導入目的から考える、CMS成功事例セミナー レポート―主要CMSによる最新事例と2008年の展望が見えた1日―

満席となったセミナー会場
満席となったセミナー会場

9,000人のクリエーターが登録するクリエーターポータルサイト「loftwork.com」を運営する株式会社ロフトワークが主催するCMS(コンテンツ管理システム)セミナー「導入目的から考える、CMS成功事例セミナー」が1月31日に青山TEPIAにて開催された。

定員は200席[1]⁠。開催の10日前にはすべての席が埋まってしまったという会場は熱気に溢れていた。オープニングを担当したのは、株式会社ロフトワーク 藤原正平氏。昨年実施されたイベントの振り返りや最近の市場動向を紹介しながら、今回のセミナー開催にあたっての挨拶を述べた。

WebのトレンドとCMSの重要性

まず最初に、弊社『Web Site Expert』編集長の馮富久が「戦略としての企業サイト構築とCMS導入」というタイトルで講演。

この3年間におけるWeb 2.0のインパクトおよび企業サイトの位置付けを包括的にまとめた後、これからの成功を握るカギとして、CMSの導入およびサイト運用の必要性について解説した。

雑誌作りをし長年CMSと接している経験から、CMSの選定前・選定後それぞれで留意すべき点やアドバイスについて話し、さらに2008年の展望として、⁠顔としてのコーポレートサイト」⁠ビジネスのグローバル化」⁠RIAの台頭」⁠プラットフォームの進化」⁠インターフェースの複雑化」というキーワードでまとめ、その後に続く各種事例紹介へとつなげた。

Web Site Expert編集長 馮。WebのトレンドとCMSの重要性について講演した
Web Site Expert編集長 馮

Movable Typeを導入したECサイト―ベネトン ジャパン

続いて、ベネトン ジャパン株式会社営業本部リテイルDiv.オンライン・モバイル マネージャーの小堀晋一氏が登壇。実際にCMSを導入した企業の視点から「Movable Typeで実現 デザイン自由度の高いECサイト」と題する講演を行った。

同社は、アパレル関連の事業を主軸に、さまざまな服飾製品の開発・生産・販売を行っている。今回のリニューアルの目的は、販路としてのWebを拡張する以外に、同社として販売に専念できる運営を目指すべく、Movable Type(MT)の導入を決定したとのこと。

リニューアルは、2007年1月末に実施しされ、その後の効果として「商品の押し出しが容易」⁠急なイベントに対応」⁠細やかで柔軟な情報提供」というポイントを述べ、それぞれのポイントに対し、MTが持つblogタイプのCMSのメリットがあったからこそ実現できたとまとめた。

とくに、リアル店舗と合わせたキャンペーンといった実際の販売面での効果に加えて、運営時の技術的負荷の軽減など、目標とした課題がクリアできたそうだ。

ベネトン ジャパン株式会社 小堀晋一氏
ベネトン ジャパン株式会社 小堀晋一氏

事例で読み解くCMS導入のポイント

休憩をはさみ、株式会社ロフトワーク取締役の林千晶氏が登場。デザイン会社・制作代理店という立場から、主要商用CMSツールである「NOREN」⁠WebRelease 2」⁠TeamSite」それぞれの導入事例を具体的に紹介する「大公開! 事例で読み解くCMS導入のポイント」というセッションが行われた。各事例の最後には、実際にCMSツールを導入した企業の担当者が登壇し、自らの体験を交えCMSのメリットなどがざっくばらんに紹介された。制作者とクライアント側両方の視点からCMS導入前/導入後の「中身」が語られるという非常に中身の濃いセッションとなった。

株式会社ロフトワーク 林千晶氏
株式会社ロフトワーク 林千晶氏

NORENを使ったワークフローの統一―NECトータルインテグレーションサービス

最初の事例紹介はソリューション開発、運用、サポート、保守を行うシステムインテグレータのNECトータルインテグレーションサービス株式会社(以下、NTIS)のWebサイト。NTISのWebサイトリニューアルは株式会社アシストの「NOREN4」が使用された。制作期間は2007年10~12月の3ヵ月。

同社WebはCMS導入前、フローの乱れや属人的な更新が行われ、自社内で更新できないことが課題となっていた。その結果として、情報発信力の弱さにもつながっていた。そこで内部統制に対する対応、コンテンツ更新のしやすさが特長のNOREN4を選択し、NTISでのワークフローの一元化、その先として情報デザインによる情報発信力の向上を目指した。

NOREN4の導入により自社内でのサイト更新の簡易化を実現。また、Webサイトのコンテンツ更新は「ページデザイン」ではなく「情報デザイン」だという意識が社内にも浸透し、以前と比べ社内からWebに対する意見や要求が活発に出るようになったと、NTIS経営業務本部経営企画部シニアエキスパート 菅野宏典氏が導入のメリットをコメントした。

