11月22~23日、六本木アカデミーヒルズ40にて、慶應義塾大学SFC Open Research Forum 2007が開催されている。今年のテーマは「toward eXtremes―未来創造塾の挑戦―」 。不確実で不安定なextreme(極みの世界)にあえて踏み込み、解明し、新しい突破口を見出すことをメインテーマとして掲げている。
以下、22日のイベントの様子をレポートする。
メインセッション
22日は、「 FTA・EPAで磨く日本の国際競争力―東アジア経済共同体構築に向けて」 、「 地球の科学技術を考える」の2つのメインセッションが開催された。このうち、「 地球の科学技術を考える」には、日本科学未来館 館長の毛利衛氏、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所 所長の竹中平蔵氏、慶應義塾 常任理事の村井純氏が登壇者として参加。地球環境問題対策として、科学技術を社会化させるための方法について議論が交わされた。
セッションは、時おり村井氏のジョークを交えながら、なごやかな雰囲気で進んだ
毛利衛氏。「 科学技術とビジネス+政治が一緒になったうえで、さらに世界が1つにならないと、環境問題の将来的な解決は難しい」
竹中平蔵氏。「 経済・政治分野の人間と、科学技術の人間とでは、なかなかつながりを作りにくい。しかし、村井氏はIT分野において、ここをつなげることができた。今後はもっとこのようなコミュニケーターが、科学技術の分野においても必要」
村井純氏。「 本当に未来を作っていくには、科学と技術だけではなく、他に力を合わせないと駄目。技術の社会化のプロセスはすごく難しい。トータルで物事を考えられる人材が必要」
セッションの様子は、未来科学館に生中継で放送された。質疑応答も、アカデミーヒルズからだけではなく、未来科学館からも
展示会の様子
また、展示・デモンストレーションのエリアでは、SFCの各研究室の研究成果が展示されていた。
場所の未来(小檜山研究室)
小檜山研究室の展示テーマは「場所の未来」 。温度や湿度などの環境に関する情報を収集/蓄積できるモバイル環境調査システム「Field Archiving System(FAS) 」 。携帯電話温度・湿度感知機能を搭載。ユーザが自立分散的に収集した環境情報をWeb上のマップで共有することにより、ローカル情報の収集や、発信手段の助けとなることを目標に、開発を進めているとのこと。
この手の平上にある物体が、温度・湿度探知機。現時点では、その下にあるプラスチックの箱中も含めて1つのツールだそうだが、将来的にはさらにコンパクトに改善していくとのこと
収集された情報。赤い部分が温度・湿度
「風のたより―Wind Mail―」は、風の流れに乗せているかのように、メッセージを送信できるシステム。気象情報と気象モデルをもとに実現された地球モデル規模の風モデルエンジンに基づき、メッセージの移動をシュミレーションできる。メッセージの投稿と閲覧には現在の位置情報が利用される。閲覧者は、自分のエリア上に流れてきたメッセージをキャッチして閲覧できる、というしくみ。メッセージが、いつ、どこで、誰に届くかわからない、というスロウなコミュニケーションメディアの発想がおもしろい。
東京から発信したメッセージが、風の流れに乗って海を浮遊し、大陸に流れ着いている
情報を拾いながら浮遊
おしゃれ展―私をキレイにするユビキタス―(安村研究室)
安村研究室のテーマは「おしゃれ展―私をキレイにするユビキタス―」 。プレゼントを贈る人と貰う人とのコミュニケーションツール「おねだリスト」は、店頭での試着画像とその商品情報を、カタログ化し、“ おねだり” したい相手に送ることができる。
帽子を試着してみた。複数のアイテムが試着可能。画面右上のコピーも自分で選択できる
「Graffi-T」は、トルソに着用させたTシャツ上で、コンピュータによる複雑なグラフィック制作を行うことのできるツール。指を動かすだけで、誰でも簡単に着用時のイメージを持ったまま、デザインすることが可能。
指を動かすだけで複雑なデザインが
その他にも、本記事では紹介しきれないことが残念なほど、各研究室の展示内容はユニーク。研究成果を熱心に、楽しそうに説明してくれるSFCの学生の姿が印象的だった。
慶應義塾大学SFC研究所
URL :http://orf.sfc.keio.ac.jp/