の学生と話し、意見を交換することはめったにありません。しかも、参加している学生たち全員が、同じ目標を持ち、ここまで勝ち進んできたいわば「エリート」です。これほど刺激を受けることのできるチャンスは得がたいものです。実際、初めて会ったときと、大会終わりのころの4人の顔つきや話し方はまったく違いました。学生のうちにこんな貴重な体験ができる彼らを、筆者は本当に羨ましく思いました。
ソフトウェアデザイン部門を制したタイランドチーム
Imagine Cup 2008テーマは「環境」
来年のImagine Cup 2008はフランスが開催国になりました。テーマは「テクノロジの活用による持続的な環境の実現にむけて」です。温暖化や天然エネルギーの枯渇など、現在世界中で最も注目されているテーマといってよいでしょう。今回の「教育」と同様、いろいろな切り口がある奥深いテーマなため、来年もとてもエキサイティングな世界大会となるのではないでしょうか。日本からも多くの学生がエントリし、活躍することを願ってやみません。
「君たちの技術が世界を変えるんだ」と力強く語るJoe Wilsonマイクロソフトアカデミックイニシアチブ担当ディレクター
【関連サイト】
Imagine Cup:http://imaginecup.com
Imagine Cup特集サイト:
http://www.microsoft.com/japan/msdn/student/imaginecup
Imagine Cup 2007 世界大会 日本代表チームブログ:
http://ic2007-japan.spaces.live.com
【コラム】大会成功の礎
この大会の運営には、多くの韓国の大学生がボランティアとして参加していました。「 Imagine Cup」と書かれた黄緑色のTシャツを着た彼らは、堪能な英語と抜群の行動力で、競技参加者と関係者を力強くサポートしてくれました。日本チームについてくれたサポーターのHyun Jungさんは、英語だけでなく日本語も話すことができました。
また、審査時の取材の禁止事項など、はじめから決められていた規定でも、現場にいるMicrosoftの関係者に「こうしてほしい」と伝えると、その場で迅速に判断され、すぐに改善されることが多々ありました。
大会が大成功を収めたのも、こうした彼らのサポートのおかげであるところが大きいのは間違いありません。柔軟な対応によって、出場者や関係者は充実した大会参加ができるのだろうと感じました。
Team Somedayと日本チーム専属サポーターHyun Jungさん(右)