NECトータルインテグレーション株式会社
菅野宏典氏
NECトータルインテグレーション株式会社 菅野宏典氏

林氏は今回の事例を紹介するにあたり、富士通株式会社 Webマスター 高橋宏祐氏の「Webサイト制作はABCである」というコメントを引用した。これはA(あたりまえのことを)B(ばかにせず)C(ちゃんとやる)という、語呂を合わせた表現。このコメントとともに、面倒なことでも基本的なことをきちんと行う重要性について改めて強調した。

また、途中述べられた「CMSはWebサイトでいうと建物のようなもの。骨格をCMSできちんと作れば、中身であるコンテンツはいかようにもできる」という言葉が印象的でもあり、CMSの本質を掴んだ一言でもあった。

WebRelease 2で実現したコンテンツを活き活き見せるためのサイト―キッズステーション:はぐステ

続いては子供向け専門チャンネルの運営や映像ソフトの企画・制作・販売を行う株式会社キッズステーション。⁠子供のお母さん層」に訴求する新しい会員向けサイトはぐステの構築には株式会社フレームワークスソフトウェアの「WebRelease 2」が使用された。

今回のサイト制作では、デザインを重視したエンターテインメントサイトを目指すこととなった。そこで、デザインの自由度の高さと更新のしやすさに定評のある「WebRelease 2」の採用を決めた。制作は企画~会員システム開発のすべてのフェーズで2007年7月~11月の4ヵ月間。

登壇したキッズステーションの塚原氏は「WebRelease 2」導入のメリットとして「Webに詳しくないスタッフでも更新しやすい点。HTMLだったらもっと時間がかかっているのではないか」と話し、同社大久保氏は「CMSが(短期間での新サイト構築という)不可能を可能にした」とそれぞれ評価していた。

林氏は、今回の制作のポイントとして、静的CMS+小規模システム開発(会員システム)という組み合わせの良さを取り上げ、新たにサイトを短期間で1から構築する場合でも、⁠少ないバグ」⁠高いデザインの自由度」⁠コストパフォーマンスの高さ」が実現できるとまとめた。

株式会社キッズステーションのメンバーと林氏(右端⁠⁠。右から2番目より、取締役業務推進本部本部長 大木貴嗣氏、メディアマーケティング本部ネット事業推進部部長 大久保学氏、メディアマーケティング本部ネット事業推進部はぐステチーム 塚原真寿美氏
株式会社キッズステーションのメンバーと林氏。

TeamSite+WebRelease 2で実現した巨大グローバルサイトのスマート構築―島津製作所

最後の事例は日本が誇る産業機器メーカである株式会社島津製作所。同社は、企業としてのビジネスが拡大する一方で、それに伴うWebサイトの巨大化によるユーザビリティの不足、各国のサイト間での統一感の欠如、更新スピードの遅延などの問題に頭を悩ませていた。これらの課題を解決するために、今回のリニューアルではインターウォーブン・ジャパン株式会社の「TeamSite」と前述の「WebRelease 2」を組み合わせるモデルが採用された。制作期間は2006年12月~2007年5月までの6ヵ月間。

企画・基本設計などのフェーズに加えて、グローバルデザインのレギュレーション開発など、グローバルサイトならではのポイントクリアしながら、それぞれのCMSの特長に合わせ、⁠TeamSite」で全体管理をし「WebRelease 2」でコンテンツ生成を担当させた。とくにTeamSiteには、大規模なコンテンツ管理のプラットフォームとしての実績がある点、WebRelease 2には、テンプレート開発のしやすさやXML/RSSとの親和性の高さがある点をうまく活用することで、大規模サイトのスマート構築が実現できた。

なお、同プロジェクトはロフトワークを含め3社のコンペとなったが、同社の「日本を代表をする企業なので、もっと格好いいサイトにしたい」という熱い思いがクライアントに伝わり見事受注を勝ち取ったというエピソードも紹介された。

セッションの結びには島津製作所 宇田氏、増瀬氏からのコメントも紹介された。

株式会社島津製作所 ITセンター部長 増瀬秀雄氏および宇田若菜氏からのコメント紹介の様子
株式会社島津製作所 ITセンター部長 増瀬秀雄氏および宇田若菜氏からのコメント紹介の様子

Q&Aセッション

プログラムの最後は、講演者全員が登壇しての質疑応答。講演者が他の講演者に質問するといった一幕や、⁠オープンソースCMSが廃れた理由は?」「各CMSの弱点を教えて?」といった導入クライアントにしか聞けない質問など活発な意見交換が行われ、今回のセミナーは幕を閉じた。

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